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aNoMaLy  作者: 坂戸樹水
25/36

14


……

……



「――!!」


 息を飲んで目を覚ました先に見えるのは、見慣れたアパートの天井と、酷く憔悴した龍司の顔。


「詩子っ、」

「龍……」


 今が いつで、何処から何処までが現実なのか夢なのか、詩子には良く解からないでいる。

然し、何はともあれ、詩子が目覚めた事に、龍司は布団に突っ伏す。


「ょ、良かった……お前、いきなし倒れるからぁ、」

「海……」

「そうだよ、海に行った帰りに倒れた。覚えてないのか?」

「……」


 浜辺での出来事は夢では無かった。詩子は呆然と天井を見つめる。


(あの2人は捜索隊じゃない。

けど、サトリを探している。メスのサトリ……

あの男の人もアノマリーだ。怪力の赤頭巾……

勝てない……龍でも勝てない……バレたら殺される……

いや、バレた……ココが見つかるのは時間の問題だ……)


 詩子は龍司の手を握る。


「ぅ、詩子?」

「龍……アイス、食べたい。ラムネが入ってるの。海で一緒に食べたかったのに……」

「な、何だよ、そんな事か……、分かったよ。買って来る。

直ぐ戻るから ちゃんと寝てろよ?」

「ぅん、」


 パタン……と玄関のドアが閉まると、詩子は起き上がる。


 窓の外は夕暮れ。コレから益々 空が赤く染まるだろう。

詩子は押入れの中の鞄を引っ張り出し、身近な荷物を手早く詰め込む。


(赤頭巾の事は、以前に龍が教えてくれた)



『俺も まだ遭った事はねぇが、随分な怪力だって話だぜ?』

『赤頭巾なのに?』

『ハハハ! オオカミに狙われる方の赤頭巾じゃねぇよ。

日本の怪力妖怪・赤頭あかずってのから引っ張ったみたいだ。

出くわしたくねぇなぁ、ヒットポイント高めのとはさぁ』

『青頭巾の方が強いでしょ?』

『そりゃどーかな? 青頭巾は俊敏で瞬発力が売りってだけで、力比べはぁ……

あぁヤダヤダ。暑苦しいのは苦手だっつの』



(青頭巾は頭を使って、蜘蛛のように巣を張って、自分が捕らえられるだけの獲物にしか手を出さない。

だから、赤頭巾のような怪力は相手に出来ない。

丸腰じゃきっと勝てないって……)


 青頭巾は、相手が自分より強いか弱いかを見極める本能を持っている。

返り討ちに遭わされる様な相手には、決して手を出さない周到さを備えているのだ。


 その点、赤頭巾は攻撃力に長けている。肉体も強固なものに違いない。

そんな強力な拳の1発でもくらえば、泣く子も黙る人喰いの青頭巾であっても一溜まりも無く即死だ。


(龍に勝てない相手に僕が太刀打ち出来るわけが無い、分かってる……

でも、龍を巻き込みたくない。コレ以上 龍を傷つけたくない!)


 箪笥の引き出しからは、龍司が使っていたサバイバルナイフを取り出す。



「龍、コレだけは持って行かせて……一緒にいて……」



 独りは寂しい。

龍司の温もりを手に、詩子は部屋を出る。




*

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