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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
帝国群な季節☆
83/210

『超空突撃戦艦ヴォルニーエル』――『星夜楼』

「ん……、高速で接近する物質を感知。

 形状からおそらくメガデデス級……」


ネメラデスとの戦いでボロボロになった服を脱ぎ去り

変わりの服を探しながらうろちょろしていたメイナが

急に俺達の間に割り込みそう言って来た。


「とりあえず服を着ような、メイナさん」


俺は鼻を押さえながらメイナに言う。

落ち着け、落ち着くんだ。

マックスは俺と話していた為、その会話を必然的に拾ってしまったようだ。

まぁ男の本能だ、仕方ない。


「ぶっ、お前服着てないのか!?」


誘惑には勝てないのもまた男の本能で

マックスは勢いよく丁度後ろに位置していたメイナを振り返った。

モロに正面から正視してしまったわけだ。



「うわ、本当だぐっはぁ!」


マックスは目をひん剥いてゆっくりと倒れていく。

その顔はぐちゃぐちゃに歪み本当に幸せそうだ。


「マ、マックスー!!」


地面に倒れたマックスの頭を抱き上げ

更なる出血を許してはならないと俺はマックスの視界を

持っていたハンカチで覆う。

だがそのハンカチをすぐに取り去りマックスは


「男の浪漫を邪魔するんじゃない」


キリッと決めて見せた。

いや、あんた死にかけてたがな。


「ま、マックス大丈夫かねぇ?

 私何か悪いこと――」


「だーっ、お前はこっちに来るんじゃないっ!」


心配そうに覗き込んできたメイナをまた正面からマックスは食らった。

ごぷっと鼻血がハンカチからあふれ出す。

なんて量だ。

それに顔が尋常ではない。

例えるなら戦艦の艦砲を一身に受けたような。

そんな衝撃を食らった顔をしていた。


「ごっはぁ!」


「マ、マックスー!!」






「で、あと何分ほどでこちらにつくんだ?」


鼻の穴にティッシュを詰めながらマックスはサングラスをかけなおし

メイナの顔を見ないようにして聞いた。


「……約二十分足らずかねぇ。

 あくまでも予想だけどさ」


メイナは新品の軍服をようやくひっぱりだしてきて

前のボタンを閉めていた。


「なら十分だ。

 よし、てめぇら乗れ!

 さっさとこの場から離れるぞ!」


マックスはそういうと右手にもったリモコンのスイッチを押した。

格納庫の扉が遠距離操作で閉まり、マックスと俺とメイナは

主翼のすぐ下についている扉から中に乗り込んだ。

まだ新しい煙草をドアに入る前にもみ消し、マックスは

駆け足でコックピットへの階段を駆け上がる。

その後ろをのんびりとメイナが付いていった。

止まらない赤い滝がマックスの歩いた後の床に刻印されている。

ティッシュ詰めていたのにまだ出るか。

まぁあれで死ねるなら男の本望だろう。

よって放置決定、もう知らん。

すぐにエンジンが唸りをあげて空気を吸い込み始める鈍い微動が床を伝ってきた。

俺はもう一つ扉を開け、仁達がいる部屋に入り開いている椅子を見つけ座った。


『全員、シートベルトは締めたか?

 ケツの穴閉めとけよ、漏らしても知らんぞ。

 行きよりも帰りの方がハードだぜ!!!』


その声には行きに聞いた艶がない。

相当消費しているということか。

おいおい本当に大丈夫なんだろうな。

ふと仁を見るともう青い顔をしていた。

前の座席のバスケットに入っていたエチケット袋渡してやろうか迷う。

考えた挙句面倒なので渡さないことで決定した。

おそらく仁の前の座席にもあるだろ、袋ぐらい。

シエラはシートベルトをしっかり締め窓から外をぽやんと眺めていた。

メイナはさっきコックピットに行ってこの輸送機のPCとつながっていると思う。

レーダー担当なんだとよ。

こんな奥地で、敵地なんだから当然味方のレーダー援助なんてものはない。

帝国郡人工衛星もすべて叩き落されてしまっている今、メイナさんががんばるしかないらしい。

セズク?

