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第十二話

「おおー! 泳げる~!」


 城の中の迷路のような地下通路をオリオンに先導され突き進むと、すぐに海に辿り着きました。

 出たところは船着き場だったのですが、そこから海に入りました。

 メンバーは私とオリオンにリンちゃんです。

 リコちゃんは船着き場で待機です。


 海の中に入るのだから着替えるのかと思いきや、着替えていません。

 リンちゃんは相変わらずメイド服です。

 『着替えないの?』と聞くと、何のために防具を買ったんだと呆れられました。

 確かにそうです。


「水護の印を使えよ」

「どうやって?」

「印に魔力を流すだけでいいんだよ」

「それが分からないんだよ」

「……面倒臭えなあ。チッ。オリオーン」


 舌打ちされてしまいました。

 その上オリオンに丸投げだなんて……ってオリオンまで面倒臭そうな顔をしています。

 私、泣きますよ?


「冗談だ。ちゃんと教えてやる。手を出せ」

「? はい」


 『お手!』と言われたワンちゃんのようにオリオンに向けて素直に手を出すと、小石のようなものを乗せられました。


「それは魔法を制御するための練習アイテムだ。小さな子供が使うものだが、魔法を使っているという感覚を体感出来る」


 そう言うと、小石を乗せた私の手をそっと両手で包みました。

 中学生に見えるオリオンですが、手は大きくてゴツゴツとしていました。

 男の人の手だ! と思った瞬間ドキドキしてしまいました。


「ボーッとするな。ちゃんと見ていろ」

「はい! すいません!」

「……」


 横で見守っているリンちゃんのシラけた視線を感じます。

 少しの乙女タイムも許されないの? ……あ!


 心の中で愚痴っていると、手に持っていた小石が暖かくなった気がしました。

 不思議……実際に温度が上がっているわけではないと思います。

 でも『暖かい』と思ってしまう感覚で、小石から赤外線が出ていそうな……。


「この感覚を覚えろ。この感じを使いたい印に集中させるんだ。試しに水護の印を使って見ろ」

「分かった」


 小石は置いたままで、オリオンは手を離しました。

 早速印を使えるか試してみます。

 暖かいっぽい感じ……右手の水護の印……暖かいっぽい感じ……右手の水護の印!


「……難しい」


 言われた通りにしてみたつもりですが何も怒りません。


「お前なりのイメージを作ればいい。この石から感じるものを例えるなら何だ?」

「んー……赤外線ヒーター?」

「どういうものか知らないが、それと印を結びつけて想像してみるといい。もう一回やってみろ」

「やってみる」


 家にあった遠赤外線のカーボンヒーターを思い出しました。

 お母さんが学生の頃からあるという古いもので、とても電気代がかかるポンコツです。

あれで手を温めている……水護の印を炙っている……!


「お、出来たじゃん」

「え?」


 リンちゃんの呟きを聞いて右手を確認してみると、確かに印の辺りにじんわりとした感覚がありました。


「え? いいの?」


 思わず声が出ました。

 『炙っている想像で使えちゃっていいの!?』と異世界の理に大声で問いかけたいです!


「『いいの?』って何だよ」

「……ううん。何でも無い」


 正直に話すと呆れられます。

 秘密にしましょう。

……墓まで持って行きます。


「案外すんなり使えたじゃ無いか。上等だ」

「えへへ」


 オリオンに褒められると嬉しいです。

 余計に炙り印の話は出来ませんね。


「印を継続させる練習も兼ねて早速行くか」

「そうだな。んじゃあ、はぐれないようにちゃんと着いて来いよ?」

「え?」


 二人に顔を向けたときには海から飛沫が……。


「え?」


 気づいた時には二人はダイブインアフターです。

 説明少なくない!?

 着替えてないけどいの!?


「置いていかないでよ! ……ええーい、行っちゃえ!」


 ……私、とっても逞しくなれそうです。

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