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序章〜転移〜

神だけを絶対としない賢者が生まれたとき、

世界は人の手に託される。



そんな物語。

荘厳な教会。ステンドグラス越しの朝日は今日も変わらず世界に祝福を落とすようにかがやいている。

ミサに訪れる人たちは、その祝福に感謝するかのように静かに司教の話に耳を傾けていた。


司教が今日も語る。

"この世界は神が産みたいうし慈愛の世界です。

人は古来は不可思議な力を与えられ、信仰と引き換えに悪魔から身を守るすべを授かりました…"


(またこの話かよ)


世界規模で広がる教義ノアスは、この世の全ては神が作り、俺達人類はその恩恵を受けている、という語りから始められる。

そして、明言されてはないものの魔法が太古にはあり、悪魔なんかもいたそうだ。


週末の説法を聞き流し、友人でもある司教イラフの部屋へと向かう。

樫の木でできた扉は分厚く、歴史を感じさせる。

乾いたノックの音が響き、俺を招き入れる声が聞こえた。


「よぉ、今日もお疲れ様。司教様」


「ルーク、茶化さないでよ」


苦笑しながら大層豪華な椅子から立ち上がると、分厚い経典を手に取る。

この経典は幼い頃からよく見た。

正しく言うなら、孤児院で院長が持っていたのを覚えている。


「でも大変よな。お前自身が疑ってる教義を伝えるってのはよ」


「そんなことないさ。盛ってることはあるだろうけど、全部が嘘。というわけではないよ。きっとね」


まるで確信でもするように話すイラフに違和感を覚えながら、いつもと同じように日々の話をし家に帰る。

そんな毎日が続く…なんて思っていた。



夢を見た――


多くの人が壁に囲まれた夜の街でにぎやかに話している。

そこには、電線もないのに光る街灯。火を操る大道芸人達が祭りのような夜を楽しんでいた。

見回すと、隣に人波を眺めながら、にこやかに微笑む女性がいる。

少し説法に描かれる神に似た穏やかな表情だ。


「ここはどこだ?」


女性に声をかけた途端に視界が暗転し、見慣れた寝室で目が覚め、これは夢だったと分かった。

しかし、夢にしても不思議で既視感を覚えた俺は、いつものようにイラフに相談を持ちかけよう。そう思い教会までミサでもないのに足を運んだのだ。

もう、この習慣は何年も続いていて、クセのようなものかもしれない。

苦笑いをしつつ教会に入れば、司祭達が当たり前のように樫の木の扉の前まで俺を連れて行ってくれる。


「そう、そんな夢を見たんだね」


落ち着いたイラフの声とは裏腹に、表情は険しい。ふと思い立ったように立ち上がると"ついてきて"と、司教室のさらに奥にあった扉に手をかけた。


「ここにはね、僕たち司教以上が見られる書庫があるんだよ」


地下へと続く階段は清掃が行き届いており、独特な香の匂いがする。

いつだったか、洗礼式の時に浴びた香りを思い出す。


「少しだけ話すね、ルーク。君が見た夢はきっと昔の世界さ」


そう言って一冊の古びた本を俺に手渡した。

少し茶色く変色はしているが、しっかりと管理されていたのだろう。掠れてはいるものの、読めない字はない。


そこには神が実際にいること、そして今この世界に神がいないとされる事。

魔王や勇者伝説が事実であったように書かれている。


まるで短編小説を読み終わった気分で目を上げると、寂しそうなイラフの顔が映った。


「おい、どうし…」


言い終える間もなく突如現れた光の群れに襲われ、俺の意識は暗転する。


「君が孤児であった理由が分かったかも知れない。君はこの時代の―」


最後に親友の声が聞こえた気がした。


「そう言えば君の洗礼名は"セト"だったね…長くその名前で呼ばなかったから忘れていたよ」


彼が目を落とす本にはセト。と、走り書きのように書かれていた。


転移編(完)

はじめまして、鉄鼠です。

数年ぶりに筆が乗りましたので、なろうで投稿をいたしました。

よろしくお願いします。

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