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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
帝国群な季節☆
82/210

お姫様

熱波が空気を揺らし、二本のレーザーがぶつかりあう。

助けてくれているってことは味方と考えてもいいのだろうか?


《な、何だ!?

 どこから降ってきた!?》


案の定シグドデスの艦長は取り乱したようだ。


《エネルギー減退反応と降下角から場所を特定しろ!

 ネメラデスではないだろうな!?》


騒然となっている敵超兵器の艦橋が容易に想像できる。

全員パニックになっているだろう。


《発射位置……不明!

 駄目です、謎の錯乱エネルギー体を纏っています!》


《アンノウンってレベルではないだろう!?

 あれだけ高出力のレーザーなんだぞ!!

 イージス展開装置が不調な今やられたら一巻の終わりだって事を

 分かっているのか!?》


なるほど、それでイージスを展開していなかったのか。

レーザーのことだが俺に分からないんだから敵にもわからないに違いない。

とにかく言えることはこのレーザーはベルカの技術だということ。

横たわる闇に大空のドームがまた光った。

さっきよりも細くなった弾道レーザーが地面に

横たわるネメラデスの死んだ砲台を蒸発させる。

道を切り開いてくれたのだ。


《今だ、さっさと場所を測定しろ!

 どこだ、どこなんだ!!》


焦る敵艦長は発狂寸前と思えなくもないほど

甲高い声を出している。

耳障りなので少しボリュームを下げ俺は仁を振り返った。


「……仁」


「分かってる。

 後十秒もあればいけるさ」


俺はこくんと頷いた。

十秒ぐらいならなんてことはない。

空を舞う最終兵器と通常超兵器。

俺がヘッドライトを二回点滅させるとメイナはネメラデスのイージスへとその身を投じた。

イージス同士がぶつかり虹色の光が発生する。

思った以上に強い守りにメイナは一瞬驚いた表情を浮かべた。

が、すぐに余裕の顔に戻り自分自身のイージスの出力を上げ

敵の万能の守りを少しずつ引っぺがしてゆく。

一枚、また一枚と。

破壊のために生まれてきた最終兵器は

同じく破壊のために生まれてきた超兵器に

真っ向からの勝負を挑んだのだ。

だが結果は見えていた。


「あと五秒……!」


俺はアクセルを踏み、トラックを押し出す。

重いエンジン音が森に反響する。


《敵が逃げるぞ!!

 追え!!

 レーザーは本部に任せて俺達はとにかく奴のもっている装置を奪還するか

 今ここで破壊しなければならないのだ!》


それに気がついたシグドデスの艦長は

レーザーのことをを後回しにしてまた俺達を追い始めた。

その場よりも約四百メートルほど南にいったところで

兵器同士の戦いは繰り広げられていた。

ネメラデスのイージスとメイナのイージスがぶつかり

太陽となった光の点が闇を照らす。

直接見ると失明しそうだ。


《出力を上げろ!

 イージスを破られる!!》


ネメラデスの艦長も明らかに先ほどまで余裕が消えていた。

語尾がすごく強い。


《か、艦長……っ!

 駄目です、イージスの負荷率が九十パーセントを超えます!》


苦しそうに呻いた敵の声と同時に

メイナの右腕がイージスの壁を突き破った。

ネメラデスの舷側が被弾の炎を散らす。

中へ侵入した右腕のレーザー砲が光り、

確実にネメラデスのイージス放出口をひしゃげさせたのだ。

これでネメラデスのイージスは無力化したはずだ。

ナイスな働きだ、メイナ。

次は俺達のターンだ。

仁とセズクがペアで照準を合わせているオクトパスミサイルの

緑のシーカーがフロントガラス右上のシグドデスと

左上に新しく追加されたネメラデスに赤く重なる。


「ターゲットロックオン!!」


フロントガラスにその文字が浮き出し、仁が叫ぶ。

ほぼ同時にキーボードのエンターが叩かれる音が車内に響いた。

トラックの横に張り出した鉄箱の扉が開き中に残った蛸が目を覚ました。

鉄の円状になっている拘束具が上下に開き押さえつけていたものはゼロになる。

蛸が獲物を捕まえるようにミサイルは噴煙を上げた。

その噴煙を破り二本の蛸が敵へとプログラムされた通りに狩りをはじめた。


《敵車両、ミサイルを発射!》


《各銃座、撃て!

 帝国郡の例の蛸かもしれん!

