プロローグ
初投稿です。
ちょっと読んでみて「あ、これダメだ」と感じられた方は、無理をなさらず読むのを中断して下さい。
読む時間も貴重な数分間です。決断はお早めに(ハードルを下げていくスタイル
目覚めると、初めに月の浮かぶ星空が見えた。
あー、こんな風に夜に空をのんびり見るのいつぶりだろう。
ここんとこ仕事帰りはくたくたで帰ってるからそんな余裕ないもんなー。
ん、星空?
「…あれ? 俺、外で寝てた?」
思わずガバッと体を起こす。
いや待て、いくら疲れてたからって外で寝るか?
過労で倒れた? いやいやいくらなんでもそこまで疲れてはなかった…と思う。うん。
てか周りが木に囲まれてるんですが。林、いや森の中?
…ここどこ?
落ち着け、まずは状況の把握と起きる前に何やってたか思い出せ。
確か今日、いや昨日? どっちでもいいか。いつも通り残業帰りにスーパー寄って、帰る途中、疲れてたせいかスゲー眠くなってきたから、車をパーキングに止めてから仮眠とってた…と思う。うん覚えてる。
で、起きたら森の中。
ナニコレ。
寝てる間に何があった? 俺、夢遊病なんかじゃないぞ。多分。
誰かに連れてこられた? 誰だよそんな暇人。ヤ〇ザに森の中に埋められそうになったとか? 身に覚えないよ?
と、とりあえずアパートに帰ろう。肌寒いし、地面に寝っ転がってたから泥がついてるし。
まずシャワー浴びるか。服も洗濯しないと。あーメンドイ。
てか周りに誰もいないし、虫とかジージーうるさいだけで人の声とか車の音とか全然聞こえないんだけど。
・・・
アパートどっちだ?
てか、ここがどこかも分からん。
そうだ、スマホ!ってカバンの中だった。
カバンはどこだ。あ、枕代わりになってた。
スマホ、圏外。現在位置不明。
迷子? 俺、迷子? 20代半ばにもなって?
夢ならはよ覚めろ。頼む。
セオリー通りほっぺを思いっきりつねってみる。うん超痛い。そして覚めない。
現実です‥‥‥! これが現実‥!
泣きたい。
てか森の中だから迷子ってか遭難だろ! やべぇ!
「すみませーん! 誰か居ませんかー! 居たら返事してくださーいっ!」
しーん
大声で叫ぶも反応なし。
「あのー! 誰かー! 返事お願いしまーす!」
返事なし。
早く誰かきてくれ。ただでさえ喋るの苦手なのに大声で叫ぶの結構つらいから。
「すーみーまーせーんーっ! だーれかぁぁぁぁ!!」
自分でもビックリするぐらいの大声で絶叫する。俺、こんな声出るんだ。
緊急時のパワースゲーな。
ケホッ、叫びすぎて喉痛い。貧弱すぎだろ俺。
ん?
『……ォォ…』
おお?
ちょっと遠くから何か声が聞こえた? 誰かいるのか?
「あのー! 誰かそちらにいるんですかー! 遭難しちゃったみたいなんですけどー! 助けてくださーい!」
『……ォォォオ……』
少しずつ近づいてきてるみたいだ。
やった、人に会えればとりあえず一安心だ。
森の野生動物とかに襲われたりしたらどうしようかと思っt――
野生動物?
マテ、さっきから聞こえる声は、ほんとに人の声か?
『…ォォォォオオオ…グルルル…!』
あ、違うわー。これ多分オオカミかなんかだわー。
むしろこれが人の声だったらそっちの方がある意味怖いわー。
てか段々声がこっちに近づいてきてるわー。
アカン!
走って逃げるか? 野生動物相手に、森の中で? 無理じゃね?
走るのが無理ならっ…!
「くっ! うおおっ! くのぉっ!」
木に登って緊急避難!
木登りなんか小学校以来だけど、枝とか掴んでなんとか木の上に登っていけそうだ。
緊急時のパワースゲーな。
木を掴む手が地味に痛いけどな! ひ弱すぎだろ俺。
この体勢だとセミみてーだな。
ヒーコラ言いながらどうにか4~5mぐらいの高さまで登って下の方を見ていると、
ガサガサと木々の間から何かが出てきた。
さて、オオカミか、不審者か。どっちだ?
『ハルルル…グゥルルル……!』
クッチャクッチャ
オオカミ顔、いやむしろ犬顔?で、原始人みたいに全身毛深くて、
毛皮のパンツみたいなのはいてる不審者だった。
えぇ、何あれ?
被り物? いやースゲーな。目とかギョロギョロ動いてるし、
口から舌とか涎出てるし。
作り物とは思えんくらい精巧だなーハハハ。
『ゥウウウ……!』
グッチャグッチャ
違う、あれ作りものじゃねーわ。
クチャクチャ変な音がすると思ったら右手に持ってる何か、赤い、肉かあれ? 口の周り血塗れにして喰ってる。
毛皮ごと喰ってるけど、手に持ってるのはウサギか何かか?