知らん、見たくもない。

ルファー?

あぁ、肩で「にーにー」鳴いてる。

とりあえずジュースを入れるあの穴にはさんでおいた。

シートベルトだ。


「にーっ!」


おいこら暴れるんじゃない。

そんないい首の運動の後、顔を正面で固定した。

Gが横にかかったら腱を傷めることになるし肩もこる。

ただでさえ老体だというのにこれ以上の負担はかけられない。

骨が折れちゃう。


『行くぞっ!』


エンジンが熱い空気を吐き出す量が急速に増加してゆっくりとだが

輸送機は動き始めた。

木々が倒れ、四百メートルほどの雑な滑走路の上を

すべるように動く輸送機はスピードをぐんとあげ

ふわりとした感じで……。

もう何回飛行機乗ったんだろう。

いちいちこの浮遊感を言葉にするの疲れた。

どうやら感覚だけは慣れというものが来ないようだ。

頼ることの出来るものがない感じの不安感がある。

空中というなんとも曖昧な場所にいるというのは

どっしりとした大地から離れた寂しさもあいまって

余計に不安に感じるのだ。

どんどん大地が下に落ちてゆき

仁とまた来たいなと語った小さな村の明かりが離れてゆく。

もはや深夜と言ってもよい時間になっている携帯の時計を見て

小さくため息をついた。

のんびりと窓から外を眺める。

ざっとした殺気を覗いた瞬間感じ、思わずカーテンを閉めた。

頭に血が上ってぼんやりしはじめる。

まさか……。


『マックス。

 シグドデスとネメラデスが来てるよ。

 ラシアデスもおまけでねぇ』


俺の嫌な予感って本当に当たるんだな。

メイナの場に合わないのんびりとした報告が

スピーカーから流れた瞬間そう自覚せずにはいられなかった。


『距離は?』


メイナとは正反対に少しの焦りを含ませた

マックスが状況を掴むためにやりとりをはじめた。


『約一万』


『高度は?』


『五千ちょい』


五キロ程度ならあっという間に見つかっちまう。


「しつこいやつら」


シエラがぼそっと呟きシートベルトを外し立ち上がった。

そのまま格納扉の開閉レバーに手をかける。


「ちょ、なにやってんだよ!?」


仁がその様子を見て止めようと手を伸ばした。


「今から三機とも叩き落とす」


その手を叩いてしれっとシエラは答える。


『待て、シエラ!

 この機体はステルスだ。

 あいつらには見つからないかもしれ……な……い』


マックスの最後の方の声は凍りついた。

ロックオンされたことを教えてくれる赤のライトが回り

短い間隔で警報が鳴ったからだ。


『くそっ、何でだ!

 Holy shit!』


「ほ、ほーりー?」


聞きなれない言葉を聴こうと仁が聞き返したが答えが返ってくる前に

床が斜めになり、機体が大きく左に旋回した。

連合郡のレーダー網を掻い潜ると同時に三機からやってくる

攻撃を避けなければならないためだ。

もし連合郡のレーダー網に触れてしまうと

その瞬間に無条件で約百発もの対空ミサイルが飛んでくることとなる。

泣きっ面に蜂の状態に陥るわけにはいかないから

面倒でも連合郡のレーダー網を避けつつ逃げるしかないのだ。


『Shit!

