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aNoMaLy  作者: 坂戸樹水
28/36

17


 詩子は立ち上がる。



「龍に、何する気……?」


「さぁ。ソレは牧田に聞いて貰わないと分からない事だわよ」



 バスは停留所で停まれば、木曽川は躊躇い無くバスを降りる。

詩子が追わなければ、木曽川は龍司の元に牧田を送り込むだろう。


(龍……)


 詩子はバスを飛び降りる。予定調和。

木曽川は詩子を眄顧し、妖笑を浮かべる。



「そうね。良い子だわよ、詩子チャン」



 詩子は諦観に目を閉じ、気だるく口を開く。


「……最後に行きたい場所がある。

そこへ行く事を許してくれたら、何でも言う事を聞く」

「良いでしょう。ソレくらいの時間は与えて上げるわ」



*



 白いワゴン車は海岸線沿いに停車され、運転席で待機する牧田は、助手席に放った携帯電話に瞥々と目を向ける。その傍ら、掌に並べた桜色の貝殻を愛でる。


「綺麗な貝殻だ。

……でも、コレをくれた あの子も とても可愛いらしい子だった。

先生は彼女がサトリだと確信を持っていたようだし、間違いないだろう。

ぁぁ、また会えると思うと楽しみでならない。でも、大丈夫だろうか?

先生は 解かるように話をつけると言っていたが、短気な人だから……

ぁぁ、いかん。自分は あの兄を見張っていなければならなかったっ、」


 木曽川が詩子を説得する間、『邪魔に入られては困るから』と、連絡を待ちつつ、龍司の監視も兼ねての車中待機をするよう言い使っている。

牧田が思い立った様に顔を上げると同時、運転席の窓がノックされる。



コンコン、コン。



「?」


 目を向ければ、そこには涼やかな目元が印象的な眉目秀麗。

牧田は動揺に右往左往。然し、無視するのも怪しまれるから、慌てて窓を開ける。


「ど、どうも今日和。な、何でしょうか……?」

「さっきは浜辺で、妹がお世話になりました」

「ぁぁ、いやぁコチラこそ!」

「こんな所で何を? 連れの方は一緒じゃないんですか?」

「ぁぁ、その……ぇぇ……

ちょっと席を外してまして、ココで待つように言われていまして、はい、」

「ラムネアイスでも買いに行ったのかな?」

「ぁぁ、アレは本当に美味しいですねぇ。自分は今日、10個も食べてしまいましたよ」

「そりゃスゲェ」

「宮原サンこそ何をしているんです?」

「俺、名乗りました?」

「!! ……ぁ、ええ。はい。さっき妹サンから、はい、」

「そっか。……いえ、この辺は凶暴な青頭巾が出るもんで、大丈夫かな? と。

特に余所者が狙われますから」

「ぁぁ、聞きました。ぁぁ、恐ろしい……」

「ええ、ホントに。でも俺は、赤頭巾も怖いですけどね」

「ぇ?」

「だって、怪力でしょ? 何でも壊すでしょ? ならぁ、人も殺すでしょ」

「そ、そんな事は無い!」

「へぇ。詳しいですねぇ?」

「ぃ、いや、ソレはぁ……何となく、少し力が強いだけで、人を傷つけたり、そんな恐ろしい事はしないんじゃないかと……」

「どぉだかねぇ?」

「……、」

「ギャハハハハ! 何でアナタが気を悪くするんです? ギャハハハハ!」

「ぁ、ぁぁ、ええ、そうですね……、」

「ソレより、妹を見ませんでしたか?」

「! ……さぁ、ぉ、お買い物、じゃぁないですか?

まだ陽もあるし、暗くなるには時間もありますし、きっと……」

「困ったなぁ。実はアイツ、体が弱くてね」

「え?」

「薬を飲む時間だって言うのに、戻って来なくって、なに考えてんだか。

飲まないと、ホラ。さっき、浜辺で酷く震えたでしょ? ああやって発作が起こる」

「ほ、発作!? アレは発作だったんですか!?」

「ええ。さっきは直ぐに薬を飲ませたから良かったけど、遅れるとヤバイ」

「どうヤバイんでしょうかっ?」


「死んじまう」


「!!」


 牧田は忽ち顔面蒼白。

浜辺でのあの反応から、木曽川は詩子がサトリだと確信して後を追っているのだ。

ソレが違うとなると、とんでも無い事になる。

牧田は助手席に預けていた携帯電話を取り、慌てて木曽川の番号をコールする。


「た、大変だ! ぃ、いや、大丈夫ですから、

ちょっと待って下さいね、今 先生に、………アレ? おかしいな、出ないぞ、」


 何度コールしても木曽川は応答せず、留守番電話に変わってしまう。




*


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