序章から続章へ。
朝靄の漂う田舎道を、ただただ歩いて何時間 経っただろうか。
バスが走る時刻まで時間を潰したい所だが、そうもいかずに2人は歩き続けている。
喉が渇く。
そう言えば、朝から何も飲んでいなかった事を思い出し、見つけた自販機で水を買う。
蓋を開け、ゴクゴクと勢い良く飲む整った青年の横顔を、矮小の少女は見上げて生唾を飲むのだ。
ゴクリ。
擦り切れた制服姿の少女を横目でチラリと見下せば、さぞ喉が渇いているのだろう予想。
青年は3分の1ばかりをペットボトルに残す。
「飲みたいのかよ?」
「……、」
「ったく、面倒クセェ……残り、やるよ」
「ぁ、ありがとうございますっ、」
少女はペットボトルに飛びつき、一口、二口。
青年はその姿を一瞥で見て捨て、先を歩く。
「ぁ、」
少女はペットボトルの蓋を閉め、青年の後を追う。
パタパタと聞こえる足音を背に、青年は怨言を零す。
「お前の所為で俺も逃亡者だ……何れ、捜索隊にリストアップされんだろぉぜ」
「……、」
「ツイてねぇ。冷凍肉で我慢すりゃ良かった……ムカつくッ」
「……、」
2人とも、着ている服はボロボロ。
血も着いている。体には包帯も巻かれている。
少女は青年の怨言を聞きながら、トボトボと後を着いて行く。
ソレはソレは心細そうに。
「どうして、食べなかったんですか?」
「……」
「どうして、病院から連れ出してくれたんですか?」
「……」
出会ってからラーメン屋へ行き、その数時間後にはトラックに弾き飛ばされて瀕死の重症だった。
2人は病院のベッドに横たわっていた所を無理矢理に起き上がって、何処に続いているのかも分からない この道を歩いている。
青年は少女の質問に答えない。否、ソレが答えなのかも知れない。
少女は立ち止まり、青年の背から地面へと視界を移す。
このまま着いて行っても迷惑がられるだけだ。
少女の足音が聞こえなくなれば、青年も立ち止まる。
そして、片手だけを後ろに伸ばすのだ。
「喉 渇いた。水」
「!」
少女は顔を挙げ、慌てて駆け出すと、残ったペットボトルの水を青年の掌に預ける。
青年は水を飲むでも無くペットボトルを反対の手に持ち替えると、空いた一方の手で少女の手を握る。
「送ってやるって約束したからな」
「でも、僕には帰る家がありません……僕は、アノマリーのサトリだから……」
青年は少女の手を引いて歩き出す。
「帰るぞ」
「僕は、」
「まずは、俺達の帰る家を探さなきゃな」
「!」
「何処へ行きたい?」
何処と問われても分からない。少女は苦笑する。
「綺麗な、所……」
少女が弱々しげに答えると、青年は笑う。
「ハッ! 何だそりゃ? 世界はキレイなトコだらけだぜ!
選びたい放題の俺ら勝利!」
青年の言葉に少女は頬を赤くする。
何処へでも行ける。青年の温かい手さえ離さなければ、何処へでも。
「僕、詩子」
「俺は龍司」
「龍……僕も一緒に行って良い?」
「その為に今 一緒にいるんだろーが。さ。早いトコ帰ろうぜ。詩子」
「うん!」
大丈夫。お互いの傍らがマイホーム。
End
Writing by Kimi Sakato