 なんとしてでも撃ち落せ!》


オクトパスミサイルは標的から何本もの銃線が伸びてきたのを悟った。

セズクから送られてくる指令に従い右に避ける。

標的の下装甲はとても分厚く突き破ることは出来ない。

ならどうするか。

オクトパスミサイルを追う様に弾幕が展開され予測射撃の罠を掻い潜る。

メイナに破壊され薄くなった左舷を的確に狙い済ましオクトパスミサイルは

いったんホップアップした後、重力とロケットエンジンの力を借りて

一気にそのスピードを上げ標的に突っ込んだ。

シグドデスを狙ったミサイルは一拍遅れた敵射撃を見事にすり抜け

敵の艦橋を掠めた後上昇に転じた。

高度約二千メートルまで昇るとエンジンをいったん切り

重力に引っ張られるがままするどい弾頭を下にして落ち始める。

それを待っていたかのようにロケットエンジンが息を吹き返しミサイルを

ぐいっと押し出した。

ネメラデスのイージス放出口が潰されたことにより

拘束具から開放された電子錯乱ミサイル――オクトパスミサイルは

音速の三倍のスピードで突っ込んだ。

敵の装甲内に収納されたミサイル格納庫にまで深く突き刺さる。

セズクの言った装甲が薄い部分をピンポイントに突いたのだ。

シグドデスは何と音速の四倍ちょっとで敵の艦橋に直接つっこんだ。

窓ガラスを叩き割り飛び込んできたミサイルにシグドデスの艦長は

肝を潰したに違いない。

ミサイルは艦橋の中を暴れたと思うと、壁に広がる射撃管理装置に食らいついた。


《な――!?

 レ、レーダーが!?》


《艦長、第八、第十二、第二十通路で火災発生です!

 そ、そんな――まだ増える!》


《第四主機炎上!

 姿勢を維持することが出来ません!》


ネメラデス内が狂気に飲み込まれたのを無線で確認。

……うまくいった。

ふわりとメイナが荷台に下りてきたときそう確信した。

艦体からメイナとの戦闘を表す煙をたなびかせ

ネメラデスはふよふよと今、危なっかしげに宙を漂いっている。

その中ではあるはずもない出来事に修理班などが駆けずり回っているに違いない。

射撃管理装置をやられたシグドデスはその多数の兵装が実質使用不能になっていた。

巨大な砲塔はぐるぐると明後日の方向にその長い砲身をめぐらせ

表面装甲に露出したミサイル発射口が開いたり閉じたりしている。

完璧に二機ともミサイルの働きにより機能を阻害されていた。

だがすぐに立ち直るだろう。

メガデデスの時は約二メートルという巨大なオクトパスミサイルだったから

あの装甲を破り死神の主武器を封じることに成功したのだ。

だが今回は違う。

全長五十センチ余りとかなり小さくなっておりなんか心細い。

小型化したというのはその分何かが削られているということだ。

ピンポイントで狙わなければ二機のの装甲を破ることは出来なかっただろう。

第二の働きである、動力をむさぼるという働きもあまり期待できない。

ほとんどゼロと考えて間違いない。

ならどうするか?


《くっ、何が起こっている……!?

 副長、まだか早く探し出せ!》


《ネメラデスか!?

 こちらシグドデス、よく分からないミサイルが……。

 それが原因かもしれない!》


決まっているだろ。

こうやって混乱してくれているうちに少しでも距離を稼ぐのだ。

トラックのスピードを更に上げる。

敵は非常事態に気をとられそれに気がついていない。

ゆうゆうと逃げることが出来るというわけだ。

暗闇に混じった二機の超兵器の巨体を後ろに見ながら

俺達のトラックはそそくさとこの場を離脱した。


「にーー!」


ルファーが肩に飛び乗ってきてもぞもぞ動く。

くすぐったい。

ぷにっぷにのルファーのほっぺ(?)を引っ張ってみた。

よく伸びる。






思ったよりも早く俺達のトラックは連合郡倉庫の脇を通過し

輸送機の所へたどり着くことが出来た。

マックスは煙草を揺らしながらボロボロになったトラックを見て

ふっ、と口元をゆがめる。

焼けたように煙が出ているタイヤはほとんどホイールオンリーで

走っていたという危ない状況だった。

損傷感知センサーも相当ダメージを受けていたようだ。

緑ゾーンだったから大丈夫だと思っていたのだが……。

シエラをトラックから降ろし、荷台を輸送機の中に移す作業に入る。

               

「まさか本当に盗ってくるとは思わなかったぜ。

 ったくてーしたやろうだよ、お前らは」


仁はげんなりと疲労の色が濃い。

その淡い顔をぶら下げたまま


「俺は二度とごめんだよ。

 ここまで怖い目にあったのは久しぶりだ」


そう呟くとそのまま飛行機の椅子に腰掛けた。

シエラが水を飲みふーっと空を見上げる。

お疲れ様だな。

今はメイナがパンソロジーレーダーで敵が来ないかどうか見張ってくれている。

あれから二機は俺達の反応をロストしたのかまったく攻撃を仕掛けてこなかった。

本部にでも帰ったのだろうか?

