2)shed tears weep
瑠亜は急いで家に帰った。
「ただいま、お母さん」
たぶん2階にいるであろうお母さんに声を掛けた。
「お帰りなさい、マイハニー。」
外国人ならではの挨拶。
上から降りてくる母のスリッパの音が階段に響く。
今日は母に顔を見せたくない一心で水面台へ急いだ。
入るなり、鍵をかけた。
「どうしたの?ハニー?」
心配そうな声が扉越しに聞こえた。
気づかれまいといつもより高めの声を出し
「なんでもないわ、お母さん。暑いからシャワー入るわ。」
この言い訳なら今日は通じるだろう。
外は31.5℃もあるのだから。
真夏の東京は今日も暑い。
「そう?ならいいけど。何かあったら、読んでね?マイガール。」
澄んだ声がバスルームにも届いた。
パタパタと行った音を確認して、その場に蹲る。
意外にも自分の心は、あの男の言葉に傷ついてる。
先ほどまでは気づかなかったが、頬には涙が流れてた。
立ち上がり大きな鏡に映る、自分を見る。
そこに居たのは、いつもの自信のある顔ではなく血の気の引いた顔だった。
真っ赤な瞳から、未だに涙が零れ落ちていく。
まるで、自分の存在が否定されてるかのように。
乾いた涙が肌に残り、お気入りのスカートには少し色の濃くなった丸い跡。
そんな自分が嫌で、見ていられなくて鏡から顔を背けシャワールームへ向かった。
ピンクのキャミソールを脱ぎ、黒のエナメル係ったミニスカートもがばっと降ろす。
彼からもらったペンダントがあった。
たしか1年前・・・。
このペンダントを見てると悲しくなる。
そう思い、近くにあったゴミ箱に捨てる。
「さようなら、巴。」
後悔なんてしてないと気持ちに嘘を付く。
現実からシャットアウトするかの様に、カーテンを引いた。
shed tearsweep・・・涙にぬれた顔
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