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閑話 プリズンブレイバー

新規の評価、ブックマーク、誤字報告ありがとうございます。

お読み下さっている方々に感謝します。



くそったれ、オレの旅路なんか所詮こんなもんかよ。


いきなり悪態ついて申し訳ない。ハイ皆さんこんにちはー勇者様ですよー。

まあまだやっとこさLv10に達したばかりのクソザコなんですけどね。

ああそうそう、レベルが一定の数値に達するとメニューで使える機能が増えるらしい。

Lv10に達した時点で『アイテム画面』っていう機能が解禁されて、荷物をいちいち背負っていく必要がなくなって快適な旅ができるようになった。

つーかこんな便利な機能があるなら、最初っから使わせてくれればいいのに。



≪『Lvが上がれば特典として新たな機能が使えるようになる』ってことを知れば、その分向上心が生じるでしょう? これもレベリングのモチベーションを増進するための処置ですよー≫



…まあ確かに『勇者』ってのは他の職業に比べてジョブチェンジの条件が厳しいみたいだし、代わりに目に見えて進化しているのが分かる仕様があった方がレベリングしたくなるのは事実だけどさ。

他にはどんな機能があるんだ?



≪内緒です≫



ふざけんな。もったいつけてないで教えろや。



≪いや、実際どんな機能があるのか使えるようになるまで分からない方がワクワクしてモチベが上がるって、過去の勇者たちのデータがあるんですよ≫



いや、どんな機能が使えるようになるか分かれば今後の計画とか立てやすくなるから教えてくれよ!

アイテム画面のことを知ってたらあんなバカでかくて高いリュックなんか買わなかったのに!



≪駄目です、レベルが上がって使えるようになれば分かるんですから諦めてください。…ちなみに今後の計画って言ってましたけど、今現在の目的ってなんですか?≫



今の状況見たら誰でも分かると思うけど、予想してみ?



≪……ここからの脱出ですかねー≫



ここっていうのは、どこのことかな?



≪牢屋でしょう≫



うん、正確にはこの牢屋のある山賊のアジトからの脱出だよ。



クソぁ! 馬車に乗って次の街に向かっている途中で山賊の襲撃にあって、応戦しようとしたら馬車の客の中に山賊の仲間がいて、スキを突かれて眠らされて捕まっちまったよ!

馬車から身を乗り出した途端に後ろから吹き矢でプスッて刺されて、気がついたら牢屋の中。

つーか、吹き矢とか持ってる奴が居たらどう考えても怪しいと思うのが普通だろ! メニューも警告くらいしてくれよ!



≪いやいや! 他人の持ち物だけでその人が悪い人かなんて分かんないですよ! いやまあ吹き矢を放った人の職業、アサシンでしたけどあまりにも堂々としていたから警戒の必要ないかなーって油断したのは認めますけど…≫



アサシンってだけで最優先警戒対象だよ! 暗殺者警戒しない奴がいるか!

…まあ、オレも周りの人間のステータスをこまめに確認してなくて、警戒心が足りてなかったのは自覚してるけどさ。



≪まあ、どっちが悪いとか言い争うより、どうやって脱出するか考えた方がいいと思いますよー≫



正論だな。さて、どうするか。

手を縛られてたけど、さっき言ってたアイテム画面にナイフとか収納してたから簡単に縄抜けはできた。

問題は、牢屋からの脱出だな。

斧術とか使って鉄格子を壊せば出られなくはないけど、大きな音が鳴ってバレそうだ。

壁を壊す? 無理。できたとしてもやっぱ大きな音が鳴るから駄目。

…他、なんか案ある?



≪開錠スキルを使ってみてはどうですか? 鍵開けに使えそうなヘアピンがアイテム画面にありますけど≫



ヘアピン? そんなもん入れてたっけ?



≪ほら、あのツルッパゲの人からプレゼントにもらったやつですよー≫



あああああ!! そうだった! 思い出したくなかったよチクショウ!

何回プレゼントを捨てても拾って持ってくるから、画面に収納して知らんぷりしてたんだった!

最初の街から次の街に行く理由、アイツから逃げたいって気持ちも何割かあったんだよな…。

なんかどこか別の街に行くって言ったら、そのままアイツもついてきそうだったから早朝の馬車に乗って脱出してきたのに!

…ま、まあいいや。そうと決まればさっさとカギを開けて脱出を――



ガチガチッ ガキッ

ガチャカチャガチャ…



…なかなか難しいな。よく考えたらヘアピンでの開錠なんか前世含めて初挑戦だから簡単にできるわけないか。



≪開錠スキル技能の【キースキャン】を使えば、カギの構造が分かるので開錠しやすくなりますよー≫



ん、試してみるか。

…しっかし、開錠ってシーフとかのためのスキルだろ? 勇者が使える意味が分からん。



≪実際、今役に立ってるじゃないですか。細かいこと気にしちゃダメですよー≫



せやな。…お、なるほど。ヘアピンの先をちょっと曲げて、一番奥じゃなくてちょっと手前で捻って引けば…。



カチンッ



よし、開いた!