喰いかけだし薄暗いしよく見えん。
いやよく見たいもんでもないけど。
しかも原始人みたいな服装してるかと思ったら、あれパンツじゃなくて生身じゃん。
え、何で分かるかって?
なんかブラブラしてるもんが見えるからだよ! 見たくなかったよ!
そして何より
魔獣:コボルト
Lv1
状態:空腹
【能力値】
HP(生命力) :25/25
MP(魔力) :5/5
SP(スタミナ):8/52
STR(筋力) :65
ATK(攻撃力):65
DEF(防御力):60
AGI(素早さ):77
INT(知能) :18
DEX(器用さ):13
PER(感知) :121
RES(抵抗値):8
LUK(幸運値):25
【スキル】
魔獣Lv1
なんか、あの犬不審者の頭上に、青色のウィンドウ表示が見えるんだけど。
え? ゲーム? ゲームか何か?
どう見てもRPGとかでよく見るステータス表示画面ですやん。
アイツ、フ〇チンなんだけど年齢制限とか大丈夫?
VRゲームもここまでリアルになったのか。スゲーな。
どれぐらいリアルかというと、
そろそろ木を掴んでる手がだるいし痛いしで、現実にしか思えないほどきつく感じるくらいリアルなんですけど!
つーか早くどっか行ってください! そろそろ限界近いから! 体支えてる腕とか足がプルプルしてきたから!
あ、お肉残さず食べてから行くのね、お残ししないで偉いね。勘弁してください。
『グルルッ! ガウゥッ! ガアァッ!!』
うわ!喰い終わったらこっちガン見しながら牙剝いてめっちゃ吠えてるんですけど!
こっち見んな!
上に逃げたのばれてるし! 何故ばれたし!
あ、匂いか? 犬っぽいし嗅覚が鋭いのか?
涎ダラダラ垂らして、どう見ても俺を食う気満々じゃん!
もう超怖い。ドッキリとかならそろそろネタばらししてもいいのよ? 今ならまだ笑って許せるレベルだよ?
『ガアアァァァッッ!!』
とか内心半泣きで様子を見てたら、あの犬野郎こっちに登ろうとしてるんだけど。
こっちくんな!
いやマジで来ないで、お願いします! てか登るの速ぇよ!
俺喰っても美味しくないから!
「この! 野郎! くんな! 落ちろっ!」
ガスッ ガスッ
『ギャッ!? グルゥッ!』
足元にまで奴の頭が迫ってきたところで、パニックになりながらガスガスと犬男の頭を踏みつけまくる。
ゲシッ ドスッ
『グ、グァウ!』
効いてるか微妙だけど、一応怯んでるし一定の効果はあるのか。
つーかはよ落ちろ! しつこいわ!
ズルッ
「あ」
無理な体勢で踏みつけなんかした反動で体勢が崩れたらしく、手が滑っちまった。
そして、俺の体は地面に向かって落下――
「して、たまるか!」
ガシッ!
『ギャインッ!?』
落ちる直前とっさに奴の首の部分を掴んだ。
危なっ!あのまま落ちたら頭から地面いってただろ今の!
緊急時のパワースゲーな!
木にしがみついてる犬男の首にぶら下がる形になってるけど、
なにこの状態。どうしてこうなった。
落下死はしないで済んだけど、ますます状況悪くなってね?
うぐぐ、足の支えがない分、体勢的にさっきより辛い。握力だけでぶら下がってるけど長続きしそうにない。
『ガフッ…! ガフゥッ…ゲブッ…』
コイツも首なんか掴まれてるせいか随分苦しそうだ。
あ、手足プルプルしてる。分かるぞ、きついよなその体勢維持するの。俺ぶら下がってるし。
俺もきつい。
つーかもう無理! 手に、力が、入らない…!
手が限界を迎え奴の首を離しそうになった時、
突然体にフワッとした浮遊感を覚えた。
『グブッ…』
「えっ、ちょ!」
落ちてる。俺も、犬男も。
コイツ力尽きて木から手を放しやがった!
俺より先にコイツの方が限界だったみたいだ。
ズシャゴシャッと嫌な音を立てて、ほぼ同時に地面に墜落した。
「ってぇ!」
け、ケツからいったか。頭からとか足を挫くよりましだけど、痛い。
奴にぶら下がってた分、高さはそれほどでもなかったけど、痛いもんは痛い! うぐおぉぉぉ…!
って悶える場合じゃない! 隣にはまだ犬男が…!
あれ?
