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aNoMaLy  作者: 坂戸樹水
27/36

16


 詩子は町の中心部に向うバスに飛び乗る。

夕暮れの最終バスだけあって、乗客は詩子の1人きり。


(良かった、最終バスに間に合って……

あの木曽川と言う人は、サトリが人混みを嫌う事を知っていた。

ソレなら、なるべく人の多い場所へ逃げよう。

そうすれば、龍と赤頭巾を引き離す事も出来る)


 絶対に龍司と牧田を対峙させてはならない。

詩子は見納めになるだろう海の景色を目に焼き付けるべく、座席に膝を乗せて窓に張り付く。


(龍と過ごした町の中で、ココが1番長くいられた。

ココが1番、優しい町だった……)



「海の龍……」



(大丈夫。必ず逃げ切って、またココに来る。龍に会いに来る。

そして、また一緒に暮らすんだ。龍と一緒に)


 途中の停留所でバスが停まる。すると、女が1人、乗り込んで来る。



「ぁ……」


「さっきは どぉも。詩子チャン。1人でお出かけ?」



 木曽川だ。バスの降車扉は閉まり、再び走り出す。

木曽川は詩子の隣に腰を下ろす。


《町の老人は話にならないから、若い子に聞いたわ。

何処から来たのか分からないけど、働き者の お兄サン・宮原龍司クンに、病弱な妹の詩子チャン。

そう言えば、特殊捜索隊のアノマリー名簿には小角詩子と言う、今は16才になる女の子の名前が書いてあったわ。嫌だわねぇ、化け物と同じ名前なんて》


「ッ、」


《やっぱり。聞こえているのね? 

素晴らしい能力だわ、詩子チャン。どうか、私と一緒に来てちょうだい。

そうしたら、私が責任を持ってアナタの力を解明し、最高の人生を送れるよう約束する》


「ッッ、」



《そうだ。面白い話を聞かせて上げましょう。何れアノマリーは絶滅すると言う話を》



「!?」



《減らされる事はあっても、コレ以上 増える事は無い。ソレが現段階の私の研究結果》



「……どう、ゆう事?」

「フフフ。やっと口を利いてくれた」

「……、」

「興味深いデータが出たのよ。

アノマリーが23年前の異常気象が原因で発生したのは知っているわね?

けれど、能力には個体差がある。どんな個体さか解かる?」

「……」


「流石にソレは分からないわよねぇ?

……フフフ。ソレはね、いつ産まれたのか、よ」


「ぃっ?」

「異常気象に近い年に生まれた分、強い影響を受け、能力を備える。

だから、現在23才のアノマリーが最も性能が良いと考えられるのよ。

ソレ以降、少しずつ能力の恩恵は弱まっている。

だから、数十年後にはアノマリーとして覚醒する者は現れなくなる。

脅威の対象外。どう? 面白い話でしょ?」

「面白い……?」

「ええ。アノマリーの発生は あくまで一過性。奇跡の期間に産まれた奇跡の子。

ソレに気づきもしない愚かな政府は、アナタ達を殺して歩くばかり。

アナタはね、大事にされる必要がある」

「僕の子宮を ほじくり出すのに?」

「アラアラ、そこまで聞かれていたのね。

大丈夫よ。ちゃんと麻酔はするし、殺しはしない。

子宮を取り出すのは、老いる事が無いよう培養液に浸ける為。

そして、沢山の子供を産めるようにする。

美しく純粋なサトリと、例えば……強靱な肉体を持った赤頭巾のかけ合わせとか」

「ふざけんなッ、」

「次の停留所まで 後5分程かしら? 詩子チャン、一緒に降りましょう」

「ヤダッ、」

「そう。残念ね。ソレなら他のサトリを探すしかない」


 木曽川はアッサリと引き下がり、腰を上げる。

次の停留所で降りる様だ。


《そう言えば――牧田は何処へ行ったのかしらね?

海が気に入ったと言っていたから、あの辺りにいるのかも知れない。

何処かの若造に絡まれなければ良いけれど》



「!!」



《23にもなって、糸の切れた風船のようで困った赤頭巾》


 異常気象は23年前。

牧田は、その同年に生まれたアノマリーの赤頭巾。最強の赤頭巾。


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