嫌な予感しかしない想像を打ち切ってトラックにもたれかかった。

ガシャンと例の装置が輸送機内の倉庫にしっかりと固定される。

小型クレーンを操っていたセズクが目頭を押さえながら

操縦席から出てきた。


「ふー、流石に緊張したよ今日はね。

 まさか超兵器が出てくるなんて予想も付かなかった」


そういいながらトラックの運転席に乗り込み

ゆっくりと輸送機の中にその車体を収納してゆく。


「波音、今からもう帰れる?」


シエラが俺の右腕を引っ張りながら聞いてきた。

疲れているのだろう。

アレだけ長いことイージスを張っていたのだから。


「うむ。

 目的は達成したんだ。

 帰れるに決まってるだろ。

 それよりさ。

 なんだ?

 あの……、何ていうんだ?」


俺は空からびがーっと光が落ちてくるレーザーのイメージを

両手を総動員させて表現した。

その動きをしばらく眺めていたシエラは


「弾道レーザー?」


首をかしげながら答えを教えてくれる。

そうそう。


「それだ。

 それが俺達を守ってくれただろ?」


マックスは掛けていたサングラスを外して

ハンカチで拭き始めた。

マックスの目はまんまるでな。

本当に綺麗なんだよ。

ビックリするほどに。

それで笑いそうになっちまった。

こらえたけど。

……もし笑ったら帰りの飛行機の操縦が更に荒くなるかもしれんからな。


「なぁ、マックス。

 帝国郡に超兵器は存在しているのか?」


俺は唐突に聞いてみた。

空から毎日基地を見下ろしているのだから

多少なりの変化なら気がつくと思うのだ。


「あいにく俺はわからないな。

 でも超兵器を見たことはあるぜ?

 でっかい艦だった。

 大体全長は千四百メートル前後と見てもいいんじゃないだろうか?

 海に浮かんでいるそのままの艦を陸に引き上げた感じだ」


千四百メートル前後……?

一キロと四百メートルだぞ?

じゃあメガデデス型じゃないってこと?


「それ、超兵器なのか?」


疑いの目を向けるとマックスはその深い青の目を

俺に向け「さあな」と笑った。


「ただ、ハイライトから一つの超兵器が見つかったってのはマジだ。

 俺はこいつで」


マックスは輸送機を叩いた。


「その超兵器を運んだんだからな」


ど、どういうことだ?


「ジョンが見つけた超兵器を運搬する作戦に参加していたのさ。

 超大型輸送機千二百機あまりと俺の愛機含め通常輸送機二千八百機。

 帝国郡が持ちうる全ての輸送機を使った作戦だったんだからな。

 まぁ海に降ろすまでだったけどな。

 そこから先はよく分からん。

 戦艦が八隻がかりで引っ張っていったのを見たきりだ」


ハイライトに超兵器が眠っていた……?


「大変だったぜ? 

 それだけ大量の輸送機を置く場所がないから

 帝国郡はデカイ犠牲を払ってまでハイライト周辺から

 連合郡を追い出したんだ」


マックスはメイナとシエラを顎で指した。


「ハイライトにも周辺にも連合郡がいなくなってからだな。

 この作戦が発令されたのは。

 当然口外禁止。

 まぁぶっちゃけた話極秘も意味ないほどもう帝国郡の間には浸透しているけどな。

 帝国郡の間ではお姫様なんて呼ばれてる」


マックスは煙草を地面に捨てぐりぐりと足でもみ消した。

俺達がこの装置を持ってきたのはもしかしたら……。

帝国郡が超兵器を保有したいがため?


「おそらく『ヴォルニーエル』級だ」


シエラはまだ煙がくすぶる煙草をじっと見つめると

ぽつりとこぼした。


「千四百メートルという大きさから考えると

 第三超空制圧艦隊旗艦『超空突撃戦艦ヴォルニーエル』。

 それか二番艦の『超空突撃戦艦ニジェントパエル』だと思う。

 メガデデス級なんてやさしいものじゃない。

 ここから上のグレードは化け物と言ってもいいぐらい」


トラックを固定するワイヤーがきしむ音が

沈黙した会話の代わりに鳴った。






                This story continues.

ここまで読んでいただき感謝です。

ポイント入れてくれた方本当にありがとございますっ!!!


5ポイント×2!

 

ぐはっ、最高に幸せです。

もう本当に。

興奮して足の小指をタンスにぶつけてしまいました。

本当に感謝です。

ありがとうございました。

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