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ザザッ!!
牧田の拳が、龍司の脇腹をほんの僅かに掠る。
ガターン!!
服を掠っただけにも関わらず、龍司の体は振り飛ばされ、地面に転がる。
「ぅッ、ゲホッ、……ッッ、ゲホゲホ、」
{な、何つぅパワーだよッ、完全に肋骨がイッたッ、息が、息が出来ないッ、}
喉の奥から、ダラダラと血が逆流。
脇腹を押さえれば皮膚が削ぎ落とされているのが分かる。
直撃を免れても、赤頭巾に触れた時点でアウトなのだ。
「ぅぅ、ぁぁッ、……り、ゅぅ、龍、龍、」
詩子の体はガタガタと震える。
龍司の痛みが伝わる。解かる。この痛みは既に、詩子のものだ。
この儘では詩子がショック死してしまう。龍司は木曽川を睨む。
{肉だ……腹、減った……死ぬ、、喰わなきゃ死ぬ、、死にたくねぇ……}
龍司は壁に寄りかかりながら立ち上がる。
その休まらぬ眼光に龍司の食欲を見れば、今こそ留めを刺してやるべきと牧田は強く思う。
「青頭巾! お前だけは地上に在ってはならない!!」
牧田の拳から逃れる力は無い。龍司は目を細める。
{化け物だってイイ……どんなに汚らわしい生き物でもイイ……
俺は詩子と一緒に……詩子と一緒に何処までだって逃げる……
ただ、ソレだけで良いんだ……}
龍司が観念を決めると同時、木曽川は叫ぶ。
「ゃめ、やめなさい!!」
「!」
ガッ……
木曽川の制止に牧田は拳を慌てて引き止めるも、今1歩、遅い。
流れる様に腕は振り下ろされる。
……
……
一瞬、目の前で詩子の髪が揺れた様に見えたのは気の所為だろうか、
龍司は ゆっくりと足元に視線を下ろす。
「詩、子……?」
ジワリジワリとコンクリートに広がる赤い血。
その夥しい赤の中央に詩子が倒れている。
「詩子……詩子?」
龍司が震える唇から声を絞り出して名を呼ぶも、詩子は動かない。
牧田は仰け反り、後ずさる。
龍司を守る為に身を挺した詩子の暴挙に、木曽川は怯える様に表情を歪ませて頭を振る。
「ま、牧田、何て事を……折角、折角 見つけたメスのサトリが……
私の、サトリが……」
「そ、そんな、詩子サン……まさか、この手で詩子サンを……
ぁ、あぁぁ……」
牧田の力が如何に弱められたとしても、掠っただけでも致命傷。
龍司は崩れる様に膝を突き、詩子を抱え起こす。
「ぅ、た、子? 詩、子……シッカリ、、シッカリしろ……
大丈夫、だから、すぐ、助けてやるから……」
顔の半面が流血で良く見えない。
龍司が頬を撫でれば、詩子は辛うじて片目を開ける。
「……りゅ、ぅ、」
「詩子ッ、詩子、……どうして、どうして俺なんかの為に お前が こんな、詩子っ」
「食べて……」
「ぇ? ……な、に言って、」
耳を疑う龍司が頭を振れば、詩子は小さく笑う。




