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異世界救世の転生なんて御免蒙る。故に俺は異世界を見て回る。  作者: 佐久間零式改
異世界への招待は突然に
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異世界への招待は突然に 第一話

「あれ? 俺は……部屋でいつも通り寝ていたはずなんだがな」


 惰眠から覚醒して目を開けると、そこにあるのはゴミ部屋なはずであった。


 いつ食べたか分からないカビだかなんだかわからないものがみっしりとはえている容器が散乱していたり、飲み干したり、飲み残していたり、俺の排泄物が入ったりしていたペットボトルが何本も置かれていたり、虫が大量発生していたりして、もう人が住めないような部屋がそこにはあるはずだった。


 十年以上も部屋に引きこもり、社会と断絶したような生活をしているうちに、四十代に突入したゴミみたいな俺に相応しいゴミ部屋だったはずだ。


 そんな部屋の代わりに、俺の目の前に広がっている光景は、ただただ真っ暗な空間であった。


 そんな中に俺一人が佇んでいる。


『世界の分岐点へようこそ!』


 そんな漆黒の空間に、男とも女とも分からない中性的な声が響き渡った。


「ん?」


 どこから声がしているのだろうかと俺は視線を彷徨わせるも、人の姿を認める事ができなかった。


『ああ、すまない。姿形がないんだ。だから、声だけでしか君とコミュニケーションが取れないんだよ』


「はあ? 姿形がない? それってどういう事なんだ?」


『なにせ創造主なものだからね、でも、おっちょこちょいでさ、自分に姿形を与える事を忘れてしまったんだ』


「創造主? それってアメリカンジョークとか、新手の寒いギャグか何かで?」


 今、俺が置かれている状況がイマイチ分からない。


 これってもしかして、ドッキリとそっち系の企画なんだろうか?


 ニートになって干支が一回りしそうなくらいの俺を更生させるための両親が仕組んだ何かだろうか?


『創造主だから命令する。とある世界に転生して、その世界を救って欲しい』


「世界を救う? この俺が……あはははっ」


 やっぱり、これはドッキリだな。


 そんなものにだまされる俺じゃない。


 ダメ糞ニートの俺に救える世界なんて有るわけがない。


『君はね、今さっき死んだんだよ。君が引きこもっていた部屋……もとい、家に飛行機が墜落してね。一切苦しむ事無く、一瞬で死んでしまったんだよ。君の両親は出かけていたので、亡くなったのは君一人だけどね』


「そんな設定で俺をだませると思っているのか?」


『君をだます事に何の価値があるのかい? 君みたいな生産性のないニートにそんな嘘を吐いてどうなるっていうんだい? 君は死んだのは事実だ。そして、今まで無為に過ごしてきた贖罪として、世界を救って欲しいと思っているんだよ』


「なんで俺がそんな事をしなくちゃならないんだ。もうこんなドッキリに付き合ってられん。俺は帰る!」


 ニートの俺に世界を救うなんて事ができるワケないだろうが!


 ふざけんな!


 こんなドッキリに付き合っていられるかっての!


『君には帰る世界なんてものはない』


「はあ?」


『あるのは行くべき世界だ』


 黒の世界が、世界の果てと思える端の方から白けていった。


『赤ん坊からでは世界を救うのは難しいだろうから、十代の少年に若返らせた上、世界を救えるスペックを付与して送ってあげよう。そう……これはね、君の再生のための物語だ』


 世界は黒から白へと塗り替えられていくと、眩しいほどの白が俺の目を容赦なく責め立てた。


 思わず目を閉じる。


 ようやく目が慣れてきて、そっとまぶたを開けると、そこには俺の知らない世界が広がっていた。



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