表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/113

17 イベント『シュート&ドッジ』

ブックマーク200件突破!とても嬉しいです<(_ _)>



 懐と飽きの問題で、大して練習せずに迎えたイベント当日。私が参加するのは本日三回目のものだ。


 結局読んだお知らせによると、イベントは仕事の都合で参加できないプレイヤーを可能な限り無くすため、一日に四回同じルールで開催され、一人につき一回だけ参加できることになっている。


 現在、現実時間では午後八時。最も参加者の多い時間だ。泣きそう。


「あ、いました〜。お久しぶりです〜」


 クーゼさんがサカイくんともう一人を従えて、手を振りながら此方に歩いてくる。

 白い兎の耳が生えた中性的な女性だ。


「ジャンさん、此方、先日伝えた料理人の(ナベ)さんです。鍋さん、この人がジャンさんです」


「鍋という。薬草料理や冷却魔法陣、ゼラチンには驚いたよ」


 笑いながら手を差し出されたので、私も右手を出し握手する。


「唐揚げがとても美味かった。流石本職は違うなと思う。これからも買わせてもらう」


 話を聞いてみると、最初のアバター設定時に彼女はDEX(器用)に極振りしたらしく、同じくマニュアルモードで的をやるそうだ。


「景品、なんでしょうね〜。私は高性能の機織り機が欲しいです〜」


「僕は高く売れるものか移動商店とか欲しいですね」


「わたしは冷却設備が生産所に実装されて欲しいな。アイスとゼリーを堂々と売りたい」


 私は【鑑定】が欲しい……。




《これよりシュート&ドッジ三回戦を開始します。参加者はメニュー画面より参加を選択してください》

《なお、イベントは約四十分です。予めご了承ください》


 いきなり響く無機質な声にビビりつつ、参加を選択。

 ふっ、と体が浮くような、エレベーターの減速時に感じる浮遊感を覚えて、景色が変わる。


 空の中、雲の上。

 見渡す限りの爽やかな青空は絶景ですらある。……地面が全く見えない。


《イベントに参加していただき、ありがとうございます。これよりルールを説明いたします》

《イベント中、享楽神の眷属・フェネクスによる実況があります。ご利用の方はメニューの該当箇所をオンにしてください》


 射撃側は自分の着弾数を最多着弾数で割った数が、的側は自分の被弾数を最多被弾数で割った数を一から引いた数がランキングされる。

 射撃側は着弾すれば1、防御されれば0.5、避けられれば0、的側は回避すれば被弾数0、迎撃できれば0.5、当たると1で計算される。

 墜落は両者ともに2負担になる。

 パーティーで参加する者は、平均が考慮される。


 個別ランキングや総合ランキングが射撃、的で別れて後日発表されるらしい。


「あ、パーティー参加だと目印をつけて良いようですよ。味方射撃防止ですかね?」


「あ、このリボン可愛いです〜」


「いや、ジャン君もいるのだし、それ(リボン)はどうかと。第一目立たなそうだ」


 鍋さん、もっと言ってやって!


「僕もリボンは勘弁ですよ?これなんかどうですか」


 サカイくんは青いバンダナを指した。

 私も自衛しなくては!


「私はこれが良いと思うが」


 私が示したのは、お面だ。顔が隠せて好都合だと思う。


「……ひょっとこ」


「せめてキツネの面とか能面とかないんですか」


「ひょっとこしかないようだよ?」


 上から順にクーゼさん、サカイくん、鍋さんの台詞だ。否定的な雰囲気にとっても納得がいかない。

 しかし、私も実は能面はかなり好きだ。

 各国のお面で比べると、最高に仕上がりが丁寧だ。身内贔屓かもしれないが。


「みんなが被らなくても、私はかぶるぞ?」


 クーゼさんがひいているのが、若干……訂正、正直かなり心に刺さる。


「射撃側はかぶる必要はないと思うよ。……わたしもひょっとこを着けるけどね」


 クーゼさんが一度ホッとして、またひいた。

 ひょっとこ、美少女にひかれるなんて、お前実は可哀想なやつだったんだな。


「僕も被ります。顔バレは避けたい……」


 クーゼさんの顔が絶望に染まった。周囲に埋没するというか、協調を示すという日本人の美徳(?)と、個人的な好みの板挟み状態なのだろう。


 ……ユー、被っちゃいなYO!


