食中花
虫は花を食べた。
花は花弁を散らされる事から始めて欲しいと望み、虫は花弁を一枚いちまい、丁寧に舐め上げて引きちぎった。
根元からは赤い液が流れ、花はそれに堪えれず身を揺らす。
花弁を頬張ると、しょっぱい口をなおすためにやくを掴み、おしべをカミソリで切り離し、細かく分けてしゃぶりついた。
噛めないところは下に散らかし、次へ次へと遊ぶように食べ散らかすばかり。
それを見た花はまた蜜を流し、それでも食べさせる。
食べていた虫は前足を擦り、花がどんな顔をしているかのぞき込み、表情が分からない顔を傾け花の柱頭を捻った。すると、みるみる萎れて、弱っていった。
虫は無表情に顔を傾け、羽を羽ばたかせて飛んで行ったが、少し飛んだだけで乱高下して落ちていった。
二つしかなかったが、果たして、食われたのはどっちだったろうか。