レベリング
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誤字報告をこまめに丁寧にしていただいているばかりか、感想まで! と大変感激しております。
これらを励みに拙い腕ながら執筆を続けていこうと思います。
お読み下さっている方々に感謝。
ギルドで依頼の手続きも済んだし、港町の宿でとりあえず一泊。
波の音がうるさくて眠れなくなったりしないかとか不安だったが、ベッドで横になるとさほど気にならずすぐに眠れた。
まあ水が流れる音とかには鎮静作用があるっていうし、波の音もそれに近い効果があるのかもしれない。
…単に馬車に揺られたりギルドの受付嬢の応対のせいで精神的に疲れてたからかもしれんが。
次の日の朝、早速港町から少し離れたところにある件の魔獣草原にレベリング兼薬草採取へ行くことに。
柵で囲まれた草原の前に、『この先危険区域・魔獣草原ルイアイサ 許可がない者は近寄らないこと』といつもの注意書き。この定例文を見るのはこれで三回目だな。
こうして見るとただののどかで広大な草原に見えるけど、ところどころに魔獣と思われる魔力反応がちらほら感じ取れる。
入り口近くだからか、周囲には雑魚の反応ばっかだな。レイナの相手にはちょうど良さそうだ。
「広い原っぱっすねー。魔獣がいなかったら、ゆっくり日向ぼっこでもしてお昼寝したいくらい良い陽気っす」
「今日の目的はレベリング、弱い魔獣相手でもまだレイナにとっては危険。油断しないように気を付けて」
「はーいっす」
レイナのレベリングは基本的にアルマに任せることにした。
低レベル帯の魔獣の中で、俺の知ってる奴はゴブリンとコボルトみたいな人型の魔獣だけだ。
それに対してこの魔獣草原に生息している魔獣は四足獣で小型の魔獣が多い。
アルマは成人前、ご両親と旅をしていた時に色んな魔獣の習性や対応方法を学んでいたらしく、その知識はこの草原に生息している魔獣にも十分通用しそうだ。
俺が知ってる四足獣の魔獣はラッシュボアとかハイケイブベアみたいな中型~大型の魔獣ばっかだし、この草原の魔獣の対処法を教えようにも知識も経験もない。
むしろ俺も討伐に参加してもいいくらいだが、俺まで魔獣を狩ると経験値を横取りする形になって、レイナのレベリングの邪魔になりそうだから今回は見学するに留めておくことにしておく。
まあようするに俺は端の方で薬草でも掘ってろってこった。ざっくざっく。……久しぶりにやってみてるけどやっぱ地味だな。
「カジカワさん、なんか哀愁漂う背中を向けながらすごいスピードで薬草を掘ってるっすね……」
「ヒカル、勢いあまって掘り過ぎないようにね」
もちろんですよ。ヒルカの草を乱獲しすぎると土の力が弱くなって次に生えてくるのが遅くなるらしいからね。
てか、まだ草原の外周部分なのに随分と薬草が生えてるな。ダイジェルの周辺に比べて土地が肥沃なのかねぇ?
