第5話「今後のこと」
「とりあえず、今後の計画を立てるか。」
冒険者になった俺は、その後あの飲食店で今後の計画を立てていた。後から知ったことだが、この飲食店は「リベリア食堂」と言うらしい。昔はリベリア・イーリスが店をしていてそれなりに有名だったんだが今は行方不明でそれ以来客も少なくなり今は1部の人間くらいしかこの店を利用していない。そして娘であるリア・イーリスは母が行方不明になってからこの店で働いているらしい。
「アクトさん、無事冒険者になれたんですね。」
彼女は笑顔で喋りかけてきた。
「ああ、今は今後について考えている途中だ。」
「なったばかりならパーティーに入ってみたらどうですか。モンスターの狩猟も効率よくできますよ。」
俺は答えずに黙っていた。
この世界で俺は仲間を作る気は無かった。こっちの奴らは前の世界よりいい奴が多いだから俺はこうして話もできている。だが仲間になってもいつか裏切られるかもしれない。だから俺は1人で戦うそう決めていた。こっちの世界に召喚されたあの時に、
「おい、オメェ冒険者の新人か?よかったら俺様のパーティーに入れてやろうか。雑用でいいならよぉ。」
店の中で酒を飲んでいた3人組がこっちに近づいて喋りかけてきた。
「‥‥‥」
「無視してんじゃねぇよ‼︎俺が誰だかわかってんのか、俺はBランク冒険者龍殺しのボロス様だぞぉ‼︎」
そう言って俺の胸ぐらを掴んできた。
「やめてください。この人困っているじゃないですか。」
俺を庇うようにリアは注意した。
男どもはリアを見て目つきを変えた。
「この娘はオメェの恋人か、結構可愛いじゃねぇか。」
そして男3人は俺の胸ぐらから手を離し今度はリアにちょっかいをかけ始めた。
「こんな、俺様にビビってるようなカスなんかより、俺らと一緒に酒でも飲めよ。」
「ちょっと離して」
そのままリアを連れて行こうとしたので、俺はそろそろ我慢できなくなり男の肩を掴んだ。
「あぁん」
男は鋭い目つきでガン飛ばしてきた。
学生時代の俺なら今のこれだけで土下座をしてあやまっていた。
だが6年間、肉体的、精神的に鍛えた俺は今までの腰抜けの俺じゃない。
「リアから手を離せよ」
「なんだぁ恋人連れていかれそうになって怒ったか」
「姫様を救うナイト気取りか、カッコイイ〜」
後ろの2人は俺にからかいの言葉をかけてくるが、ボロスは違った。額に血管を浮き出させ、俺を怒りの形相で睨みつけ殴りかかってきた。
「新人のくせにこのボロス様に逆らうんじゃねえよ‼︎」
俺はその拳を片手で受け止めた。受け止められたボロスは、驚いていたがすぐに正気に戻り腰に下げていたナイフを持って俺を刺そうとしてきた。
「遅い‼︎」
俺は一瞬でボロスの背後に回り風魔法で壁に叩きつけた。
「ぐはっ」
壁に叩きつけられたボロスは口から血を吐き気絶した。後ろの2人が状況を飲み込めていなかったのでボロスを近くに転がして2人に言った。
「そいつを連れてさっさと帰れ」
「くそ、覚えてろよ‼︎この借りは必ず返すからな‼︎」
お決まりの捨て台詞を吐いて帰って言った。
「あのぉ、ありがとうございます。助けてくれて。よかったら今度お礼させてください。」
「お礼なんかいいよ。もともと俺に絡んできた奴だったんだし。」
「でも……」
彼女は一気に暗い顔になった。なので俺はしょうがなくお礼の内容を決めてリアに言った。
「なら今度この街を案内してくれよ」
「そんなのでいいんですか?」
「あぁ、俺はこの街のことやここら辺のことなんかを全く知らねえからそう言うことを教えてくれると助かる。」
そう言うとリアは暗い顔から明るい顔になった。
「わかりました。じゃあ日にちは明後日の休日。時間は9時に時計塔の下でいいですか。」
「わかった。じゃあ俺はそろそろ帰るよ。」
「はい。明後日楽しみにしています。」
リベリア食堂での帰り道に1人の男が駆け寄ってきた。
「おーい、待ってくれ」
誰だ?見たことない顔だが、
「俺はクランドっていうだ。はじめまして。」
「それよりさっきのすごかったな新人なのにあのボロスを一撃で倒して。」
「それはどうも別に見せもんでは無かったがな」
「それであんたの強さを見込んで頼みがある。2週間後にライゼルの山の頂上にいる古龍インフィニ・ダグ
ラスの討伐作戦をうちの軍団が決行する。その手助けとしてあんたの力を貸して欲しい。」
インフィニ・ダグラス何だそれは?古龍と言われているってことは、古くからいる龍なんだろう。
「今はまだ答えを出さなくてもいい、けどもし受けてくれるんだったら地図を描いたからこの場所に来てくれ。」
そう言うとクランドは、走って帰って言った。この以来受けるつもりはない俺にメリットが無いし、協力をすると最終的に仲間になってくれないかと言ってくるだろうからだ。とりあえずこの話は置いておき、俺はリアとの約束の日まで拠点に戻り、スキル,魔法をもっと使えるように特訓をし剣術もモンスターを倒して覚えながら過ごした。
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