明日使える豆知識……?
「トラックの調子は?
大丈夫なのか、こんなに激しく動かして」
仁が話しかけてきた。
ちらっとメーター類を見る。
耐久力値も、トラブル値も全部グリーン。
「大丈夫だろ。
もともとこんなに激しくはないとしても
凸凹道とかを走るために作られたような車両だからな。
コレぐらい振り回してもご機嫌は良いようだ」
俺は前から気を逸らさないようにして答えた。
「もう少し行ったところ右だってさ♪」
さっき振り払ったのにセズクがまた抱きついてきた。
「うっとおしいっ!
なんだよ、っておっと!」
危ない、危ない。
右だな、ここを。
百単位で飛んでくる銃弾を軽くなじり次々とバリケードを突破する。
そして……。
「てか、てめーはいつまで俺に抱きついてんだよ!」
「……んふふっ。
たまにはいいかなぁ……みたいな?」
よくねぇ。
全然よくない。
「気が散る!
抱きつくなら仁にしておけ!」
俺はホレと右指で後ろを指差した。
「えぇっ!?
何で俺なんだよ、波音!」
仁の悲鳴が聞える。
だって俺ずっとセズクの野朗に……。
たまには変わってくれても――とか思ってもいいだろ?
サイドブレーキを一気に引いて、ハンドルを捻る。
横滑りの状態のまま閉じかけた第四五防壁の隙間をかろうじて通り過ぎる。
「なっ!?」
道がない!?
ドリフト状態のままブレーキをかけて何とか停止させた。
窓から顔を出して眺める。
「か、階段って……。
おい、本当にここであってんだろうなぁ?」
ひきっしりなしに飛んできていた銃弾は後ろで閉じた第四五防壁にふせがれ
もう飛んでこなくなっていた。
まぁこれも少しの間だけだろうけどな。
平和ってそんなもんだろ。
「階段じゃない。
ここは弾薬を運ぶトコ」
シエラがぼそっと教えてくれた。
お、おぉ。
そうなんか。
弾薬運ぶトコなんだな。
「この階段みたいに見えるところは多分新しく建造されたんだと思う。
だってベルカは弾なんて不要だったし……」
レーザーだもんな。
そして弾を運ぶとか言うこの無駄に広い空間に
トラックを停めたわけなんだがここでいいのか?
というか何で通路とこの弾薬を運ぶトコがくっついているわけ?
言い出したらキリがない疑問が壁の色が違うことから
シエラが言ったとおりここは後から掘るなりなんなりして
新しく作った弾薬道なんだろうな。
「あっ……そうか。
この壁一枚抜けたら近いねぇ」
メイナさん?
急にどうなさいました?
「よし、そうしよう」
仁さん?
ど、どうしましたか?
「波音、このままこの階段みたいなとこ降りて壁ぶち抜いて。
そうすると一気に近くなるから」
「本当だろうな?」と
信憑性を疑いたいところだがメイナのレーダー使ってんだもんな。
嘘……なわけないよな。
世界一優秀なレーダーだもんな。
疑うと逆に罰っせられるだろうな。
しゃーない。
この壁の向こうに何が待ってようがもう知らん。
ここまで来たんだ、行くしかない。
固めすぎてがちがちになった決意をさらに固めなきゃいけんときだな。
頬を叩いて気合を入れる。
よし。
行くか!
決意が固まったのを祝福してくれるかのように
上からばらばらと黒い塊……うん。
黒い、丸い塊が降ってきた。
手榴弾……だよなぁ。
「手榴弾だからなんだというのか。と
彼は玉露をかき混ぜ、飲みながら言った。
りん、と鈴がどこかでなったような気がした」
セズクさんあんた余裕だな。
その某有名作家風にアレンジしてる場合かって。
シエラのイージスに弾かれ
トラックの周りに散らばった手榴弾は一拍置いて一斉に爆発した。
その爆風にお尻を叩かれるようにしてトラックは
階段を一気に駆け下りる。
うえー、見ろよなんて分厚そうな装甲なんだ。
長年の勘から分かる。
これ絶対に無理だろ。
「もっとスピードあげて!
これじゃ無理!」
メイナが「くっ……」と声を上げた。
そんな固い場所を……。
あえて選ぶなんて鬼畜というか外道というか。
道なだけに外道?