「わ、私も被ります〜……。ジャンさん、今度可愛いお面作ってくださいね〜」


「それもいいな、いい木があったら彫ることにする」


 能面か、できるだろうか?塗料を集めるのが大変そうだ。

 趣味だし、なんちゃって能面でもいいか。楽しみだ。


「「「ぶふっ」」」


 全員が面を選択したところで周りが噴いた。


 妥当な反応だ。四人のひょっとこが集まっているところを想像して欲しい。私も笑いたくなる。

 しかも内二人が箒を持ってるんだぜ。


《これより開始します。的側の参加者は飛んでください》


「二人とも頑張って逃げてくださいね〜」


「僕らは飛ばないようなので、多分そちらは高度制限があると思います」


「気をつけるよ。そっちも頑張って!」


 鍋さんは普通に横座りするようだ。安定するのか?

 私は片足を箒の穂にのせて浮かぶ。これが一番安定したんだよなあ。


「行ってくる」


 なんか叫び声が下から聞こえたけれど、問題ない。


射撃開始シューティング・スタート

《なお、メニュー画面にてランキングを確認することができます。適宜ご利用ください》


 影が薄くなるように意識していると、魔法や矢はほとんど飛んでこない。せいぜい私の近くを飛んでいる者を狙った流れ弾だ。

 ……暇。


 暇すぎて無駄に飛び回る私。

 私を認識できなくても、近づくと体が避けようとするのか、他のプレイヤーが避けていく。面白いのでまとめてみた。

 牧羊犬になった気分です。


 それにも飽きて会場のほぼ真ん中で観察することにする。

 他のプレイヤーは逃げ惑い、種々の魔法の光が爆発しているにも関わらず、私の周りは至って平和。ステキデスネー。


 ランキングでも見ていようか。

 思い立ったが早いか、メニュー画面を開く。

 総合は、おお?三位にヴェニスの商人が輝いているな。

 A×6(ヘキサ・エース)、竜の軍歌などと並ぶ、ヴェニスの商人。


 サカイくんが登録したパーティー名はヴェニスの商人なんですよ。みんなセンスいいよな。私はひょっとこ祭りを推したのだが、却下されてしまった。


 二人は今どう戦っているのだろう?


 きょろきょろと見下ろすと、口を小粋に窄めたチョコレートブラウンのひょっとこと眉尻を楽しげに下げたフワフワ金髪のひょっとこが。

 顔色が茶色や金なわけではない、あしからず。


「*****!」


 相変わらずわからないな〜。


「あの子を自動追尾〜」


 ナルホド、二人で確実に当てていくスタイルか。無駄がないな。【言霊】も欲しくなる。


《残り十五分です》

《射撃側の希望者は釜か箒を使用できます》


 えっ!!

 射撃側も飛ぶんですか!?

 其処彼処で悲鳴があがっているんだが!?


 ……どちらにせよ、私にはあまり飛んで来ないのだが。


《残り五分です》

《隠蔽効果のあるスキルが無効化されます》

《また、的側のランキング上位五名のプレイヤーは発光します》


 発光!?

 えっ、なんか私も赤くなっているんだが!?


《上位五名は着弾ポイントが倍になっています。なお、的側の失点は現状維持します》


 そのアナウンス直後、私の周りに矢鱈と降ってくる魔法と矢。


 たまに槍や剣も混じってくる……と思ったら妨害か!的側が的側に攻撃するなんてアリか!?

 実際可能のようだし、アリなんだろうけどさー……。


 私に対する狙撃は、少しタイミングをずらしたり、他の的の方へ突撃するだけでだいたいなんとかなる。誘爆〜。

 進行方向を予測した狙撃には、すすす、と華麗にバック。


「落ちろっ!!」


 余裕かましてたら前から大剣振りかぶった人が。

 ヤベッ、的達が団結して武器振りかざしてるんですけど!ちょ、避けられない!!


「チッ、お望み通りに落ちてやろう……お前も道連れだ」


 格好良く言ってみたものの、ひょっとこ。


 正面の男にドロップキック。

 空駆けで左右の者も踏み台にして前へ進む。

 飛んでくる魔法へは他の者を盾にする。


 ……あんまり私の蹴りは強くないと思うんだが、面白いようにバランス崩していくな。

 ブンブンと振り回される腕が危ない。

 あ、落ちた。


 私は箒を呼んで、無事に着……ち?ま、いいや。落ちなかったし!


《シュート&ドッジ三回戦終了です》


 うん、私頑張った!



備考

毎回平等な条件ではできないので、廃人さまはそれも込みで作戦を練りましょう。


次回も掲示板です。申し訳ない。でも変えられない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