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蹴球ファンタジア~ボールは、唯一の家族。万年最下位の国だって、僕の必殺シュート「マグネ・ドライブ」が救ってみせる  作者: cross-kei


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第09話:vs 獣王国(前編) ~蘇る悪夢と、砕けない鉄壁~

 決戦の時が迫る控え室。そこには、かつて王国を支えた懐かしい顔ぶれが揃っていた。


「よお、郵便配達屋に火遊び小僧。お前ら、平和ボケしてなまってんじゃないだろうな?」


 フォルズがニヤニヤしながら軽口を叩く。元チームメイト、スプリングとライブが、不敵に笑い返した。


「お前こそ牢屋暮らしで身体が錆びついたんじゃないか?」


「ハッ、面白い。久しぶりに見せてやろうぜ、俺たちの『アイアン・エンド』のトリオ攻撃をなっ!」


 軽口を叩き合う彼らを、アルベルト監督が杖を突いて制した。


「よし、作戦を伝える。……心して聞け。獣王国のフィジカルは脅威じゃ。まともにぶつかれば、骨ごと砕かれるぞ」


 アルベルトはホワイトボードに駒を配置する。その目は鋭く、かつての名将の面影を宿していた。


「前半は、フォルズ、スプリング、ライブの3人で攻めろ。お前たちのスピードと連携で、敵キーパー『獣王ブッチ』の魔力を徹底的に削るのじゃ」


「へいへい、鉄砲玉ってわけだ」


「あいつに息継ぎさせるな。防御スキルを使わせろ。ゴールを割れなくとも、消耗させればこちらの勝ちじゃ」


「そして守備じゃが……GKはガッド、DFにストーン。そしてシエル」


「はいっ!」


 シエルが元気よく返事をする。


「シエル、お前は敵エース、リオン王子とマンツーマンだ。あやつの自由を奪え。敵のシュートを止めるのが最優先じゃ」


「分かったよ、師匠! ……あ、監督!」


「ケープは、後半の切り札としてベンチスタートじゃ。よいな?」


 円陣が組まれ、雄叫びと共に選手たちがピッチへ飛び出した。スタジアムを揺らす大歓声。ついに、決勝への切符をかけた戦いが始まる。


***


 ピーッ! 試合開始の笛が高らかに鳴り響く。


 序盤から、復活したフェイルロードの「アイアン・エンド・トリオ」が猛威を振るった。


「オラオラ~! 水魔法の使い方は霧の幻惑だけじゃないんだぜ!」


 フォルズが足元に水流を発生させ、滑るようなドリブルで敵陣を切り裂く。ボールは水膜を纏い、見た目以上の重質量となっていた。


「水魔法を込めたぞっ! パスだ、スプリング! 合わせてくれよ!」


 スプリングが竜巻のような回転を加え、ボールを空へ打ち上げる。風の魔力が酸素を巻き込み、ボールは爆発の火種となった。


「追いテイル・ウィンド、全開ッ! ライブッ! 衰えてないよなっ!」


 ライブが右足に紅蓮の炎を宿し、空中のボールを捉える。水と風、そして火。三つの魔力が一点に収束する。


「舐めるなっ! いけぇぇ! 3属性『アイアン・トライ・ボレー』!!!」


 ドォォォォォンッ!!


 放たれたシュートは、赤・青・緑の光が混ざり合う極太のレーザーとなり、唸りを上げてゴールへ突き進む。着弾すれば水蒸気爆発を引き起こす、対要塞級の威力。


 ……だが。


「ぬるいわぁッ!!『ベア・クロー』ッ!!」


 バチィィィンッ!!


(……チッ。2年前と変わらぬ威力よ。初手から『爪』を使わされるとはな……厄介な連中を揃えおって、こいつらが切り札なのか?)


 獣王ブッチが、素手でボールを叩き落とした。必殺技『ベア・クロー』。熊のような剛腕が魔力の奔流を引き裂き、爆発をハエのように払い落とす。


「くそっ、獣王め。なんて腕力だ!」


「だが、スキルを使わせたぜっ!」


「カウンターが来るぞ!」


 ブッチが間髪入れず、前線へボールを放り投げる。狙うはエース、リオン王子。


「行けいリオン! 雑魚どもを置き去りにせよ!」


「もらったァ! ……って、チッ! ひっつき虫が!」


 リオンが走り出そうとするが、そこにはシエルが影のように張り付いていた。

 マンツーマン・ディフェンス。


(くそっ、この磁石野郎……! だが、ボールさえ受ければ引き剥がせる!)


 リオンが強引に位置を取り、ブッチからの剛速球を受けようと手を伸ばす。だが、そのパスコース上――センターサークル付近に、別の影が躍り出た。


「へっ、うちのエース(シエル)に余計な仕事させんじゃねえよ!」


 バシィッ!!


