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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
帝国群な季節☆
75/210

激突!決めた覚悟と空飛ぶ俺達

「とりあえずサンドイッチでも食いながらのんびり待とうぜ」


まだ残っていたのかサンドイッチ。

俺にはハム頼むぜ。

シエラがサンドイッチとお茶を俺にほいと渡してくれた。

そのまま目を隣にやるとセズクがラジオを聴きながら

サンドイッチをハムとパンとに解体しながら食べている。

それじゃ意味ねーだろバカ。

もし装置を奪うという目的が無ければただのピクニックにしか見えない。

のんびり食べながら作戦の最終確認をする。

だいたい二時間ぐらいたっただろうか。

流石に何回も作戦の打ち合わせは飽きた。

だから持ってきたトランプで大富豪をしているとやっと

ホドデデス艦隊をシエラのレーダーが捉えた。


「来た!」


え?

早くないか?

ちょっとまって今から革命するんだけど。

それに後二時間ぐらい残っているはずじゃ……。

――あ。

ドライブでの移動時間考えてなかった。

だから早く感じたんだ。


「急げぇえっ!!」


トランプを放り投げ全員が所定の位置にあわてて飛び移る。

俺は運転席、仁は荷台でしっかり体を固定する。

シエラを助手席に持って行き、セズクとメイナは仁と同じように荷台に放り込んでおく。

エンジンをかけ、静かにその時を待つ。

トラックのシステムは全部オールグリーン。

健康すぎる状態だ。


「シエラ、あいつのスピードは?」


仁がPCにデータを打ち込むために聞く。


「ぴったり五百キロ」


「よっしゃ」


液晶スクリーンをタッチしながらデータを入力しているのだろう。

俺は前向いてるから見えない。

発車……というか発射のタイミングは仁が教えてくれる。


「波音、今から秒読みに入るぜ」


キラッと夕闇に光るものが窓から見えた。

目を細めて正体を確かめる。

ははーん、間違いない。

ホドデデスの艦隊だ。

赤い光を下から噴き出しつつ静かに回転しながら向かってくる。


「二十――十九――……」


二百メートルちょいの円盤型の巨体を持つベルカの巡洋戦艦。

防御力は計り知れないが多少なり装甲が薄い部分があるはずだ。

例えば機銃砲塔とか。


「五――四――……」


さてそろそろだぜ。

頼むぜ、みんな。

ホドデデス艦隊の甲高くなってきたエンジン音が鼓膜を叩く。

あんなに遠かったのにもうここまで来やがったか。


「三――二――……」


汗ばんだ手でハンドルを握っているおかげでぬめるぬめる。

ホドデデスと護衛のまがまがしい雰囲気を放つ船体の細部までが

くっきりと肉眼で確認できる距離まで近づいてきた。

今からあれに乗り込むんだぜ。

無鉄砲すぎるだろ俺。

まぁこんだけ心強い仲間がいるんだ。

多少なり大丈夫だろう。


「一――Go!!!!」


仁の声と同時に俺はアクセルを思いっきり踏みつけた。

トラックは地面をそのタイヤで削りながら崖へと走る。


「飛ぶぞっ!!」


声を久しぶりに腹から出した。

その勢いでギアをWDに入れる。

今二本のドリルが突き出したはずだ。

変形だ。

浪漫だ。


「うぉぉぁぁああ!!?」


仁が叫んでいる。

俺も叫びたいぐらいに怖いわ!

