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89 世界樹

短いですが……orz



 トレントタクシーを乗り継ぎ、やってきました西の果て。なお、本当に西の果てなのかは知らない。

 律儀にもここまで運んでくれたトレントに礼を言う。剪定しようと申し出たのだが、断られてしまった。なんだかそわそわと落ち着かない様子で、早く元いた場所に戻りたそうであった。

 そんな感じのトレントが足早に去るのを見送り、見ないふりをしていた世界樹に向き直る。


 イチョウの木が、横たわっていた。たぶん昼寝している。立ったまま、生えながら昼寝すればいいと思うのだが、なぜか足を組むように根っこを半分ほど絡めてわざわざ高鼾(たかいびき)

 神々しく光をこぼす黄金の葉を茂らせているが、饐えたような銀杏独特の匂いが充満していて正直帰りたい。


 タクシー代わりにしたトレントを剪定している間に何度か確認したが、この威厳の欠片もないイチョウが世界樹らしい。

 どう見てもトレントなので、適当に伐るのもヤバそうである。仕方がない、銀杏(ぎんなん)でも拾おうかな。鍋さんならなんとかしてくれるはず。ほくほくに炒った銀杏はけっこう好きなんだ。

 剪定した木をいい感じに削って箸と大きな重箱をつくり、適当な布でマスクをしたらいざ収集開始。


 誰にもまだ踏まれていない綺麗なオレンジ色の木の実だけを拾いつつ、綺麗な葉っぱも別枠で集めつつ。実の部分は腐ってる方がいいのかな……、いや果実もきっとなんかいい感じの素材になると思うしな……。




 何度か箱を作りたして集めること数時間。イチョウの木はむくり、と固そうな樹皮を割ることもなく、起き上がる。ぱん、ぱん、と自身の幹をはたき、ふるりと葉を揺らした。

 世界樹は、意外なことに樹木としては割と平均的なサイズ――三十メートルくらいだろうか。それでも人サイズの私には巨大であることは間違いない。


 つまり、世界樹が大きく伸びをした拍子にぼたぼたと銀杏がですね、頭上から降ってくるわけです。必死に踏まないようにしていたのに……!

 無念だ。まあいい、当初の予定をこなさなければ。


「おーい、世界樹(ユグドラシル)さん? 枝をくれないか?」


 下から声を掛けると、世界樹はきょろきょろっと辺りを見回し、私を見た。いや、目があるのか知らないが、なぜかその場で回転したのだ。

 しばらくリアクションを待って見上げていると、世界樹はジャンプをし始めた。銀杏と葉っぱの他にも、どさっどさっと葉付きの大ぶりの枝が振ってくる。私よりデカい。

 避けられないので、慌てて手を伸ばしてインベントリにしまう。


 世界樹にもなると自分で自分の手入れができるんだなあ、などと見当違いの感心をする。

 枝だけでなく、ごつごつとした樹皮も降ってきた。とりあえずできるだけ集めてっと。

 取りこぼしを集めていると、いつの間にか世界樹はその場を離れようとしていた。私は大声でお礼を叫んだ。


「ありがとうなー!」


 さって、この金になりそうなもろもろの回収の続きをしよう。そう思ったのだが、世界樹が去ったのと逆の方向から獣の唸り声や咆哮、地響きが伝わってくる。

 振り向けば、たくさんの魔物が怒涛のように近づいてきていた。まるで黒い波のよう。


 なるほど。世界樹は魔物にとってもご馳走に違いない。臭いけど。

 なるほど、なるほど。世界樹が去った後は疑似的な魔物の氾濫(スタンピード)が起こる。トレントもそわそわしていたわけだ。納得。


 ……逃げろっ!!


 一番近い街どこだっけ! とりあえず東へ全速前進!

 大多数の魔物は地に落ちた銀杏を貪るべく世界樹の居たあたりで足を止めたのだが、あぶれた者たちが私を追いかけてくる。なんでや。

 二本足の生物が四足の生物に勝てるわけがない。木々を縫いつつ樹上を駆け抜け、追いついた足の速いものに向かって世界樹の枝を杖に見立てて魔法を放つ。


 ドーンッッ!


 足場まで吹っ飛ぶ。枝でこの威力、さすがである。転げながらも、まだ追いかけてくる魔物たち。インベントリから銀杏を一つ摘まんで囮に投げる。

 面白いように釣られていく。その隙に魔法ドーン。


「ったく、なんで私を追いかけてくるんだ!! インベントリに仕舞っている分には匂いなんてしないだろうに……、ハッ!!」


 よくよく考えなくても、私は今銀杏まみれだった!! そりゃ匂うよな、ぷんぷんするはずだ。鼻が慣れて気づかなくなっていた。そうと分かれば単純である。


「『洗浄』!」


 高威力の洗浄力できれいさっぱりして、近くの木の上に身を隠す。

 追ってきていた魔物たちは私を見失ったらしく、しばらくうろうろした後、後方へと戻っていった。いやー、危なかった、命拾いした。


 ふー、あとは適当なダンジョンを見つけて戻ればいい。


「おーい、トレントいるー?」


 タクシートレントの味をしめた私は、大声でトレントを呼び出す。


 しーん。


 ……誰もいないようだ。地道に帰るかあ。とほほ。




名前(ネーム):ジャン・スミスLv.48

種族:人間 性別:男性

職業:【気分屋】

HP:171

MP:449

STR:34

VIT:29

INT:70

MID:91

AGI:142

DEX:150

LUC:104


称号

【混沌神の玩具】【運命神の憐憫】【怠惰神の親愛】【無謀】【マゾ】【命を弄ぶ者】【妖精郷の歓迎】【黄泉の道化師】【探検家】【妖樹の友】【界渡り(魔)1/1】【悪戯小僧】【変異種】【補佐官】【野菜泥棒】【逆走の探索者】【養蜂家】【幻想の冒涜者】


スキル

戦闘

【盾】【刀】【奇襲】【会心の一撃】【空駆け】【バランス感覚】【毒耐性(一)】【夜目】【逃げ足(一)】【肉体言語(初)】


魔法

【魔法陣(玄)】【生活魔法】【詠唱】


生産

【細工(一)】【採取】【料理(初)】【木工(一)】【解体】【伐採】【書画(初)】【調合】【スキル付与】


その他

【運】【薄影】【痛覚耐性】【読書】【識別】【木登り】【地図】【効果】【魔道具】【妖精化(玄)】【指導】【分解】


特殊

【混沌】【手抜き】【六文銭】



世界樹は界ごとに樹種が違います。


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