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82 クランを作りたい



 石でできたようなテスの街の、いい感じのカフェにて。サカイ君に呼び出された。

 奢りという言葉にまんまとつられたのである。


「今日はなんだ? あ、チーズケーキ頼んでもいい? 」


 メニューに載ってる、「ふわふっわのミノタウロス・スフレチーズケーキ」がめちゃくちゃ気になってるんだ。ダンジョンのミノさんは雄だったと思うんだが。

 金持ち(たぶん)のサカイ君のおごりらしいので、遠慮なくロイヤルミルクティーも注文した。普通のミルクティーと何が違うのかよくわからないが、高いので美味しい。濃厚な気がする。


「今度、クランを作ろうと思っているんです。あ。クラン分かりますか?」


「失礼な。……分からないから教えてください」


「手のひら返し早っ」


 優しいサカイ君は、クランとは固定パーティーの上位互換的なものであると教えてくれた。

 会社とか学校とか、そんな感じ? 企業理念とかに賛同した人たち、進学校とか甲子園常連校とかに惹かれた人たち、みたいな集まり。

 うん、理解した。私、天才では?


「クランについて理解してもらったところで、私はジャンさんをクランに誘いに来たんですよ」


「ほほう。どんなクランなんだ?」


 二つ返事で入る、と答えるのは簡単だ。これまでも良くしてもらっているし。

 でもほら、そこはデキる大人らしく一応聞くべきだ。


「クラン名は僕の通称の『萬屋』をそのまま使おうと思うんですよ。今まで取引してきたプレイヤーの方もこちらの職人(NPC)の方も誘って、彼らの商品を売っていく予定なんです」


「それ、別に今のままでもできるだろう?」


「クランを作ると共有倉庫ができて内部販売が可能になるので、一々会わなくても売却できるんですよ。それを狙ってこちらの商人(NPC)がプレイヤーに接触するくらい便利なんです。制限はあるものの転移拠点にできますし」


「なるほど」


 なんだよそれ。利点だらけじゃん。


「入ろう」


「良かった! まあ、クラン設立には条件があるんですよ」


「えっ!」


「条件は三つ。一つ、拠点にする街の住民票をとること。二つ、三人以上のメンバーがいること。三つ、街の許可を得ること。四つ、その街に賃貸ではない拠点があること。これで、特殊な倉庫や転移システムのない普通のクランは作れます。――が、僕が狙っている機能にはもう一つ条件が必要です」


 サカイ君はコーヒーでもって十分にもったいぶった後、溜息をついた。

 延ばしすぎだ! はよ!!


「――ドラゴンの鱗を得ること。クランに付随するシステムを作成するのに必要らしいんですよ」


「ドラゴンなんているのか?」


「いますよ!? ここゲームですよ!? まあ、確かに、見たことはないと思います。古い文献を漁った結果、氷の大陸にいる、という情報は見つけたんですけど……」


「あ、氷の大陸なら行ったことあるわ」


 ぼったくられた思い出がよみがえる。いやあ、高かったなあ!

 あとはイエティとの鬼ごっこ。私とパッセル以外鬼という鬼畜仕様。


「ジャンさんそれ詳しく」


「随分前にお守り売らなかったっけか? 耐寒とか雷系の。あれ、ペンギンとイエティがいる大陸で作ったんだ。サメクの街……、だな。言ってなかったっけ?」


 メニューで確認したから間違いない。街の名前を忘れていたわけではない。ないったらない。


「聞いてませんよ?」


 ちゃんと情報ゲロるからそんな怖い顔するなよ。イケメンが台無しだぞ☆

 



「いやあ、有意義でしたね!!」


「そりゃよかったよ」


「ドラゴン討伐時には誘いますから、是非来てくださいね!」


 有名なクランに協力を打診すると言って、るんるんで伝票を会計に持っていくサカイ君に、私は言えなかった。

 あの大陸に大人数が渡る手段、あるのか、と。まあ何とかするだろう。

 とりあえず、牛柄チーズケーキお代わりー!




 ログアウトまで微妙に時間があるので、テスの街の原木市場にやってきた。

 トレントの遺体がダルマにされ、整然と組体操のように積み上げられた様子に涙がそそられ……ない。

 丸太と見分けがつかないからね、仕方ないね。丸太の断面に樹種と値段――値段はおそらく競りが終わったもの――が書いてあって、家の柱より一回り太いくらいが一番高い。太すぎても買い手がつかないんだろう。木材と言えばギーメルだし。


 それにしても、市場の端っこに崩れてもおかしくないほど山積みされた丸太は一体何なんだろう。

 下の方とか日に当てられすぎて灰色に退色しているんだが。

 首をひねっていると職員が通りがかった。質問攻めしよう。


「ああ、それ。引き取られない丸太だよ。うちも困っているんだ」


 売る契約はしたものの、買い手の倉庫に余裕がないとか。余ってしまって場所を食うからと叩き売りしたけれど引き取られなかったとか。

 そういった無念の丸太の墓場らしい。


「契約があるから、別の人に新しく売ることもできないし、処分もできないんだ」


 節くれだった手で丸太を撫でる職員は、悲し気に呟いた。これ売ってもらえないかな。

 あ、やっぱりダメ? どうしても?


「モノ好きな(あん)ちゃんだな。うーん、ちょっと所長に聞いてくるよ」


 待つことしばし。

 灰色の木材は何本か売ってもらえましたー! 契約先が倒産していたらしいよ!! ……やったね?




クラン結成条件について

前に書いたような書かなかったような……。どこに書いたのか忘れました!

見つけたらご一報いただけると幸いです!(泣

あと、フラグを後から加筆しました。60付近です。webってこういうところ便利ですよね。



ミノタウロス・スフレチーズケーキ

レアボス・ミノタウロス(♀)の討伐のドロップ、囚人の乾酪(チーズ)、囚人のミルクなどを加工して作ったチーズケーキ。何故かココア生地を混ぜたような牛柄になっている。ココアの味はしない。

ふわふわの口当たりですぐに溶けてゆく極上のチーズケーキ。爽やかな酸味が鼻を抜けていくので、ホイップした生クリームを合わせていただく。粉砂糖をかけても美味しい。



廃棄できない原木市場の丸太たち

現実では売ってもらえないんじゃないかな。買取から1年以内に引き取ること、とか売買契約条件に盛りこめばいいのにね。法律とか経済とか詳しくないからできるのか分からないけど。



ミルクティーとロイヤルミルクティーの違い(知らなかったので調べた)


ミルクティー

茶葉を水やお湯で普通に紅茶をいれて、常温以下のミルクを入れます


ロイヤルミルクティー

茶葉を少量のお湯で蒸らします。鍋に牛乳を一緒にぶちこみ煮込みます。茶葉を濾します。できた!

※沸騰させちゃダメらしいぞ!


ロイヤルミルクティーは和製英語なので、イギリスに行っても使えない単語です。海外ではシチュード・ティー(煮込み紅茶)って呼ばれるんだとか。インドのチャイから派生した飲み方だそう。


参考

紅茶専門店 京都セレクトショップ

http://www.verygoodtea.com/y-koucha-royalmilktea-tukurikata/



移入・移出 輸入・輸出 の違い、補足?

国内の取引は移出入

国外との取引は輸出入

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