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aNoMaLy  作者: 坂戸樹水
31/36

20


「喰い散らかしてやろぉかと思ったが気が変わった。……ただ殺す。

鳥の餌になれよ」


 生きる為に殺めるのではない。木曽川に与えるべきは殺戮。


「腹 掻っ捌いて吊るしてやる。そぉすりゃ、鳥も大喜びでつつきに来る。」

「ッッ、、」


 青頭巾は殺しの天才だ。人間である木曽川に勝ち目は無い。


(龍の怒りが聞こえる……とても痛くて、悲しくて、混乱した怒り……)


「り、、ゅ……ぅ……」

「目ぇ瞑って待ってろ、詩子。一瞬で終わらせる」

「龍……逃、げて、」


 詩子は龍司の背後を指差す。


「――ぅぅぅ、……ぁぁ、痛かった、ぁぁ、ビックリした……」

「ぁ……?」


 牧田は首を押さえ、ムクリ……と起き上がる。

龍司は寝起きの様な牧田を視界に目を見開く。



「バカ、な……手応えは、あった……」



 手加減なぞしていない。

間違いなく一振りで首の動脈を切断し、息の根を止めた筈だ。

ソレが何故 生きているのか、龍司にはサッパリ解からない。

そんな間抜けた表情に、木曽川は高らかに笑う。


「アハハハハハハ!! この私が何故、赤頭巾を連れていると!? 

ただのノロマな怪力なら、何の価値も無いでしょぉに!!」

「不死身、か……?」

「ええ、まさに! 不死身と言うに相応しい異種!

赤頭巾の怪力は、人体が持つ本来の力の200%をリミッターカットで発揮するだけの事! けれど、肉体の素材が強固に出来上がっているわけじゃない!

力を使えば崩壊する普通の人体!」


 確かに、包丁は難なく牧田の首を裂いている。

その感触は普通の人間のものと代わり無く脆弱だったが、牧田の傷は跡形も無く塞がっている。



「超再生力……」


「流石、知能だけは一端ねぇ、青頭巾!

そぉよ! コレこそが赤頭巾の持つ本当の性能!

リミッターカットで崩壊する体を、次の瞬間には元通りに再構築する再生能力!

だからねぇ、青頭巾! アンタが何度 殺しても、牧田は死なないんだわよ!!」



 牧田は俯き、弱々しげに目を伏せる。

その表情は、自らの体質を悔やむものだ。詩子は牧田を見つめ、涙を零す。


(あの人は臆病だ……

いいえ、赤頭巾は元々そうゆう性を持っているのかも知れない。

人を傷つける事を、ただ恐れている……)


「助け、て……龍を、許して……逃が、して……お願い、しま、す……」

「ぅ、詩子サン……」


 詩子の嘆願に牧田は顔を挙げ、狼狽える。


「せ、先生……」

「何をやってんの、牧田! とっとと青頭巾を殺しなさい!」

「で、でも、先生……」

「コレは人間じゃないでしょぉ! ただの殺人鬼でしょぉ!

アンタの友達も喰われてるでしょぉ!!」

「で、でも先生、彼ではありません……自分の友達を喰ったのは、違う青頭巾です、」

「牧田……アンタは本当に馬鹿だわね!! 青頭巾は頭のキレる化け物だわよ!

喰いモノに困れば、何れ この小娘だって喰う! ただの非常食に過ぎないのよ!」

「!!」


 木曽川が詩子を指差せば、龍司は一層に目を怒らせる。


「勝手な事言ってんじゃねぇぞ!! 誰がそんな事するか!! 

詩子だけは、詩子だけは、」

「フハハハハハ!! そんな戯言、誰が信じる!?

手懐けてから殺そう何て、アンタみたいな下衆の考えそうな事だわ!!」

「テメェ!!」


 知った様な事を言う その口を封じなければなるまい。

龍司は木曽川に向けて包丁を振り上げる。

だが、その腕は背後からガッチリと捕み止められる。


「!!」


 黒目ばかりを後ろに向ければ、そこには赤頭巾。

真一文字に口を結び、眉間に皺を寄せた牧田の顔は怪物と呼ぶに相応し形相。

大した力は加えていない。然し、龍司の力では 牧田の手を振り解く事は出来ない。


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