潮騒を聴きながら。
翌日は早朝、港の漁師達が迎える普段と変わらない朝の風景に、龍司の姿は無い。
その代わり、人目の付かない浜辺に 息の無い男女の遺体が辿り着いた。
発見したのは、港に勤める年老いた猟師達だ。
青年が少女を確りと抱きかかえた その姿に、老人達は言葉をかわすでも無く、
海が見える静かな丘に2人を埋葬。
海の潮で染まった帽子をとって、石コロを積んで作った小さな墓標を見つめる。
「――だから言ったんだ。無理すんなって」
漁業組合の会長が呟けば、嗄れ声が点々と嗟泣を聞かせる。
潮風も併せて湿っぽい。
そんな情けない漁師達の間を縫って、老婆が墓標の前に膝をつく。
「何だ。駄菓子屋の お婆ぁじゃねぇか。この山道を1人で登って来たんか」
「そんな紛った腰で危ねぇだろぉ、」
「うんうん。でもねぇ、お婆ぁもねぇ、コレくらいは まだまだ歩けるんだよ」
「お婆ぁ、なんじゃぁそりゃ」
「ラムネアイス。
でもね、お婆ぁの足じゃぁココに来るまでに全部 溶けちゃうからねぇ、
当たりの棒を持って来たよ。ケンカしないよぉにね、ちゃんと2人分。
コレで我慢してね」
【アタリ】と書かれた木の棒を2つ 墓標に備えると、老婆は深々と手を合わせる。
「この町を守ってくれて ありがとぉ。
優しい青頭巾サン、ゆっくり おやすみねぇ……」
老婆に倣って、漁師達も手を合わせる。
コレからは、波の音だけを聴き続けよう。
2人一緒に。
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