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aNoMaLy  作者: 坂戸樹水
33/36

22


ザザッ!!



 牧田の拳が、龍司の脇腹をほんの僅かに掠る。



ガターン!!



 服を掠っただけにも関わらず、龍司の体は振り飛ばされ、地面に転がる。


「ぅッ、ゲホッ、……ッッ、ゲホゲホ、」


{な、何つぅパワーだよッ、完全に肋骨がイッたッ、息が、息が出来ないッ、}


 喉の奥から、ダラダラと血が逆流。

脇腹を押さえれば皮膚が削ぎ落とされているのが分かる。

直撃を免れても、赤頭巾に触れた時点でアウトなのだ。


「ぅぅ、ぁぁッ、……り、ゅぅ、龍、龍、」


 詩子の体はガタガタと震える。

龍司の痛みが伝わる。解かる。この痛みは既に、詩子のものだ。

この儘では詩子がショック死してしまう。龍司は木曽川を睨む。


{肉だ……腹、減った……死ぬ、、喰わなきゃ死ぬ、、死にたくねぇ……}


 龍司は壁に寄りかかりながら立ち上がる。

その休まらぬ眼光に龍司の食欲を見れば、今こそ留めを刺してやるべきと牧田は強く思う。



「青頭巾! お前だけは地上に在ってはならない!!」



 牧田の拳から逃れる力は無い。龍司は目を細める。



{化け物だってイイ……どんなに汚らわしい生き物でもイイ……

俺は詩子と一緒に……詩子と一緒に何処までだって逃げる……

ただ、ソレだけで良いんだ……}



 龍司が観念を決めると同時、木曽川は叫ぶ。



「ゃめ、やめなさい!!」


「!」




ガッ……




 木曽川の制止に牧田は拳を慌てて引き止めるも、今1歩、遅い。

流れる様に腕は振り下ろされる。



……

……



 一瞬、目の前で詩子の髪が揺れた様に見えたのは気の所為だろうか、

龍司は ゆっくりと足元に視線を下ろす。



「詩、子……?」



 ジワリジワリとコンクリートに広がる赤い血。

その夥しい赤の中央に詩子が倒れている。



「詩子……詩子?」



 龍司が震える唇から声を絞り出して名を呼ぶも、詩子は動かない。

牧田は仰け反り、後ずさる。

龍司を守る為に身を挺した詩子の暴挙に、木曽川は怯える様に表情を歪ませて頭を振る。


「ま、牧田、何て事を……折角、折角 見つけたメスのサトリが……

私の、サトリが……」

「そ、そんな、詩子サン……まさか、この手で詩子サンを……

ぁ、あぁぁ……」


 牧田の力が如何に弱められたとしても、掠っただけでも致命傷。

龍司は崩れる様に膝を突き、詩子を抱え起こす。


「ぅ、た、子? 詩、子……シッカリ、、シッカリしろ……

大丈夫、だから、すぐ、助けてやるから……」


 顔の半面が流血で良く見えない。

龍司が頬を撫でれば、詩子は辛うじて片目を開ける。


「……りゅ、ぅ、」

「詩子ッ、詩子、……どうして、どうして俺なんかの為に お前が こんな、詩子っ」

「食べて……」

「ぇ? ……な、に言って、」


 耳を疑う龍司が頭を振れば、詩子は小さく笑う。


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