十五話 ちょっとした興味
「冒険者ギルド・・・この街にもあったんだ」
目に付いた建物は冒険者ギルドという建物だった。
冒険者とは、いろんなところから集められた依頼を解決して生活している人のことである。
依頼は手伝いから魔獣などの討伐と幅広い。
要は戦闘できる便利屋集団みたいなものだ。
「冒険者も面白そうだし、入ってみようか」
僕も魔法を覚えて少し経った頃は魔物とかを倒したいと思ったものだ。
扉は両開きの大きな扉だったが、基本開けっ放しのようで開いていた。
中に入ると、中はそこそこの喧騒に包まれていた。・・・少々酒の臭いがするな。
奥を真っ直ぐ見ると、受付のようなカウンターが設置されていた。その横の方は酒場のカウンターのようだった。
テーブルは大分埋まっており、喋っていたり、ご飯を食べていたり、酒らしきものを飲んでいる人がいた。こんな昼から酒とはいかがなものか。
少しの視線を受けながらギルドの方の受付カウンターへ向かう。
昼時なためか並んでいる人は皆無で、丁度受付にいた人も僕が並ぶ前には用が終わったらしく出入り口へ向かって行った。
とりあえず話しかけてみよう。
「すいません」
「はい、冒険者ギルドへようこそ。ご用件はなんでしょう?」
受付は綺麗なお姉さんだ。しかし問題はそこではなかった。
なんとこの受付のお姉さん、ウサ耳なのである。白い耳がピコピコ動いてる。なにこれ可愛い。
「ギルドへ登録したいんですけど」
「はい、分かりました!この紙に名前、年齢、職業、主力武器を書いて下さい。あ、あと登録料として1000ペンドをいただきます」
名前年齢はいいとして、主力武器は・・・メイン剣サブ魔法な感じに書いておくか。
メイン剣は男の夢だからね。
最後に職業・・・ない!そんなものはない!
ってことは僕は絶賛無職中なのか・・・。それはそれでなんかやだなぁ・・・。
「職業欄って書くことない場合はどうすればいいんですか?」
「ない場合は空欄でも大丈夫ですよ」
「じゃあこれでお願いします」
懐から出した1000ペンドと一緒にウサミミお姉さんへ紙を出す。
「はい、確認しました。フルカワさんですね。それでは改めまして、私はここで受付嬢をやっているミロールといいます。今後ともよろしくお願いしますね。こちらがフルカワさんのギルドカードとなります」
ミロールさんは紙とお金を受け取ると、ギルドカードをこちらへよこしてきた。
なかなか綺麗だな。そうやってカードをクルクル回しているとウサミミお姉さんから説明が入った。
「まずはギルドカードの説明です。これには階級があり下から青、緑、黄、赤、紫、金、黒となります。階級を上げるには一定数依頼をこなし、実力があると判断されればギルド側から試験として依頼が出されます。その試験に受かれば晴れて新しい階級になれます。ちなみにパーティを組むと階級は全員の平均となります。ここまで大丈夫ですか?」
まあ大半は予想通りだな。
「大丈夫です、続けて下さい」
「では次に依頼についてです。依頼はそちらの掲示板で確認できます」
ミロールさんの指差すカウンターのカウンターの間には大きな掲示板が掲げてあった。
「掲示板にある張り紙一枚が依頼一つ分となります。依頼を受ける場合は、依頼の張り紙を持ってきてくだされば受理されます。依頼にはギルドカードと同じように階級があり、受けられる依頼は自身の階級以下の依頼と一つ上の階級です。パーティの場合は二つ上まで受けられます」
なるほどねぇ。単純なシステムだ。
「最後に注意事項です。ギルドカードを紛失すると再発行には40000ペンドほどかかるのでご注意下さい。あとギルド側は基本冒険者同士の争いごとには介入しません。酒に酔っ払った人には注意して下さい」
チラリと酒場のほうをみるミロールさん。
「その様子だと随分苦労なされたみたいですね」
「いえ、もう慣れました・・・」
そう言うミロールさんは遠い目をしていた。これは同情をせざるを得ない。
「それじゃあさっそく依頼を受けたいんですけど最初にお勧めな依頼とかありますか?」
「そうですねぇ、最初の人にはヤメギの薬草採取の依頼ですかね。いくらあっても困らないのでギルド側から常時依頼されてますから」
「なるほど、ちなみにどんな感じで生えているんですか?」
「ちょっと待って下さいね。えっと・・・これですね」
カウンターの下から出した本をパラパラめくり、挿絵がついたヤメギの薬草についてのページを見せてもらった。
一年中自生していて、木の傍に生えているらしい。紫の花を咲かせるようだ。
「ありがとうございます。それでは早速・・・」
サッと掲示板まで移動し、目当ての薬草採取の依頼書を見つける。それをとりミロールさんのところへ戻る。
「それじゃあこれお願いします」
「はい、受理されました。ヤメギは近くの森にあるのでがんばってくださいね!」
笑顔でそう言われる。ああ、これは酔っ払いが絡むのも納得の笑顔ですわ。
「ありがとうございます。それじゃあ」
僕は依頼を受けるべく、そのままギルドを出た。
少しジェラシーの篭った視線を受けたのは気のせいではないだろう。
誠司がギルドを出て少し経った後・・・
「あら、いけない!今近辺に魔怪鳥が出現しているのをセイジさんに伝え忘れてしまったわ!どうしましょう・・・」
早くも事件発生である。
◇◆◇◆
「よく考えたらまだ昼ご飯食べてなかったな・・・」
ノルマのヤメギ20本のうち18本まで集めると、腹が減っているのを思い出す。
そもそも食べる場所を探していたのにどうしてこうなった・・・。衝動的に動くのも考え物だな。
「あっ、二本発見。これでノルマは達成だな」
採取したところでグゥ〜と腹が鳴った。
丁度なんか森の広場的な場所が遠目に見えるし、あそこらへんでサンドイッチもどきを食べるか。
そんな感じで誠司は森の中にある開けたスペースへ向かう。
しかし誠司は気がつかなかった。誠司は採集に夢中になりすぎたせいで森の奥深くまで来ていたのだ。
普通森の中に開けたスペースなど発生することはよほどのことがないかぎりありえないのだ。森の奥ならなおさらである。
つまりこのことが示す可能性は・・・。
「さぁ〜ご飯ご飯〜。いただきま・・・ん?」
突如周囲に影が差す。雲でできる影のスピードではない。
バサッバサッと羽音が響きその影の主が降下してくる。
「グァッーーーー!」
「・・・これまた大変なモノが出てきましたな」
森の中に開けたスペースを作っていたのは巨大な魔物という可能性に誠司は思い切りブチ当たってしまった。
お読みいただきありがとうございます。
ご感想、誤字・脱字・変な文章などの報告等々お待ちしています。
気がつくと既にユニークPVが一万手前まできていました。こんな稚拙な小説ですが、皆様を少しでも楽しませれば幸いです。
さて、定番の冒険者ギルド説明回です。階級にアルファベットだと異世界にアルファベットが存在することになってしまうんじゃないかなーと思って色別にしました。ちなみに隠し階級的なものも考えています。
次回、でかい鳥の魔物VS誠司。某大怪鳥ジークロッ○を考えながら書いていたのは内緒。