表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
迫る闇な季節☆
91/210

あ ろっと おぶ すたーず。

その夜は倉庫の中で寝ることにした。

理由は色々あって、まず家の中だとたくさんのヤバイ要素が……。

それにエアコンが付かない家はただのサウナだ。

ならば外で寝た方が良いに決まってる。

窓ガラスも割れてないんだぜ?

床に散らばってるのを掃いてどっかやってもまだ不安だろ。

寝返りをうったしゅんかんぶすりっ!

ギャーにはなりたくないわけだ。

そんなわけで外で寝ることにした。


「最終兵器……か」


コンクリート片によって所々に穴が開いた屋根の倉庫で仰向けになった。

電気のない街はこんなに夜空が綺麗に見えるんだな。

いままで電気がばしばし付いてたからなぁ。

街灯だけだけど。

そういえばシエラと出会ってもう結構たつ。

はじめて出会ったときはボコボコにやられたものだ。

とにかくボコボコに。

そして気を失ったよな。

あれからまたずいぶんたってメイナさんとも出会った。

最初は「シエラが二人いる、意味不明」

と思ったものだ。

その時と比べて二人とも人間らしくなってきた。

初めのときこそ冷たい機械だったってのに。

まぁあのひどい臭いを気にせずに

家の中で眠れるところとかは便利だと思うけどな。

肌寒くなってきて薄い毛布を胸までひっぱりあげた。

それにしてもまぁ俺もよくここまで耐え切れたもんだ。

なんだ、また回想か?

そう思うだろう。

残念ながらそうなんだ。

何か寝る前になるとこうやって昔のことを思い出す。

癖なんだろうな、これはもう。

死なずにここまで来たのも

人を殺さないという方針を一貫していたおかげかもしれない。

赤い色に光る星を右の人差し指で覆った。

でも――俺はこの方針をゆがめることになるだろう。

俺の両親を殺し、おっさんの妻。

シンファクシの両親などがこの世から消えた元凶。

アリルの父を……。

アリルの父を帝国郡に引き入れるために。

俺は……アリルを。

恋人を殺さなければならないのだ。

なんで?

なんで俺はアリル父じゃなくてアリルを殺さなきゃならない?

シンファクシは言った。


「アイツに同じ苦しみを味わさせ

 その心の隙を付いてこっちに引き入れる」


と。

うろ覚えでごめん。

言ってなかったかもしれないけどまぁ言ってただろ。

これが俺がアリルを殺す理由。

人差し指を下ろした。

むくりと起き上がって倉庫の壁に並んだ一つの拳銃を手に取った。

親父は相当警戒心が強かったのか、拳銃が五個ぐらい常に

ここにはストックされている。

もちろん、違法ではあるけど。

仕事柄、案外許されていたようだ。

黒の金属はいつまでも冷たく、シエラ達とは違う。

人と触れることでぬくもりを持つことはあるがそれも短い間。

あとは虚しい冷たさが残るだけ。

そういえば俺は昔おっさんに頼まれて記憶媒体を集めていたよな。

そもそもおっさんに頼まれて集め回った記憶媒体や宝石は

一体どこに消えたんだろうか。

何に使うつもりだったのだろう。

中には何が記録されていた?

ふとおっさんの日記を思い出した。

あの中にヒントがあるのかもしれない。

それと同時にもう一つ思い出した。

おっさんは確かにT・Dを見つけたと書いていた。

ならシエラの一人称を変えさせるほどの影響力をもったT・Dはどこへ?

あまりにも謎である。

というか俺が『怪盗レルバル』とかバカみたいに呼ばれてた時期がなつかしい。

全然そんな仕事をしていたようには思えない。

まぁ一種の黒歴史みたいなもんだから思い出したくもない。


「……星、綺麗だな」


ふわっと夜風が髪を揺らした。

溢れんばかりの星が空にちりばめられている。

自然ってすげぇなぁ。

己の小ささを嫌でもひしひしと感じる。

先ほど考えていた謎。

T・Dはバーフォードに送られたと書いてあった。

バーフォードってのはおそらくシンファクシの親父だろう。

でも起動しなかった。

あと少しおっさんの日記読めたらなぁ……。


「ん……?

 待てよ………?」


鬼灯のおっさんのビルは今、空? → Yes.

人はいる? → No.

なら行けば? → Of course.