≪外周部分にはヒルカの草や下級毒消し薬の素材となる薬草などが生えている。中心部に近付くにつれ、より希少で強力な効果を持った素材を採取することが可能。しかし魔獣のレベルも比例するように高くなっていくので注意≫
うーむ、希少な薬草とやらも気にはなるが、しばらくはレイナのレベリングを優先させておきたいしなー。
せめてレイナのレベルが10まで達してジョブチェンジしたくらいになってからじゃないと奥に進むのは危険だ。今は無理せず外周で活動しておこう。
「ああレイナ。後ろから小さいけど魔獣が近付いてるから注意な」
「へ? ってうわ!? なんかちっこいのがジグザクに跳びながらこっちに来てるっす!」
魔獣:ホーンラビット
Lv1
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :25/25
MP(魔力) :5/5
SP(スタミナ):24/29
STR(筋力) :50
ATK(攻撃力):50
DEF(防御力):48
AGI(素早さ):80
INT(知能) :9
DEX(器用さ):37
PER(感知) :100
RES(抵抗値):14
LUK(幸運値):47
【スキル】
魔獣Lv1 四足獣Lv1
久々に見たな、Lv1の魔獣。
角が生えたウサギ型の魔獣だが、野生のウサギってなんかあんま可愛くないな。いや角生えてるとか関係なく体格とか顔つきとか全体的にちょっといかつい気がする。
あと目ぇ赤いし、どう見ても敵意丸出しじゃないですか。
ジグザグと規則的な動きでレイナに向けて角の生えた頭を突き出して攻撃してきた。
辛うじて避けたが、結構ギリギリだったな。
「ちょ、いきなり不意打ちとかアリっすか!?」
「アリに決まってるだろ。相手魔獣だぞ」
「レイナ、落ち着いて。一見変則的な動きに見えるけど、敵に接近する時はジグザグにしか移動しないから逆に動きを読みやすい」
「そ、そうっすか? ってまた来たっす!」
再び突進してきたが、アルマの言う通り右、左、右、左と前進していてよくよく見れば単調な動きだ。落ち着いて対処すれば楽に仕留められそうだな。
「……左、右、左、右ぃっ!!」
ドスッ と突進してきた角ウサギの腹にナイフが突き刺さった。
相手の動きをよく観察して先を読み、突進に合わせてカウンター気味にナイフを突き出して刺したようだ。
さらにグリッとナイフを捻り、確実に絶命させる徹底ぶり。この幼女怖い。
ちなみにナイフは熊牙の短剣ではなく、鉄のナイフを使わせている。最初から強力な装備品を使わせているとそれに頼りっぱなしになるかもしれないから、緊急時以外はジョブチェンジするまで鉄のナイフで我慢だ。
「は、初討伐っすー!」
「おめでとうレイナ、上出来。……随分あっさり倒したね、私が初めて魔獣を討伐した時はもっとてこずった」
とったどー! とでも言いたげに仕留めた角ウサギを嬉しそうに高々と頭の上にあげるレイナ。血が垂れて汚れるからやめなさい。
アルマもちょっと複雑そうな表情をしながらも、微笑を浮かべながらレイナを褒めている。
「アルマさんの言う通り動きが読みやすかったし、……カジカワさんとの組手の時の攻撃に比べたら断然遅いっすから」
「…ああ、うん、なるほど」
うむうむ、あの成果が出てるかイマイチ分からん修業にもちゃんと効果があったようでなにより。なんか二人とも遠い目をしてるのが気になるが。
この調子で順調にいけば、今日中に1、2くらいはレベルが上がりそうかな。まあ無理のない範囲でやらせておこう。
おっと、角ウサギの死体をアイテム画面に入れておこう。毛皮とか角とか肉とか売ればちょっとした資金になりそうだし。
レイナが一匹目を仕留めてからおよそ三時間が経過。
あれからレイナが仕留めた魔獣の数はなんと15匹にも及んだ。ソロで15匹ってすごくない?
≪現状、並みの冒険者がソロで仕留められる数のおよそ3倍近いペースで狩っている≫
…この子も大概チートだな。
ほとんどが角ウサギだったが、中にはオオカミ型の少し大きな魔獣もいた。
レベルが6もあるしアレはちょっとヤバいと思って助けようとしたら、【影潜り】でオオカミの影に溶け込み、レイナを見失って困惑しているオオカミの背後から頭を突き刺して仕留めおった。
忍術スキルって近接戦闘でもあんな使い方ができるのか…! 敵に回ったらと思うとゾッとするな。
「レイナ、大丈夫?」
「こ、怖かったっす……!」
仕留めた後にへたり込んでしまったが、無理もない。ウサギばっか狩ってるところにいきなりオオカミだもんな。
…俺としてはあっさり仕留めたレイナの方が怖いが。
短時間に十数匹も仕留めて疲れが溜まっているところに今のオオカミの襲撃がトドメになったらしく、しばらく動けそうにないな。
昼飯を食べてしばらくまったりしたら今日はもう街に戻ろう。
…薬草も大分採れたしな。ふふふ。
お読みいただきありがとうございます。




