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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
迫る闇な季節☆
93/210

超兵器を超えた兵器

部屋の床が揺れた。

モーター音が高まると一気にスピードが出て

部屋の床がずるっと激動した。


「おっとっ……」


「っ――!」


シエラが躓いて床にぺたんと座りんだ。

俺は倒れないように近くの机に手をついて体を支える。

部屋の床ごと回ったようで今まで本棚があったところに

ぽっかりと人が通れるぐらいの穴が開いていた。

こんな大掛かりな仕組みだったとは。


「……行くの?」


シエラが不安そうに床を足で叩く。

さっきこけかけたからなぁ。

よろけた姿を思い出して少し口が緩む。


「何笑ってるの。

 まさか……見た?」


無言で口の端を吊り上げた。


「――っ。

 殺す」


シエラの両腕が瞬間的なレーザー砲に変わる。

中の小さな歯車が軋み火花が散っている。

落ち着け、落ち着け。

両腕を上げて静止した。


「なーんてね」


冗談には思えないんだよ、だから。

シエラの元に戻った白い手を眺めて前もそんなこと

されたなぁと思いはせた。


「で、行くの?」


額にかかった髪をあげて、シエラは嫌そうに俺を見た。


「行かざるをえねーだろ。

 行こう、行くぞ」


そんな嫌そうな顔知らん。


「えー……。

 早く帰りたい……」


なんで付いてきたんだよ。

ぐちるシエラの背中を押して穴の中に入った。

念のためパンソロジーレーダーは起動しておいてもらう。

危なかったらすぐに教えてもらいたいし。

すぐに穴は終わりめちゃくちゃ広い場所に出た。

暗くて分からなかったがその気配を感じた俺は

意識せずに口が動いていた。


「広いところに出たなぁ」


「暗いのに分かるの?」


「いや、なんとなくだけどよ。

 周りを遮るものがなくなった気がする」


「懐中電灯は?」


「いまつける」


穴に入る前に消していたんだよ。

スイッチをぐいっと押した。


「柵……?」


ぼそっとシエラがつぶやく。


「その奥にあるだろ。

 よーわからんものが」


懐中電灯をふよふよ左右に作動させた。

柵の奥に一本の太い何かが存在していた。

銀色の金属に所々赤や青の線が走っている。


「これって……」


シエラが額に手を当てた。


「何だよこれ?」


俺は懐中電灯の光をずっと上から当ててみた。

柵から身を乗り出して下にも光を向ける。


「うわっ、高っ!」


本当に高かった。

地下まで届きそうな吹き抜けだ。

このビルにこんなもんが……?


「シエラ、これって……」


振り返った丁度のタイミングにシエラは答えてくれた。


「弾道レーザー」


「弾道レーザーってあの?」


脳に焼き付いていたのはあの光。

空が光って降ってくる死の光。

メガデデス級のしか見たことはないがあの――。


「そう。

 超光を凝縮してそれを一気に空へと射出する兵器。

 レーザーは空中で曲がり目標へと降り注ぐ。

 海をも越える射程を持ってる」


だろうな。

俺はこいつに嫌ってほど辛酸を舐めさせられたからな。

よーく覚えてるわ。


「この弾道レーザーはもう完成して……」


シエラは柵を飛び越え吹き抜けの中に落ちていった。

死ぬことはないと思うけどドキッとするよさすがに。


「あっ!

 お、おいっ!」


それに一人ってのもまた恐ろしい。

ニセみたいな奴がまた現れたらどうするんだよ。

あっという間に闇に飲み込まれたシエラを追って

探し出した螺旋階段をダッシュで降りる。

たっぷり十分はそれでもかかった。

降りきった頃には息は上がってるし体力の消費もすごい。

でかい装置の前で腕を込んでいるシエラの肩を掴んだ。


「はぁはぁ……。

 お、おまえなぁ……」


「…………」


息を整えるまではぁはぁやってから

落ち着いたところでまたシエラの肩を叩いて言った。


「…………」


「なぁ、いったいさ――」


「――てる」


小さな声で流れたせいで聞えなかった。


「え?