ふふん、ざっとこんなもんよー。



≪開けるのに、軽く三十分くらいかかってますけどね…≫



うるちゃい。開けばいいんだよ開けば!

さーて、後は脱出するだけだな。…いや、馬車に乗ってた他の乗客も捕まってるかもしれないし、ちょっと探してみるか?



≪馬車の乗客の中で、捕まったのはネオラさんだけのようです≫



なんで!? 俺以外にもなんか明らかに金持ちっぽいオッサンとか乗ってたやんけ! 狙うならあのオッサンの方が儲かるだろ!



≪えーと、そのオッサンは身ぐるみ剥がされた後に解放されたようです。 ネオラさんが捕まった理由は外見が良かったからじゃないですか?≫



外見? どゆこと?



≪ネオラさんってものすごく美形で、ぱっと見男性か女性か分からないほど中性的ですから、愛玩奴隷として売りに出せば相当な価値があるでしょう。おそらくそのために捕まったのではないかと≫



冗談じゃない! それでどっかのババアの慰み者にされるのなんかごめんだぞ!



≪ババアどころか、最悪同性の――≫

頼むそれ以上言うなやめてくれホントに勘弁してください。

そんな悲劇的なことになる前になんとしても脱出してやる。


隠密スキルとか使いながら、歩哨の目を避けつつ抜き足差し足忍び足で出口を目指そう。

なんかスパイか忍者にでもなった気分。段ボールが欲しい。こういう隠密行動とってたら忍術スキルとか獲得したりしないかな。…んなスキル無いか。



≪忍術スキル、存在しますよ?≫



あるのかよ!? いや、最初っから数十種ものスキルを持ってたけど、そんなスキル見当たらなかったから冗談で言ったつもりだったんだが。



≪まあ、あのスキルは忍者系列の職業にしか獲得できない、現状極めてレアなスキルですからねー。あらゆる戦闘系スキルを獲得できる勇者もアレは獲得できないようです≫



あーそういえば、ごく一部だけど獲得できない超マイナーなスキルがいくつかあるって神様が言ってたな。

その一つが忍術スキルってわけね。開錠スキルがアリなら忍術スキルも持たせてくれればいいのに。



≪【忍術】は強力なスキルですからねー。Lv1の時点で影に実体を溶け込ませて超高速で移動できるようになる技能とかありますし、そればっかりに頼って他のスキルがあまり使われなくなるのを防止するための措置じゃないでしょうかね≫



なにそれ超使いたい。そのスキル技能があればこんなとこ簡単に脱出できるじゃん。そんなんチートじゃないですか。



≪超チート職業【勇者】のネオラさんがそれ言いますか…? 隣の芝はなんとやらですね≫



まあ勇者も万能だしチートっちゃあチートだけど、勇者ならではのスキルって今のトコ無いじゃん?

忍者とかそういう尖ってる職業というか、なにかに極振りしてるような職業にもロマンがあるから憧れるんだよなぁ。

…もしかして他の習得できないマイナーなスキルも強力なものばっかなんだろうか。



≪鋭いですね。ぶっちゃけそのスキルを持ってるだけでパーティの主力になれるようなスキルばかりですねー。その分、獲得条件が冗談みたいに厳しいものばかりですが≫



むぅ、そう言われるとちょっと悔しい。

…まあ現状でも充分チートだし、これ以上の要求は贅沢ってもんか。

さて、さっさと脱出しますかね。


……ん? なんか近くで声がするな。山賊の会話か?

体術Lv2【順風耳】を発動すると、遠くの小さな声も聞こえるようになった。



「今回はこの上ないってぐれぇの大収穫だったなぁ! あの成金オヤジをスカンピンにしてやった後の顔も笑えたしよ! 鼻水垂らしながら大泣きしてやがったな、はっははは!」


「一緒に乗ってたガキも上玉だったしな。ありゃいい値がつくぜぇ?」


「こないだフラフラ一人で彷徨ってたガキもなかなかのもんだったが、今度のはさらによかったな。……売る前にちっと味見していいか?」


「いや、別にいいけどありゃ男だぞ? お前そっちの趣味あったのか?」


「え?」


「え?」


「え、いや、え?」




………。


オ レ は 男 だ よ !


え? じゃねーよ! なんなんだよどいつもこいつもっ!!

……もういいよ、こんなトコに長居してたらいつか気の迷いで襲われる危険があるかもしれないし、聞かなかったことにしてさっさと逃げようそうしよう。

ただ、ひとつ気になることを言ってたな。フラフラ彷徨ってたガキとかなんとか。もしかしてオレ以外に捕まってる人が居るのかもしれない。

助けられそうなら、一緒に脱出させよう。…無理そうなら、街に着いた後に通報でもしておこう。なんて小市民的な考え方の勇者だ。


お読みいただきありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
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