フロントガラスから地面が消えた。

トラックの前輪が、続いて後輪が地面から離れる。

見て、見てくれみんな。

俺達今、飛んでる。

ふわっとした浮遊感。

この気持ちのいい一瞬が一時間より長く感じた。

トラックは物理の掟にしたがってしばらく……とはいっても一秒ぐらい宙を舞ったが

重力に引っ張られドリルの出たほうを下にして落ちはじめる。

当然このままの状態でホドデデスに突っ込むわけではない。


「シエラ、イージス!!」


「了解」


冷静を失わないのはさすがというべきか。

ブン……とトラックの周りをシエラのイージスが覆ったはずだ。

これで衝撃は幾分緩和されるに違いない。


「つっこむぞぉぉぉあぁあああああ!!!!」


発狂してないぞ。

でもフロントガラスから見える光景を見れば誰でも気絶一歩前まで行くだろ。

大体六百メートル下に広がる川の上をふわふわと四隻のフリスビーが浮いているのだ。

その選ばれた一つに乗れないなら完全にアウトなんだからな。

だんだん大きくなっていくホドデデスの船体。

他の護衛の三隻とかもうどうでもよくなっていた。

俺生きて帰りたい。

ホドデデスの少し大量に設置されている少し膨らんだ部分からそこから銃身が二本出ている。

あれが機銃砲塔だ。

あそこに突っ込む予定だ。

薄い青の線がはりめぐらされている。

ベルカの技術はどうしてこう光の線が表面に出ているのか。

それが微妙に怖いということを自覚して欲しかった。

だんだん大きくなっていく機銃砲塔。

はじめはりんご大だったのに今ではもうフロントガラスいっぱいに広がっている。

それにしてもこの落ちる感覚。

大事なところがスーッとする感覚は何度味わっても好きになれないものだ。

怖すぎ。

あぁもうそろそろぶつかるかなぁ……短い人生だった。

変な覚悟をしてしまう。

だがおそらく俺達は大丈夫だろう。

仁のおっそろしく正確な計算のおかげで無事機銃砲塔に突っ込めそうだからだ。


「いっけぇぇええええ!!」


あ、待ってくれ。

問題発生。

ちょっと早すぎたかもしれない。


「あ、ゼロコンマ一秒早すぎたかも、カウント」


「仁の馬鹿ぁああああ!!!!」


このままじゃ間違いなくホドデデスの分厚い装甲にぶつかって終わり。

おっそろしく正確な計算をほめた俺が馬鹿だった。

シエラもメイナも止めれない速度でトラックは落下している。

――終わりか。

絶望に心を塗りかためられた。

と、おそらくホドデデスもイージスを張っていたのだろう。

トラックが機銃砲塔にぶつかる寸前に強烈な光が発生した。

そのおかげで一瞬だけとドラックのスピードが半減。

ホドデデスのイージスを相殺するとともに無事俺達のトラックは機銃砲塔に突っ込んだ。

がくんと二段階構えの衝撃があったがシートベルトががっちりと俺の体を固定してくれている。

していてよかったシートベルト。

ドリルの貫通性で突っ込み、シエラのイージスでトラックの損傷をぐっと抑える。

なかなか理にかなった考え方だと思わんかね?

だが俺は衝撃で腰にダメージを負った。

結構痛い。


「いてぇ~……。

 おい、大丈夫か?」


腰を抑えながら後ろの荷台を振り向いた。


「全員無事だよ。

 シートベルトはすごいねぇ、やっぱり」


メイナの元気な返事が返ってきた。

セズクはふぅと安堵の息をついている。

仁も元気そうだ。


「シエラ……は無事に決まってるよなやっぱ」


「それどういう意味?」


助手席からむっと怒ったような声が聞えた。

元気だな。


「いや――気にするな。

 とりあえずメイナ、セズク頼むぜ。

 敵が来ないうちにさっさと終わらせるんだ」


「まかせな♪」


「ひっさ~しぶりの出番だからねぇ!」


二人はトラックの荷台から飛び出す。

低く唸り始めた音……おそらく警報だろう。

敵に完璧に気がつかれたに違いない。

ざざっと集まってくる前に済まさないとな。

これだけ派手に突っ込んでおいて気がつかない敵はいないだろう。

さてと。

今、このトラックは前方を機銃砲塔部にめりこませ

車体の中央までがホドデデスに食い込んでいるという状態だ。

このままじゃ走れないのは一目瞭然。

そこでこの二人の出番というわけだ。


「行くよ!」


俺がOKサインを出すとメイナは右腕をレーザー砲に変えた。

装甲板にほぼゼロ距離と言ってもいいほどの近さで

赤いレーザーがトラック周辺に次々と叩き込まれていく。

装甲ごと崩してトラックを中に侵入させるために。

レーザーを受けた装甲がトラックの重さに耐え切れなくなっていきゆがみ始める。

ドンピシャで装甲が薄いところに突っ込めて本当によかった。

それ以外の場所だったら間違いなく弾かれて崖下の川に落ちていたに違いない。

ガクン、と体が揺れた。

そろそろ装甲板が外れるだろう。


「ラスいちー!」


赤いレーザーがかろうじて一部分でつながっている場所をぶち抜くと

溶解した機銃砲塔ごとホドデデス内に落下した。

その一瞬を狙ってセズクが右腕のナイフ(にしてはよく切れる)で

トラックから機銃砲塔を切断排除する。

うまいことトラックはホドデデス内に着地することが出来た。

ここまで無謀の塊だったわけだが案外うまいこと行った。

さすが成功フラグだ。


「よし、戻って来い!」


二人が荷台に入ったのを確認するとアクセルを踏み

さぁホドデデス内にてドライブと行こうじゃないか。

このまま一気に装置のところまで向かうとしよう。


「止まれ!!

 何者だ!!!」


走りだしたトラックを遮るように銃を持った兵士達が向かってくるが敵ではない。


「止……とまっ……た、退却っ!!

 急げっ!!」


誰もがツインドリルを回しながら疾走してくるトラックを見たら逃げるだろう。

間違いなく俺だったら逃げる。


「う、撃て!

 ぶっ飛ばせぇーっ!!」


後ろから追撃の火花が飛んでくるが当たる気配がしない。

っと、急カーブが見えてきやがった。

スピードを出し切った状態でサイドブレーキを引いてハンドルを切る。

トラックの後輪が横滑りをはじめいわゆるドリフトで角を曲がった。

ニードルタイヤの棘とホドデデスの鉄が擦れて火花を散らす。

角を曲がりきりったと思うとバリケードが築かれていた。

その上にガトリング砲が並んでいる。


「行動はやっ!」


俺は思わず突っ込んでしまった。

そんなこと知らんと主張するようにガトリング砲が

一斉に火を吹き弾を叩き込んできた。


「無駄」


シエラが小さく呟きその言葉どおり

イージスによって大きく軌道が曲げられた弾があちこちにばらける。

焦りの色を見せる兵士達を蹴散らし

ドリルでガトリング砲ごとバリケードを突き破る。

そのときに火が出たのだろうか。

あっという間に広がった炎は弾薬に引火し、ホドデデスの装甲を

突き破らんばかりの火柱になっていた。

そこを俺はトラックで駆け抜ける。

誰も死んでないよな……?

小さな不安がちくりと胸を刺した。






               This story continues.

ありがとうございました。

ホドデデス内に侵入成功です!

ちょっとメタ発言多かったかも知れません。

ごめんなさい。


さてこの物語ももう三分の二が終了間近となってまいりました。

もう少しだけお付き合いいただけると嬉しいです。


外伝の『しゃくでば!』もよろしくお願いします。

      ↓

http://ncode.syosetu.com/n2021p/

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