犬男の方はピクリとも動かない。
頭からいったのか、首から上が変な方向向いてて、舌だしながら泡吹いてる。
それと、ステータス表示の色が青から赤に変わっとる。
コボルト
Lv1
状態:死亡
HP 0/25
…表示を信じるなら、どうやら死んだみたいだ。
た、助かった。俺、死ぬかと思ったわ。
これ、人殺しになるのか? いや人間じゃないみたいだけど。
生き物殺した罪悪感とかより、危機を乗り切った後の安心感のほうが強く感じられる。
生きてるって素晴らしい。
でも、別に状況がよくなったわけじゃない。
他にこんな化け物がいないとは限らないし、現状どこにいるか見当もつかない。
てかこれ、もしかしてアレか?
ネットとかラノベで流行りの異世界転移ってやつか?
変な犬野郎出てくるし、ステータス的なメニュー表示が出てくるし、それっぽいな。
ベタだわー。つーか、きっかけとか無しに異世界送るなよ。送る前後が雑すぎだろ。
なんかこう、神様的な存在にチート能力もらうとか無いの? ありませんか。そうですか。
ここまできて今更ドッキリとかだったらキレるぞ俺。
さて、無いものねだりしても仕方ない。現状を何とか打開せねば。
また叫んで人を呼んでみるか?
…いや、リスクが高すぎる。また変なのが寄ってくるかもしれないし。
一匹相手しただけでもう限界です。これ以上は、無理。
化け物を警戒しつつ、地道に歩いて建物か人探すか。はぁ、疲れる。
あ、そうだ。犬男のステータス見れたなら自分のも見れんじゃね?
さっきの犬男のステータスに【スキル】とかあったし、もしかしたら異世界転移特典とかで俺もすごいスキル持ってたりするかもしれん!
自分のステータスって見られるんだろうか。
あ、出た。俺の名前の後に色々と項目が表示されて
え?
梶川 光流
Lv1
年齢:25
種族:人間
職業:ERROR(判定不能)
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :0/0
MP(魔力) :0/0
SP(スタミナ):0/0
STR(筋力) :0
ATK(攻撃力):0(+2)
DEF(防御力):0(+5)
AGI(素早さ):0
INT(知能) :0
DEX(器用さ):0
PER(感知) :0
RES(抵抗値):0
LUK(幸運値):0
【スキル】
なし
EXP(トータル経験値) :7
NEXT(次のレベルに必要な値):10
うわっ…俺のステータス、低すぎ…?
いや、低いっていうかゼロじゃん! 全部ゼロじゃん!
職業もエラーってなんだよ!? 俺、ただの工場の作業員だよ!
スキルもスゲーやつどころか何もないじゃん。せめて一つぐらいなんかくれよ…。
あ、経験値入ってる。犬男倒したからかな? やったー。
何の慰めにもなんねぇよ! チクショウめぇ!
てかMPとSPはまだいいけどHPゼロで正常ってなんだよ。死んでるじゃん。
ゾンビ? 俺、ゾンビ? 別にどこも腐ってないよ? ないよね?
っておお? なんか攻撃力と防御力に補正入ってる?
もしかしてこの(+2)(+5)ってさっき犬男倒したボーナス的な何かか?
詳細確認できるか? お、できそう。
装備
安全靴
ATK+2 DEF+5
違った、関係なかった。
基準になるもんがないから+2、+5って高いのか低いのかイマイチ分からんな。
はぁ…なんだよこのクソステータス。
せめて何か取り柄の一つでもあれば良かったのに、全部ゼロ。
こんなんでよく犬男やれたな。偶然が重なった結果だろうなぁ。
こんなもの見なくても、自分には特に優れている点なんか無いことくらい自覚してるつもりだ。
目標に向かって必死に努力すれば何か取り柄ができるかもしれないけど、目標っていわれてもなぁ。
将来なりたいもの? 特にないよ。しいて言えば金持ちにでもなって一日中ゴロゴロして過ごしたい。
やりたいこと? ネットとゲームと漫画読めれば他は特にないな。
やりたい仕事? ねーよ。仕事なんてお金をもらうためにやってるだけで、好きな仕事なんかねーよ。
…我ながらホントろくでもないな。
で、こんな調子で何年もダラダラ過ごして、気が付いたら何も取り柄のない「俺」ができてた。
仕事さぼったりはしてないけど、特に優れた点があるかどうかと言うと、まぁ、ないね?って感じ。
役もついてないし、居ても居なくてもたいして変わらないどうでもいい存在。それが俺。
うん、こんなダメ人間だからステータスもゼロばっかなんだろーなー。
イカン、なんか凄く悲しくなってきた。
ただでさえやばい状況なのにネガティブ思考はだめだ、このままだと無性に死にたくなってくる。
落ち込んでてもなんも解決しないし、とりま人探しだ。
薄暗くて不便だし化け物怖いし、早く朝にならないかなー。
それにしても、月が見えるとはいえ薄暗いけど夜にしちゃ結構明るいな。よく見れば色も識別できるくらいだ。
あ、さっき星空見たときは気付かなかったけど、月から離れたトコにもう一つ月がある。そりゃ明るいわな。
やっぱ異世界だわここ。
お読み頂き、ありがとうございます。