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71 スーパーなお兄さんたちの水色の土管

短いです



 叫びとともに、夜が明けていく。


 怒っているらしく、鶏冠からは湯気が出ている。鶏は激しく地面を蹴っていた。そして、手近なトマトやトウモロコシを捥いでは投擲してきた。

 畑の柔らかい土に足を取られながら、私は必死に後退する。


「うわっ!」


 紙一重で避けてはいるのだが、怖い。

 トマトが破裂したと思ったらそのあたりが氷漬けになるし、トウモロコシは壁に刺さってしばらくするとしゅうしゅうと壁を溶かしていくのだ。

 怖くね?これ野菜じゃなくね??


「ぴぃぃぃぃぃぃぃ!!」


 埒が明かないと思ったのだろうか、白レグ野郎は器用に指笛を吹いた。羽笛?

 するとどこからともなくミツバチが現れた。大量に。静かに植わっていた野菜も、自身の根を引き抜きうごめき始めた。

 ふざけんなよ貴様ら、ハニーマスタードで和えてやろうかああん??


「マジかよ、何なのこの鶏!!時限式モンスターハウスなんて聞いてねえぞ、おい!!」


 蜂は流石に早い!!!

 うわっ、じゃが芋がガチガチと歯を鳴らして、地面から飛び出してきた!!




 逃げようとそれなりに頑張ったのだが、エリアの真ん中、最初に荒らしたトウモロコシ畑に追い詰められてしまった。

 白レグ野郎の背後といわず、私から半径三メートルくらいの辺りに、ミツバチと野菜の大群がいた。ここまでか……!


「……ククク、ケッケッケッケ、コーケコーケッ」


 なんだこの三下っぽい笑い方。妙にムカつく。絞め殺してえ。


「たとえここで私を殺したところで、第二、第三の私が現れるぞ!!」


 プレイヤーだからな!!……しかし私も三下っぽいなオイ。

 後ろは壁、前はミツバチと野菜と鶏。こいつの卵は美味しいんだろうか?いや雄鶏?


 じりっと後退ると、かかとに何か硬いものが当たった。そのままバランスを崩す。


「ふぉ!?」


「クァ?」


 ぐんぐんと下がっていく視界に、足が空気を蹴った。すぐに着地するはずの体は、なぜかずっと浮遊感を覚えて。朝焼けの空は黒い円のフレームで区切られ、小さくなっていく。


「ぎゃあああああああああ!!?」


 ぐわんぐわんと反響する自分の悲鳴がうるさい。耳をふさいだがうるさい。


《条件を満たしたため、称号【野菜泥棒】を得ました》


 へ?……冤罪だ!!誤解だ!!

 システム、反応しろ!!




 どんっ、でんっ、でんっ、と硬い壁に打ち付けられて、方向を変えつつ、落ちること、落ちること。魔力頼みで速度を緩めつつ落ちることにも慣れてきた。冷静に考えてみれば、おそらく畑で見かけたパイプを下っているのだと思う。タイミングよく香の効果が切れたのだろう。

 大体十分くらい落下を続けただろうか、もふっと苔に着地した。


「おおお!」


 目の前にはマイナスイオンが漂ってそうな小さな滝が。遺跡の隙間の、崩れた石壁から、輝くような水が落ちている。滝つぼの周りには、こちらも石壁を突き破ったのであろう、植物の薄茶色い隆々とした根が張り巡る。もふもふと音が聞こえそうな苔が、水の光に照らされてあちらこちらに蔓延っていた。