俺はアホか。
「仕方ないね☆」
ようやく俺から離れたかと思うと
「セズク?」
セズクは時速八十キロで階段(のような場所)を
下るトラックの荷台から飛び出した。
鍛え上げた瞬発力でトラックを一気に追い抜く。
そしてトラックの少し前に着地すると同時に
その右腕を何でも切れるナイフにかえ、その力をもって
前の壁を綺麗にカットした。
そしてジャンプしてまたトラックの中にすとんと戻ってきた。
唖然。
やっぱりこいつすげぇよ。
ホモだけど。
すげぇけどホモなんだよな。
そこが玉(これで漢字合ってるのか?)に傷なんだよな。
「今僕が切ったところにトラックを♪」
言われなくてもそうさせてもらうさ。
少しハンドルを左に回す。
よし……このまま……。
ツインドリルズがセズクが切った装甲にぶつかった。
鋼鉄同士がこすれあいゆがみ、そこだけぽっかりと抉り取られたように穴が出来る。
抉り取られたってか、切り取られたほうが正しいかもしれない。
いや実際に切ってたんですけどね。
その穴の中に我らがトラックは入っていく。
さてこの穴の向こうには一体何が。
どんなものがあるのだろうか。
まぶしくて向こうが見えないのだ。
「またか……」
そのまぶしさを潜り抜けたときまたため息をついてしまった。
何もなかった。
聞きも、装置も……床も。
吹き抜けみたいな空間の中に出てしまったみたいだ。
「おい、仁。
お前信じてよかったんだよな?」
「うむ」
うむ、ね。
フロントガラスから見えるのはパイプ類とコード……。
それと物凄い光。
崖から落ちるときとは違いほんわりと水平に落ちているのが分かる。
まるでエレベーターに乗っているみたいに。
穴から飛びした状態でふわふわと。
「ここは人工重力みたいなのがついてる。
下に近づけば近づくほどスピードは落ちていく。
だからそんなに心配しなくていい」
またさらっと大事な事を。
そういうのは早く言うべきだ。
「この機能が出来るまでこの吹き抜けから落ちて死ぬ人は多かった。
全部あわせて二五人がお亡くなりになった。
大体が整備の時に。
この艦事態が収容できる人数はそもそも……」
はいはい豆知識、明日使えません。
のんびりとスピードが下がる。
本当だ、すげぇ。
エレベーターみたいだな、本当に。
トラックはのんびりと床に着陸した。
「ここが機関室?」
仁の問いに
「そよ」
メイナが頷いた。
中央には五つほどの山みたいに大きな機械がおいてある。
そこから赤の光がこぼれんばかりに生み出されていた。
「一括りに言うとナクナニア航空機関。
もうちょっと詳しく言うとナクナニア光反動炉。
原理は知らん」
シエラは説明を放棄した。
知ってるわけないよな。
光は床、壁の配線をつたってエンジンなどへ運ばれていくのだろう。
美しい光景だ。
ハイライトの中で見た光景と似ている。
あそこもなかなか神秘的な場所だった。
ここは赤い光であっちは紫の光だったけどな。
列車砲とかもあった。
ジョンは元気かな。
「波音、ここをつっきってもう二つほど下に行こう。
そうしたらもう装置の部屋につくから」
やっとか。
なんとも長いバトルだった。
「おっけ」
ゆっくりとトラックを発進させた。
あんなに激しかった敵の攻撃は今はぴたりと止んでいる。
やっぱりここは未知の場所ということで触れにくいのだろう。
そりゃそうだわな。
もし壊してしまったら修理は出来ないんだから。
「ここでいいんだよな?」
俺は『D2Lλ』と書かれた扉の前で一度トラックを止めた。
「そうだ……な。
うん。
第二倉庫ってかいてあるから多分あってる」
シエラがゴーサインを出した。
よし、ラストスパート。
目標は間近。
さっさと装置奪って家帰って風呂入って寝たい。
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お気に入りに入れてくださった方、本当にありがとうございました。
すごく励みになるとともに
もっともっと面白くしてきたいです。
せっかく入れてくださったのに面白くないと駄目ですからね。
精進していきたいと思います。
そしてこの小説を読んでいただくことにより
疲れとかを忘れていただける。
そんなよりどころになれたらなって……。
そう思います。
え?
志でかすぎ?
――っ!
が、がんばるからいいんですっ!!
外伝『しゃくでば!』もどうかよろしくお願いします。
それでは。