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10 相談?商談?


「なんで一撃で死ぬんですか?」


「さー?【会心の一撃】効果?」


「百歩譲って首が転がることは【解体】効果でいいとして〜、何故ドロップ品に変わるんですか〜?というか〜、突っ込みませんでしたけど【解体】というスキル自体私は初めて見たのですが〜」


 今聞き捨てならない感じの台詞が聞こえた。


「え、と。【解体】が未発見扱いなのも納得いかないんだが」


 二人は呆れたように私を冷たい目で見た。理不尽だと思います!


「β時代に【解体】はありませんでしたから〜、全てドロップするものだと思ってました〜」


「【解体】スキルの説明を見たところ、魔物の死体が残る、という記述がありますね」


 何だか凄く責められている気が……。


 ソンナコトイワレテモ、ワタシげーむショシンシャニチカイヨ。


「解体後に影響しそうな通常スキルは、無いですよね……。特殊スキルで思い当たるものはありますか?」


「【手抜き】か【混沌】だな」


 どちらかといえば【手抜き】かなぁ。

 【解体】+【手抜き】=ドロップアイテム?


「……もう理解できません〜。なんで未検証事案がゴロゴロ出るんですか〜」


「聞かなかったことにしましょう」


「そうしましょう〜」


「雑だな、私もよくわかっていないから助かるが。ところで、さっき使った二人のスキルを聞いてもいいか?」


 二人は顔を見合わせ、サカイくんから口を開いた。


「構いませんよ、【鑑定】持ちには見えますし。ただ他の人には内緒にしてくださいね」


「もちろんだ」


 私は二人に向かって至極真面目に頷いた。

 他に話す相手(フレンド)などいないという少々情けない事実から目を逸らして。


「……僕は【言語】スキルであらゆる言語に精通しています。さっきのは魔法言語で、魔法スキルがなくても魔法が使えます」


 効果は若干落ちるとのことだが、大分破格である。


「私のスキルは〜【言霊】と言うものでして〜。フワッとした効果をなんでも出せます〜」


 フワッとした説明ありがとう。こちらも使い方次第で凄いことになりそうだ。

 私の【読書】と似た雰囲気だな。


「二人とも面白いスキルだな。でもどうしてそれを取ったんだ?」


「僕は商人なので」


 ニコヤカな表情が眩しいです。


「私はランダム設定にして偶々でたのをそのままにした感じですね〜」


 そう言えば、一つだけランダムとかも出来た気がする。

 ……私は全て運任せだがな!なんだかんだ楽しいわけだが。




 そんなこんなで着きましたベスの街。

 アレフの街と大した違いはないが、心持ち通行人にローブを着た住人が多い、か?


 本来なら到着したら解散の予定だったのだが、掲示板に流す情報を決めたい、とサカイくんが言うので そのまま通りに面したカフェに。


 個室に通されたわけだが、やはりファンタジーでナイスな感じだ。

 ソフトな風合いの家具に、魔法のランプ、謎の観葉植物。良い感じの陽射し。うむ、良い。


 運ばれてきた紅茶っぽい何かにドバドバと角砂糖を投入し、満足する私。


 いやだって角砂糖がパステルカラーで七色揃ってたら全部入れたくなるだろう?

 角砂糖入れる度に色が変わるんだぞ?


 最終的に紅から薄茶になった液体を口に含む。


 !?


「苦ッ」


 砂糖じゃないのか!?


「最初の液体がだだ甘くて、この四角いアメーで甘さを抑えていく感じですね」


 サカイくんが解説してくれた。詐欺じゃないか!?


 マナー違反だが、私は自分のストレージから砂糖をだして入れる。


「……溶けない」


 勇気を出してコップを傾ける私。

 なんとも言えない苦味と、どろりとした甘みの塊が口の中で互いに引き立て合い、悲惨なことになっている。


 まあでも、腐った肉よりは美味しい。


「……本題に入りましょうか〜」


 サカイくんの隣で、もぐもぐとオレンジのタルトを食べているクーゼさんが話を切り出した。


「僕としては開示した方がいいと思いますが」


「いいぞ」


「早いですね!?」


 そんなに驚かなくても。


「【解体】はかなり利益率が跳ね上がるものだと思うのですが、本当に良いのですか?」


「構わない。私がそもそも、毛皮や肉の供給で生計?を立てようとは思っていないからな。それにドロップと切り替えられるのは多分私だけだろうし」


 ポカスカ切り替えられたら、万能過ぎるだろう。私は例外として。


「ナルホド〜、【解体】を取っていると急所でトドメが刺せる代わりに、ドロップ限定品が手に入らなくなるわけですから〜、とる人ととらない人が出そうですね〜」


「パーティーでどう働くかも確かめないといけませんね」


 二人は実は検証班なんだろうか。

 口直し用のコーヒーを飲む私。うむ、普通に苦い。素晴らしいな!


「虫系のモンスターも死体が残るぞ。ゾンビ系は知らないが」


「それは、女性は取るのを躊躇いますね〜」


 しまった、食事中にする話ではないな。

 クーゼさんが食べかけなのにフォークを置いてから気づいた。すまん。


「では、特殊スキルは伏せて公開します」


「任せてしまっていいか?私、掲示板は見ないのでな」


「見た方が良いですよ〜、と一概に言えないのが難点ですね〜」


 そうなのか。なら、今後も見ないな。


「そうだ、知っているかもしれないが、アレフの街からベスの街以外にも行けるぞ。アップデート待ちかもしれないから、行けるかわからないが」


「詳しい話を聞いても?」


 私はひとつ頷いて、図書館や資料室で調べたことを話した。【読書】さん優秀です。


「初めて新しい街に辿り着くというのは魅力的ですが、目立つのは好みませんね」


「初討伐には称号が与えられるそうなので〜、私は行ってみたいのですが〜」


 残念。べスの街を軽く見物したら一人で行っても良いだろう。

 転移許可証が手に入らないだけで、街には行けるだろうし。様子見ってことで。


「……もし、万が一、一人でボスを倒したら連絡くださいね?」


 サカイくんまさかエスパー……。


「流石に【テレパス】は持ってないですねえ」


 やっぱりエスパー持ってるだろう!


「それと、今回のボス戦におけるドロップ品の配分ですが、全てジャンさんに」


「私たちほとんど何もしてませんから~」


「そんなことないだろう。別に山分けで構わないが……?」


 ボス熊を釘付けにしてくれていたから、戦闘が楽に済んだのだし。例え私が【解体】を持っていたとしても。 

 色々言い募ったが、言いくるめられてしまった。納得いかない。

 しかし結局、熊素材を使う当てが無いのでサカイ君に買い取ってもらった。……結構高いな?


「最後に、【魔法陣】の情報は僕の知り合いの料理人にだけ教えようかと思っているのですが」


「構わんぞ。私は他人が作った美味いものを食べたいからな」


「ありがとうございます」


 ふふふ、これで儲かる、とサカイくんが黒い笑みを浮かべて素敵です。

 でもノってしまう私。


「お主も悪よのう」


「いえいえお代官様ほどでは……」


 私は【魔法陣】を使った料理の新作を必ず売ってもらうことを固く約束して二人と別れた。

 さて観光でもしようか!




備考

アメーはフランス語の苦い(amer)から。

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アメー苦い!?
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