「なんかご利益の有りそうな水だな……、汲んどくか」


 魚いねえなあ、と思いつつ、樽が出せ……、出せた、良かった。滅茶苦茶デカいな?……今の私は手のひらサイズでしたね。

 どうにか樽を沈めて、滝つぼに入ったまま樽をしまう。たぶん汲めているはず。汲めているといいな。


 うーん、ここからどうしよう。

 ぐるっと見渡す限り何もない。


 ……、なんかパイプがたくさん生えてた。


 これは行くしかない。さて問題はどのパイプを選ぶか、である。

 人間の脳はおよそ三択が限界である。それ以上の選択肢が用意されていると、なんかもう選ばなくていいか、となってしまうそうだ。前にテレビで見た。


「もうこれでいいかな」


 というわけで一番近い位置にあったパイプに潜りこむ。気分はさながら下水溝のドブネズミ……。願わくば短い経路でありますように。




ステータス(もう最近ステータス書かなくてもいいんじゃないかと思い始めた今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか)

名前(ネーム):ジャン・スミスLv.45

種族:人間 性別:男性

職業:【気分屋】

HP:171

MP:419

STR:32

VIT:29

INT:55

MID:90

AGI:139

DEX:146

LUC:99


称号

【混沌神の玩具】【運命神の憐憫】【怠惰神の親愛】【無謀】【マゾ】【命を弄ぶ者】【妖精郷の歓迎】【黄泉の道化師】【探検家】【妖樹の友】【界渡り(魔)1/1】【悪戯小僧】【変異種】【補佐官】【野菜泥棒】


スキル

戦闘

【盾】【刀】【奇襲】【会心の一撃】【空駆け】【バランス感覚】【毒耐性】【夜目】【逃げ足(一)】【肉体言語(初)】


魔法

【魔法陣(玄)】【生活魔法】【詠唱】


生産

【細工(一)】【採取】【料理】【木工(一)】【解体】【伐採】【書画(初)】【調合】


その他

【運】【薄影】【痛覚耐性】【読書】【識別】【木登り】【地図】【効果】【魔道具】【妖精化(玄)】【指導】【分解】


特殊

【混沌】【手抜き】【六文銭】



【野菜泥棒】

取得方法:畑から野菜を許可なく収穫する。

効果:可食の植物系モンスターから一定期間(=盗んだ個体数の二倍倒すまで)経験値が得られない。恒久的に買った野菜に一定確率で腐ったものや致死性のものが混じる。


道端の畑にたくさん植わっているからといって、勝手に採っちゃだめだぞ☆

畑の持ち主に声を掛ければ、大抵スーパーより安く売ってもらえるし、出荷できないB品はタダでくれることもあるかもしれん。まあ、無料のときは別途お返しと言うか物々交換はした方がいいと思う。

コミュ障の現代人にはハードルが高いのは分かるがな、勝手に毟るのは犯罪だぞ。


白色レグホン

一般の産卵鶏。日本の産卵鶏の内、約80%がこの鶏らしい。

なお、作者にも主人公にも見分けることができないので、登場した鶏が白色レグホンかどうかは定かではない。


まいふぇいばりっと鶏肉料理

棒棒鶏:しゃきしゃきぱりぱりのキュウリに、蒸しあげたさっぱり鶏肉を乗せて。ぴりっとした味噌っぽいよくわかんないソースで頂く。トマトも脇に添えると彩が良い。


チキンおろしだれ:焦げ目の付いた手のひら半分くらいの大きさの肉に、大根おろしを混ぜたサッパリ照り焼き風味の謎のタレをぶっかけた奴。外はパリッ、中はじゅわあ、としていたら最高なんだが、大学食堂で提供されているのは安いのでそこまで望んでは罰が当たる。あったかい白米によく合う。みそ汁のしょっぱさで〆。


大根と一緒に煮込んだ奴:醤油色の大根は口に入れた瞬間、じゅわああって溶ける。歯を当てるまでもなく。もうね、全ての旨みが解放されるのだよ。脂とか出汁とか諸々の。完全に鶏より大根の方が主役。良い地元の農家さんを見つけて買い付けるといいと思うよ!


唐揚げ:レモンは邪道である。下味は醤油派。異論は認めたくない。からりと揚げたてを頂くのが一番。あちっと唇を火傷させながら、さっくさくの衣を割る。歯が肉を裂けば、口内を焼く脂、旨み。もうたまんない!!

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