5.
尊は部活に行く前は、必ずうちへ寄る。帰りは塾だったり、バイトだったり、忙しそうな高校生活を送っている。
私は朝帰りをやめた。相変わらずたまに渋谷へ行くけど、そんな日は、バイト帰りの尊と一緒に帰ったりしてる。
ある日、部活に行く前の尊に何気なく言われた。
「瑠利、俺を大人の男のかわりにするなよ? 俺は俺だ。瑠利が大切だし、大切でどうしようもないし。」
ハッとした。大人の男のかわり……。
「そんなこと思ってない!」
尊もハッとした。
「ごめん。」
「もう帰って!」
わけもなくイライラした。
寂しそうに家を出る尊を、いつもみたいに見送ることなく、私はベッドに倒れた。
大人の男のかわりて何!?
そりゃ、尊と私には、少し温度差あるかもしれない。
話してて楽しい尊と、奈菜の紹介てこともあって、そんなきっかけで付き合っていたかもしれない。
でも、尊は尊だ。
毎日、顔見に来てくれる尊。
渋谷で遊んでも、それは尊のバイトのある日だけだ。
ナンパされても、もう、ついて行ってない。
ハッとした。
尊、私のこと、知ってしまったの?
制服でもお構いなしに入れてくれるホテルで遊んでたり、タバコ吸ったり、て、タバコは尊も知ってる。やめろて、言われてるけど……。
尊、何を知ってしまったの?
でも、私、尊を男として意識して、ときめいてるのも事実だよ? 楽しいだけじゃない。
楽しいだけで、尊と付き合ったりなんかしてない!
私はベッドから起き上がると、急いで玄関へ向かった。
靴なんか何でもいい!
適当にぺったんこのミュールを履いて、尊を追いかけた。
5分も走ったら、尊の後ろ姿が見えた。
「尊!!」
驚いたように振り向く尊に向かって、スピードを上げた。
「部活行く前に、ごめん! なんで、あんなこと言ったの?」
私は息を切らしながら言った。
「なんで、て……。」
尊の目が泳いだ。
やっぱり、何か知ってるんだ!
「なんでもねーよ! ただ、俺は、お前のこと、好きなのをちゃんと伝えたかったんだよ!」
道行く人達の視線を、一斉に感じた。
「尊! 私も、変なことしてた時期あるけど、尊のこと好きだよ! 最初は楽しかったから、一緒にいた。でも、今は違う! 2学期からは真面目に学校へ行く! 尊、いるからだよ!」
「……。」
私達は、周りの視線なんかどうでもよくなっていた。
「部活の帰り、また、行くから……。」
「うん!」
私達はそこで別れた。
それから30分もしないで、尊はうちへ来た。
「顧問が出張になって、部活休みになった!」
「やったね!」
「遊びに行こうぜ! 俺、自転車とってくる!」
「うん!」
私達はどちらからともなく、手を繋いだ。
心が音を立てた。
目眩がしそうな、でも、心地良い音。
こんな気持ちになれるなんて……。
私達は走って家を出て、尊の家に向かった。