 Holy shit!』


赤く槍のようなミサイルがきらと月光を浴びて突っ込んできた。

マックスは機体を大きく右に旋回させ、その追尾を簡単にかわした。

だがその後ろにいた二本目、三本目がすかさずやってくる。

尾翼に付いた二十ミリ機銃がメイナとリンクされそれをぴったりと見据えた。

距離が約百メートルになったときそれは火を吹いた。

ミサイルの動きにしっかりと食いつき、機銃がその銃身をめぐらせる。

一発外したが二発目がミサイルの弾頭を見事打ち抜き、ふくれあがった爆炎の中を

突き抜けて三発目が襲来した。

三発目は一度尾翼ごと撃ちぬかれたにもかかわらずまだあきらめてはいなかった。

上下を司る装置が壊れているのを知らずに

上昇に転じた機体を追おうとしたが尾翼が動かない。

輸送機をすれすれを通ったミサイルは静かに海上を漂うと

燃料が切れ、やがて海へ落ちる道しか残ってはいなかった。


『くそ、まだきやがる!』


マックスの声が今までよりも抑えられたような低い声になっていて

それが余計に不安をあおる。


「ステルスじゃなかったのかよ……」


仁の呟きをかき消し出し抜けに

今までとは違う大きさの警報音が機内を埋めた。

な、なんだよ。

思わずびくっとなった体とばくばく鳴り始めた心臓は

これも嫌な予感だとはっきり俺に語りかけていた。


『……入っちまった』


………。

連合郡のレーダー網にか?

窓からかなり遠くにうっすらとだけ見える岸が光りだした。

点と点が結びつき一筋の美しい光の道が出現する。

美しい、とか綺麗だとか思っている場合じゃない。

あれは全部連合郡のミサイルポッドから対空ミサイルが発射された光なのだ。


『まずい!

 約百二十ほどの高出力エネルギーた……い……』


メイナの声が途中で止まった。

その後メイナは


『信じられない』


と小さく息を呑んだ。


『どうした?

 早く報告してくれ!』


マックスの歯軋りと同時に

搾り出すかのような声が鼓膜を撫でる。


『み……』


み……?

みかん?


『右後方から超巨大飛行物体を感知。

 連合郡の百二十のミサイルは全部そっちへ……』


シートベルトごと体を反転させ窓から右後方を確認した。

窓から覗いた俺も言葉を失う。

な、なんだよ……あれ。

千四百メートルほどの巨大な物体が

全体から赤や青の光を出しながらそこに存在していた。

ぱっと見て戦艦がそのまま浮かんだように見えなくもない。

赤や青の光が波打ち、照らされた数え切れない砲台や

やたらとがった艦首、そしてそれだけでこの輸送機の五倍はあると思えるほどの

大きさを持った固定式の砲台が上甲板に三基。

艦底に二基くっついている。

大きな主翼は四枚、艦首には小さな補助翼が二枚ついていた。

図体のでかさに相応の艦橋が鎮座し、窓からうっすらした光が漏れているのは

本当に不気味ささえ感じさせた。

にじみ出る殺気がその艦全体を覆っている。


「……『ヴォルニーエル』……!!」


シエラも「どうして……」と疑問を持たざるをえなかったに違いない。

あれがヴォルニーエルか。

第三艦隊の旗艦の超兵器……。

ヴォルニーエル――『星夜楼』の名になかなかふさわしい。


《大丈夫だったか?》


女の声がヴォルニーエルから俺達の輸送機宛に通信が来たらしい。

この声には聞き覚えがある。


『シンファクシ!

 来てくれたのか!』


《まったく。

 私がいないとお前はいつも窮地に立たされているのだな?》


ああ分かった。

出撃の時にシンファクシが心配そうにしていたのは

俺達に向けてじゃなくてマックスに向けてなんだ。

なんだよ、ははは……。


《イージス、出力全開。

 ミサイルをすべてここで食い止めろ》


ヴォルニーエルの光が強くなり、空気が張り詰める。

そこに殺到したミサイルは全て見えない壁に阻まれ

ヴォルニーエルを覆うかのように爆発した。

爆炎がヴォルニーエルをくっきりと浮かび上がらせる。

まさにそれは『超兵器』の名にふさわしい圧倒感。

そして威圧感。

味方だというのにいつ殺されるのかびくびくしてしまう。


《ここは私が食い止めよう!

 貴官らは先に帰っていてくれ!》






              This story continues.

超兵器、とうとうヴォルさんがでてきました。

星夜楼、せいやろう とよみます。


この野朗みたいに見えますがもう気にしないでください。

僕も書きながらそれ思ったのです。

でもなんか漢字が好きなのでもういいやと妥協した次第。

のであまり名前には突っ込まないでください。

ちうに病じゃないです。


本当に。

ではここまで読んでいただきありがとうございました。

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