 フォルズだ。攻撃参加していたはずの彼が、ブッチの投擲コースを完全に読み切り、空中でパスカットしたのだ。


(なっ、読まれていた……だと!?)


 ブッチの眉がピクリと動く。シエルとリオンの勝負になる前に、供給源を断たれた形だ。


「ナイスです、フォルズさん!」


 シエルがリオンを抑えながら声を上げる。


「休んでる暇なんてねえぞ! 次だ次ィ!!」


「おうよ!!」


 フォルズが着地と同時にボールを蹴り出す。そこに走り込んでいたのは、スプリングとライブ。


「風よ、火に油を注げ!」


「燃え上がれッ! 第2セカンド・ウェーブだ!」


 スプリングの風魔法がボールを包み込み、ライブがそこへ爆炎を叩き込む。先ほどの3属性連携ほどの重さはないが、その分、速度に特化した鋭い一撃。


「穿てッ! 『紅蓮グレンボレー』ッ!!」


 ドォンッ!!


 炎の弾丸が、再び獣王の顔面へと迫る。さっきの攻撃を防いだ直後。体勢を戻すコンマ数秒の隙を突いた強襲。


「ええい、鬱陶しいわぁッ!!『ライオ・クロー』ッ!!」


 ブッチは舌打ちしながら、再び両腕をクロスさせて防御体勢をとる。


 ズガァァァンッ!!


 赤熱したボールがブッチの腕で弾ける。ゴールこそ割れないが、その体は確かに一歩、後ろへ押し込まれた。


(……こやつら、ワシに息継ぎすらさせん気か……ッ!)


 その後もアイアン・エンドによる波状攻撃が続く。だが、獣王ブッチの守りは鉄壁だった。どれほど削っても、最後の一線を割らせない。そして一瞬の隙――フォルズのパスがわずかに逸れた瞬間、ブッチが咆哮と共にロングフィードを放った。


「今度こそ行けぇリオンッ!!」


 ボールはシエルの頭上を越え、リオン王子の足元へ。


「遅い遅い! 俺のスピードについてこれるか!」


「くっ! 速いっ!」


 リオンの足が異形へと変貌する。獣化魔法によって筋肉が膨張し、チーターの如きしなやかさと爆発力を得たその脚が、地面を抉りながら加速した。一歩踏み出すたびに衝撃波が走り、常人ならば目で追うことすら叶わない速度。


「そのままやらせるか!」


 シエルは両手を突き出し、魔力を解放する。


「『マグネ・フィールド』!」


 目に見えない磁力の檻がリオンを包み込もうとする。強烈な引力がリオンの四肢に絡みつき、その超加速を強引に引き留めようとした。まるで重力が増したかのような負荷。


 だが、リオンは鼻で笑う。


「ふん、こんな磁石遊びで獣王国の突進が止まるかぁッ!」


 バヂヂヂッ!


 リオンは強引に磁場の檻を引きちぎり、さらに加速する。魔法による拘束すらねじ伏せる圧倒的なフィジカル。


「喰らえッ! 『ライガーショット』ッ!!」


 リオンが右足を振り抜こうとする。シエルは歯噛みした。止められない。なら、どうする――?


(引っ張る力が通じないなら……重くしてやるッ!)


 シエルが叫んだ。


「逃がさないよッ! 磁力重力マグネ・グラビティ!」


 引きちぎられたはずの磁力が、砂鉄のようにリオンの軸足へまとわりつく。地面への磁力が想定外の重力を発生させた。わずかな、だが決定的なズレ。


「チッ、足が重てぇ……ッ!」


 ドォンッ!!


 放たれたボールは、魔法エネルギーで形成された巨大な獣のあぎととなりゴールへ襲いかかるが、その牙は鋭さを欠いていた。


「威力が死んでるぜッ! 『鉄腕』ッ!!」


 ガッドが不敵に笑い、鋼鉄の腕を交差させる。


 ズシィィン!


 重い衝撃音が響くが、ガッドの足は一歩も下がらない。


「ふんッ!」


 ガッドが気合と共に腕を振り払うと、ボールはあっさりと弾き飛ばされた。


「ナイスだシエル! お前の『足枷』のおかげで、ただの強いシュートに成り下がってたぜ! 2年前は、この1発で魔力が切れちまったからな」


「よかったぁ……!」


 ピーッ! 前半終了。


 0-0。


 スコアは動かないが、フェイルロードの消耗は激しかった。フォルズたちは肩で息をし、ガッドの腕も微かに震えている。


 一方、獣王国のベンチ。リオン王子は汗一つかいていなかった。


「チッ。ちょこまかと鬱陶しい連中だ。……後半、あの技を使うぞ」


「ほう、やるのかリオン」


「ああ。『勇者』に見せるはずだったが……ここで確実に息の根を止めてやる」

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