 すまん、何て言った?」


俺もしかして耳遠いのかな。

結構な頻度で聞き返してるよな?


「もうこれ完成してる」


シエラは眉をひそめつつ目をつぶった。

パンソロジーの手で装置を上から下まで撫でているのだろう。


「下手すればルフトハナムリエル級にまで及びそうな威力……。

 どうしてこんなもの?

 掘り出してきたとは考えづらいし……」


「なぁ」


頭にはじけたことがあった。

不確かかもしれないが言っておきたい。

知って欲しい。

あくまでも推測でしかないのだが……。


「ん?」


「俺はさ。

 昔からおっさんに頼まれて宝石とかを盗みつつ

 メモリーチップ、超光化学記憶媒体を盗んできたじゃん?」


「聞いたことはあるから知ってる」


「それじゃないか?」


「メモリーチップ?」


「うん」


「解読できたっていうわけ?

 ベルカ独自の技術だよ……?

 お金だってかかるだろうし……」


「だから俺は宝石を盗まされてたんじゃないか?

 これをおっさんが作るために」


「でも――」


口を開きかけたシエラはまた口を閉じた。


「それにさ……」


俺は少し前から疑問に思っていたことがある。

メガデデス戦の最後を覚えている方はいるだろうか。

それにまだ記憶に新しいラシアデスやネメラデスとの戦いも。

あのとき、どこからともなく弾道レーザーが飛んできた。

シンファクシは帝国郡には超兵器が一隻しかなく

しかもあれは俺が盗んできた装置を持って帰らなければ

兵装の一つすら動かせなかったはずだ。

なら誰があのレーザーを撃ってくれたのか。

今答えが分かった。

鬼灯のおっさんだ。

連合郡がどこからレーザーが放たれたのか測定できなかったのには

まさかビルの中に巨大な砲身が潜んでいるとは予想もしなかったため。

なんだ、結構簡単に謎が解けちまった。


「……というわけ」


俺はちょっと得意げにそう締めくくった。

懐中電灯の光を回りにあててみた。

変な形の機械や変な形のガラス瓶。

変な形の机の上にまともな形のPCが置いてあった。


「ちょっと、そこのPCつけてみてくれ」


上にあったおっさんのと同型PCだ。


「電気ないよ?」


あ。

うっかりしてた。

シエラが歩き回る靴の音が反響しはじめた。

何を考えているのやら。


「これかな?」


暗闇からシエラの声が聞えたかと思うと

明かりがバッとつき、網膜を突き上げた。


「お前、何したんだよ」


まぶしさに目をほそめながらシエラを探した。

壁際に立っていてシエラはブレーカーらしきものに手をかけていた。

PCが小さくピッと音をたてて起動をはじめた。

あちこちのでかい機械も唸りをあげる。

天井まで電灯が順番に点灯してゆき天井が見えた。

その天井の蓋のようなものがゆっくり開いていき月が見える。

簡単に上二行を説明すると

天井がゆっくりと開いて中の砲身が露出したわけ。

分かった?

それよりも心配なのは外に光が漏れたらまた面倒なことになるな。

連合郡にも当然、おっさんにもばれるわけだ。

そうなると本当に面倒なことになるんだ。

とにかくはやいことPCを……。

エンターキーを連打しながら起動を待つ。

おそいおそいおそい。


『あなたにアクセスする権利がありません』


やっと起動したと思ったらこれだ。


『パスワードを入力してください』


えーと、帝国郡じゃぁないわな。

詩乃?

違う。

ナリサ?

違う。

えぇー。

駄目だな、これは。






               This story continues.

ありがとうございました。

ルフトハナムリエル級というのは何度が出したと思うのですが

ヴォルニーエル級を超える超兵器です。

メガデデス級はいわなくても分かるかと思われますが……。


では本当にありがとうございました。

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