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棘を抜くまで~寝取られ令息と底辺令嬢が、愛を深めていく~  作者: 高取和生@コミック1巻発売中


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7/7

棘は消えていくから

 結婚式当日の朝、空は高く澄み渡っていた。

 ジュネシスとユリカは、モンドリアン神が座ます教会で式を挙げた。


 ウエディングドレス姿のユリカを見たジュネシスは、耳まで赤く染まり、ジュネシスの上司は、何故か大きく頷いていた。


 豪奢な儀式ではなかったが、必要なものはすべて揃っていた。家と家を繋ぐ誓いとしては、十分すぎるほどだ。ジュネシスの両親とユリカの家族一同、微笑みながら二人を祝福した。


 誓いの言葉を交わすとき、ジュネシスはユリカの手を取った。


 強くもなく、弱くもない。

 逃げようと思えば、ほどけてしまう程度の力。


 それは、支配ではなく選択を示すための、あえての握り方だった。


 ユリカは、その手をほどかない。

 だって、選んだのはユリカ自身だから。

 たとえ貴族同士の政略的な婚姻でも。


 築いた二人の時間は、誰にも奪えない。



 夜、夫婦として迎えた最初の時間。

 同じ部屋で、同じ静けさを分け合う。

 ただそれだけのことが、重みを持っていた。


 ユリカの父から贈られたグラスに、ジュネシスはワインを注ぐ。

 恐る恐るグラスに口をつけるユリカに、ジュネシスは目を細めた。


「怖くは、ないか?」


 ユリカは小さく頷く。


「……少しだけ。でも、でも大丈夫です。わたしはあなたの妻、です。家族ですから」


 ジュネシスは一瞬だけ目を伏せ、やがて静かに額へ口づけた。

 ワイングラスには、月光が映っていた。



 すやすやと眠るユリカの寝顔に、ジュネシスの頬が緩む。

 ずっと眺めていたい。

 憂いなく眠る日々を与えたい。


 これは、家族としての情だろうか。

 眠りに落ちながら、ジュネシスは自問する。


 いや……。

 これは……きっと。


 愛情……。

  


 棘は、すぐには抜けない。

 抜けても微かな痛みが残る。

 過去も、後悔も、簡単に消えるものではない。


 逃げられる状況にあって、なお留まること。

 選ばれることに安堵せず、選び続けること。


 それこそが、ジュネシスが差し出した誠実さであり、ユリカが受け取った彼の決意だ。


 毎夜、ユリカは、彼の手を取り返すように、指を絡める。


 それは鎖ではない。

 互いに差し出し、互いに受け取る意志だった。


 完璧な幸福ではない。

 だが、過去を理由に立ち止まらない未来が、ここにある。

 二人は並んで、一歩を踏み出した。


 棘を抜くまで――選び続けると、そう決めた歩幅で。



 二人が結婚して、一年経った頃。

 ジュネシスは正式に爵位を継いだ。

 さらに翌年、二人は新しい命を授かる。

 

 意外なほど子煩悩なジュネシスと、婚前よりも艶やかになったユリカに、棘の跡は、もうない。

ここまでお付き合い下さいまして、ありがとうございました!!

短編で書き足りなかった部分を加筆して、連載版としました。

感想、大切に読ませていただいてます。返信は必ずいたしますので、気長にお待ちいただければ幸いです。

評価、ブクマ、イイねのマーク、すべてに感謝です!!

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― 新着の感想 ―
 心の移り変わりが丁寧に描かれていて、説得力がありました。  素敵なお作品、有り難うございました。<(_ _*)>  アナベラとライルはその後幸福になったのでしょうかね、ちょっと気になります。
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