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【原稿の星】ぼくの友人のこと#1
ユージーンはぼくよりも小指を下に掌を一つ分目線が高い。そこから見える景色は小指を下に掌を一つ分低い位置から見るぼくのそれとは随分と違うものらしい。
寝起きに水で濡らした手で梳いただけのわりには真っ直ぐな髪と、すべてを識っているような、まだ何も映したことの無いような、混ざり過ぎた感情が相殺されて無になったような瞳が美しくて苦手でどうしようもない。そういえば、自分が左右で違う靴下を履いてしまった時は笑い話にしたのに、ぼくがトーストを焦がしてしまった時は特別なことは何も言わずに目玉焼きで隠して食べていた。その時はてっきり怒っているのだと思ったけど、きっとぼくが冗談でも些細なミスで笑われることを嫌がるのを知っていたんだと思う。
そんな気遣いまでできるくせに、天然ぶってデリカシーの欠片もない質問を投げかけてくるところが最高にうざくて、つまるところは、ぼくはあいつが大嫌いなんだ。