表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣の席の甘衣さんは、僕にだけ激甘い  作者: 爆発しちゃいますおじさん
第1章 いつでも甘い、甘衣さん
2/7

机の下で

 甘衣あまいさんは変だ。


 給食の待ち時間というごく短い時間でさえも、僕にいたずらを仕掛けてくる。



「えいっ……えいっ」


 

 給食時間、僕たちのクラスでは机と机をくっつけて、五人ほどのグループを作る。担任の先生が『仲を深めるため』と言って、初月限定で始めたものだったが、いつの間にか習慣化してしまった。


 クラスメイトたちとの仲は、すっかり良好だ。転入してきたばかりの僕にも、みんな優しくしてくれる。なので、すぐに教室へ馴染むことができた。



「うりゃっ」


 

 もちろん、左隣の甘衣あまいさんとの関係も良好……のはずなのだが。


 そんな僕は、今まさに甘衣あまいさんからいたずらを受けている最中だ。


 机どうしを向かい合わせると、僕と隣どうしで座る甘衣あまいさんの座席は必然的に対面になる。そこに彼女は目を付けたらしい。



「楽しみだね〜っ! 今日の給食は、冷凍みかんがあるらしいよっ」


凪乃なの、みかん好きだもんねぇ。さすが目がないなぁ……」


 

 甘衣あまいさんは、彼女から見て左隣……僕からは右斜め前に当たる女子と、楽しそうに話している。

 甘衣あまいさんはみかんハンターなのか。初めて知った。


 しかし、その甘衣あまいさんは楽しそうに話すその裏……机の下で……


 僕の右足をこつんこつんと軽く、その細い足で小突いて来るのだ。どういう意図なのかは分からないが、彼女はクラスメイトにバレないように僕へいたずらを仕掛ける。


 こうしたいたずらは、僕がこの学校へ転入してきて、彼女と知り合って、約二週間が経ってから始まった。


 僕は不思議で、その度に『甘衣あまいさん?』『ど、どうしたの?』と尋ねた。


 しかし、栗色の長い髪の毛をなびかせる彼女は、一向にその理由を説明しようとしないのだ。


 小首をこてんと傾けてから『何でもなーいっ』と、僕を見てくすくすと笑う。どんなときでも桃色に色づいているその頬は、どんな時でもクラス中の視線を集めている。


 そのことに鈍感な僕が気づくまで、あまり時間はかからなかった。


 だからこそ、思うのだ。


 どうして僕にかまってくれるのだろうか、と。


 はじめは、転入したてで友達のいない僕のことを気にかけてくれた結果が、このいたずらなのだと思っていた。しかし、あれから時間は流れて僕にも気の置けない友人ができた。


 仮に、僕の推測が正しいとする。

 甘衣あまいさんの仕掛ける僕へのいたずらが、一人きりで給食を食べる転入生のため、慈悲のもとで為されていたのだと考えてみる。それなら、すっかり友人に恵まれた僕に対する救いの役目は、既に不必要であると言うべきだろう。


 しかし、今日だって相変わらず、彼女は僕の足をこつんと小突くのだ。それが、どういう理由のもと為されているのかは分からない。


 でも……



「ねぇ。成瀬なるせ? わたしと勝負して、もしこっちが勝ったら言うこと聞いてよ」


「え? うん……いいよ」


「ふふっ、やった。じゃあ、わたしが勝ったら、みかん頂戴ね?」


 

 そう言って目尻を細める彼女は、相変わらず僕の膝小僧をこつんこつん蹴りつけてくる。


 でも、そんなふうに微笑む甘衣あまいさんの隣にいれるのは……


 二人だけのちょっと不思議な秘密があるのは、意外と悪くないかもしれないと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