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第十七話

 海から戻ると、ミラさんにお食事に誘われました。

 もちろん、二つ返事で了承しました。

 お姉さまとお食事、嬉しいです。

 そして何より、『お食事』!

 食事はポン汁という日々を送っている私には、狂喜乱舞する言葉です。


 そして『御呼ばれの食事』ということでお洒落が出来ました。

 二人だけの気軽な食事なので畏まる必要はありませんが、少しフォーマルな感じの紺色にレースの襟や縁取りがついたワンピースをリコちゃんが用意してくれました。

 もちろんお手製のシュシュもつけました。


 リコちゃんに先導され、城の中の一室に入ります。

 広さは十畳程で、中心にターンテーブルの置かれた何処と無く中華の雰囲気漂う空間でした。

 そういえばミラさんは、いつもチャイナドレスのような服を着ています。

 今日は赤に牡丹の花が描かれたドレスです。

 相変わらず美しい……眼福です。


「お待ちしておりました。どうぞ、かけてください」

「お招きくださり、ありがとうございます!」


 促され、ターンテーブルを挟んでミラさんと向かい合う席に腰掛けました。

 凄い、ご馳走です!

 涎が出そうです。

 お肉! お魚!

 汁じゃない固形物って素敵!

 脂肪万歳!


「申し訳ありませんが、ステラ様のお食事の管理は私が行っておりますので……」

「えええええええ」


 食べてよし! の号令を待ち構えていたのに、リコちゃんが私用のナイフやフォーク、食器類などを下げていきました。

 ひどい…あまりにも無情です!

 目の前にご馳走があるのに、なんですかこの拷問は!


「ステラ様にはこちらを」


 下げられた食器の代わりに目の前にセットされたのは、いつもより綺麗なグラスに乗っている……いつものあれ。


「ポン汁じゃあん、もおぉぉ!」


 グラスは綺麗でも中身は一緒だから!

 むしろ器が綺麗だと腹が立ちます。


「それは?」


 ミラさんが顔を顰めています。

 分かります、体内に取り込むものの色ではありませんよね。


「……健康美容飲料です。リコちゃん監修の」

「リコが?」


 ミラさんの顔が更に険しくなりました。


「大丈夫です。『メイドのリコ』としてお作りしておりますので」


 素敵な微笑みでミラさんを見ていますが……どういう意味なのでしょう。

 そう言えば、リコちゃん達は『メイドは初めて』と言っていましたが、それまでは何をしていたのでしょうか。


「随分成果を出されているようですね」


 話題を変えようと言わんばかりに、ミラさんが声を掛けてきました。


「実戦も経験されたとか。表情も凜々しくなられた」

「ありがとうございます!」


 私のことはミラさんの耳に入っているようです。

 多分痩せたことを、『凜々しくなった』と表現してくれているのですね?

 流石、出来る女は言い回しもスマートです。 


「あ、そうだ!」


 私は手土産を持ってきたことを思い出しました。

 私は席を立たない方が良いようなので、リコちゃんに渡してミラさんに届けて貰いました。


「プレゼントです。ミラさんをイメージして作りました」

「これは?」

「髪留め兼髪飾りで、『シュシュ』といいます」


 内職をしている時に、黒色でシルクのような光沢のある生地と金色のレースを見つけ、これはミラさんにぴったりだと思い、せっせと作りました。

 装飾にパールと、レースでリボンを作り、ボリュームのあるゴージャスなシュシュになっています。

 中々自信作です!


「美しいですね……貴方の手作り?」

「はい!」

「リコちゃんとリンちゃんにもプレゼントしたんですよ」


 リコちゃんは、今もつけてくれています。

 これだという風にミラさんに示すと、微笑みを浮かべて頷いてくれました。


「素晴らしいですね」


 リコちゃんのはサーモンピンクと白の薄いサテン生地で作ったフリルシュシュです。


 ちなみに、リンちゃんにプレゼントしたのはパープルと白のフリルシュシュなのですが髪にはつけてくれませんでした。

 髪を纏めるのが嫌なようで、腕につけてくれています。

 いや、もしかしたらこういう使い方もあるという宣伝なのかも?


「ありがとうございます。早速つけましょう。……いかがですか?」

「! 素敵ですっ!!」


 想像通り、ミラさんにはゴージャス系が似合います!

 ああ、『私が作ったものをつけた姿』を見せてくれる、この瞬間プライスレス!


「何か不便なことはありませんか? 何か力になれることがあれば仰ってください」


 悦に入っていると話題は変わってしまったようで、ミラさんが再び声を掛けてくれました。

 というか、ミラさんは私に合わせてか食べていません。

 『お気にせずどうぞ』と促して、私はポン汁を飲みつつ答えます。

 うぷっ。


「皆がいてくれるので大丈夫です」

「そうですか」


 今のところは何も不自由していません。

 ……体が自分のものではない点以外は。


「彼は……オリオンはどうしていますか」

「お世話になりっぱなしで。凄く助けてくれています!」

「……そう、ですか」


 ?

 何か、気を使っているような空気を感じました。

 何に対してなのかは分かりませんが……。

 オリオンについて、気がかりがあるような?


「オリオンと知り合いなんですか」


 ただ一人、私の方に残ったオリオンのことを気にかけているのかと思いましたが、そうじゃない気がします。


「ええ。彼とは知人で……。彼を女神の騎士に推薦したのは私なのです」

「そうなんですか?」

「はい。他の騎士達は母国からの推薦なのですが、彼には故郷はありません。ですが、とても優秀な人材です」


 オリオンが優秀な人材というのは文句がありません。

 他のことが、いくつか気になりましたが……。


 オリオンには故郷がない?

 オリオンは自分から女神の騎士になりたいと言ったのでしょうか。

 それともミラさんに言われて?

 色々聞きたいですが、人のことを根掘り葉掘り聞いて良いものか迷います。

 

 それに、少し憂いでいるようなミラさんの表情も気になります。

 二人はどういった知人なのでしょう。

 外見だけで言うと、オリオンはミラさんの知人の弟とか子供? という感じがしますが、オリオンの姿は実年齢と合っていないと言うし……何か特別な関係、とか?

 凄く気になります……気になります!


 その後、何気ない雑談をしてからお開きになったのですが、頭の中はオリオンとミラさんのことでいっぱいでした。

 ああ、気になるー!

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