俺は布団から出た。

何気ない感じで壊れかけの一台の車に乗り込み

ちょっと配線をいじり倒してエンジンをかける。

おっさんのビルまでそう遠くない。

片側のランプが壊れた車のアクセルを踏んで走らせた。

道は思った以上に被害を受けてなくてすいすい走れた。

んで、すぐについた。

下から五二階建て、ヘリポートも入れると五三階建てのビルを見上げる。

電気がついている階は一箇所もなく

ガラス張りの壁は黒一色に塗られていた。


「何で来た?」


後ろから急に声をかけられ振り返る。

なんだシエラか。


「ん、少し確かめたいことがあってな……。

 いや違う、違う。

 何でお前ここにいるんだよ」


「目が覚めたから。

 暇だったしちょうどいいかなって」


つけている黒の眼帯を外してシエラが言った。

家に帰れというべきか。

でもいて損はしないだろ。


「そうか」


まぁ念には念を入れておくべきだな。

 

「丁度良い一緒に来てくれ」


「りょーかい」


シエラは少し嬉しそうに笑った。

手の中にある拳銃にはない暖かさ。

コンクリートの階段へ一歩を踏み出して登る。

ガラス扉の割れた正面ロビーに入ると頭の中にある地図を呼び起こした。

えーと、非常階段は……こっちだな。

この部屋の右端にある。

非常灯は十階ぐらいまでならついてるから

躓くことなくすいすいいけるだろ。


「行くぞ」


こくんと承諾の意を示したシエラをつれて階段を登る。

おっさんの部屋は確か四七階だったよな。

こつこつと自分の足音だけが大きく聞えた。

さて、俺はここで一つ心配していることがある。

またあの生物いるんじゃないだろうな。

ニセの野朗。

あれは……怖い。

あれは怖い。

もうあんな目にはあいたくない。

死にかけたんだぞ。

そうお困りの俺へ。

大丈夫。

今の俺にはシエラがいる。


「?」


振り向いた俺に不思議そうな目で見返してきたシエラに

とりあえずのガッツポーズをする。


「……どしたの?」


最強、いや最怖のガードウーマンがいるし。

恐怖神なんだからな、何といっても。

すいすい進んで十階の踊り場に到達した。

ここからは非常灯すら消えており

この暗闇の中を歩くのは至難の業だ。

ココまでは記憶&非常灯が

しっかりしていたから来れたもののここからは無理。

懐中電灯がたしか……。

もう一度頭の中の地図を呼び出した。

踊り場の左右に最低でも二つの懐中電灯が

壁にくっついているはずだ。

どこら辺だっけな。

手を伸ばして壁をまさぐった。

こつんと固い出っ張ったものに手が当たる。

これか。

円柱になっているところをぐいっとひっぱった。

よし、視界はこれでクリアーに。


「あれ?」


電気がつかないな。

シャカシャカと振る。

おそらく接触が悪いだけなんだろう。

懐中電灯はちかちかと弱々しい光を出した後

本気で光りだした。


「ついたついた、行こう」


「ん」


シエラをつれて

二十階、三十階、四十階と昇っていく。

ここで俺は気がついた。

あれ、なんか臭くね?

あまり気にはしたくないが……。

四一、四二……四六、四七……。


「ここだ」


「ん」


鼻にまとわりつく臭いがさらに強くなった。

何かが腐ったような……。

―――ああ。

死体だろうな。

あの頭の割れた研究員が

フラッシュバックしてきて吐きそうになった。

シエラは鼻をつまんで


「くさい」


ね。

俺もそう思うわ。

でもお前家の中で寝てたんだから別に大丈夫だろう。

あの冷蔵庫の臭いにも耐え切ったんだろ?

懐中電灯の光の輪に穴が写った。

銃弾が粉砕した壁だ。

あちこちに残っている銃痕。

ぽっきりと折れたモップが床に転がっていた。

これでニセを殴ろうとしたんだっけな。

あの夜の爆撃から誰も入っていないんだな。

苦い記憶が遠慮なく戻ってきた。

大きくえぐられた壁。

ニセがロケット弾でえぐった跡だ。

たしかこのまま……。

ドアのぶっ飛んだ『第九一研究室』。

ここに俺の蹴りをくらったニセが入り込んで

ロケットポッドをコピーしたんだ。

このまま行くと……。

高価な木で出来たドアに金のプレートがかかっていた。


『鬼灯の部屋』


来たときにはこんな風になってるなんて気がつかなかった。

小さい穴が開いた壁を通り抜け、扉を蹴破った。

ばらばらにちらかった椅子。

机の上には血がついたあのPCが置きっぱなしになっていた。


「よし、あれ持って変えるぞ」


「どれ?」


「あのPCだよ」


PCを絞り込んだ懐中電灯の光に浮かび上がらせた。





               This story continues.

遅れてしまってごめんなさい。

親と話し合いをしてました。

大学受験のお話です。


さって勉強と同時並行でがんばろう、小説。

では読んでくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