Next Bad
嘘だろう?
だがあの死神は紛れもなくそこに存在していやがる。
あの赤い光も大量の武装も。
甲高いエンジン音も、鋼鉄の鈍い輝きも。
駆逐艦からみたあの超兵器そのままだ。
それがここから見えるだけで四機。
この穴を中心に一機が。
その一機の周りを護衛のつもりか、三機がぐるぐると回っている。
「どうだ、少尉。
圧巻だろう?」
アリル父がふふんと鼻を鳴らす。
確かに声が出ない。
本能的な恐怖も更に追い討ちをかけている。
シエラとメイナも流石に見たことがないのだろう。
一隻だけかと思ったらまだあったんだからな。
ビックリだよ。
「あ、あの……すばらしいです。
もうなんというか、す、すばらしいです」
どもりながらも感想を述べる。
それを聞いてアリル父はうんうんと満足そうに頷いた。
「そうだろう、そうだろう。
なんといっても連合郡すべての超兵器をここに集合させたのだからな」
なんてこったいですよ。
よくそんなことが出来たものだ。
しばらく超兵器が旋回しているのを眺めている。
四機――なんという威圧感だろうか。
まがまがしいまでの殺気が放たれている気がしてくる。
もしアレが敵として攻撃してくるなら逃げ切る自信なんてゼロだ。
ガガンと、金属音が鳴り響きぴたりと穴の真上に一機の超兵器が
倉庫から伸びてきたアームにより固定される。
円盤型の機体の真ん中付近に穴が開いたと思うとそこから二十本ほどの鎖が降りてきた。
「さぁ、これをこの装置の下の土台にセットするんだ。
しっかりと固定したかどうか引っ張って確認もするように。」
アリル父が一本の鎖をほれ、と俺に投げて渡す。
「え、いや、あの……」
ずっしりとした鎖を受け取るもやり方がわからない。
「どうした、早くしろ」
たずねようにもこの気迫ですよ。
えぇい、当たって砕けろだ。
「は、はい……」
俺は装置の下に敷いてある鉄板をしげしげと眺めた。
所々に穴が空けてある。
ここに鎖のクレーンのようになっている部分を引っ掛けるのか。
一つだけで直径二十センチはあろうかという大きさの鎖を引きずって
装置下の鉄板の穴にクレーン部分を引っ掛けた。
自らの手で、自らのいただきもうしあげようとしているものを
こうやって一生懸命固定しなけりゃならないなんて……。
「あ、あの、すいません。
まさかあの超兵器の下に
ぶらさげたまま運ぶ……ってわけじゃないですよね?」
一つ目の鎖を固定し終わり、二つ目の鎖をアリル父から受け取るときに
思い切って尋ねてみた。
「は?
一体お前は何を言っているんだ?」
アリル父はふーとため息を付き額の汗をぬぐった。
といきなり、俺をその強靭な眼力でにらみつけた。
足がすくむ。
怖い。
「こんなに大切な物をぶら下げたまま運ぶわけ無かろうが。
もう少し考えてから発言したまえ」
お、怒ってる。
普通の連合郡兵士がそんなこと聞くわけない。
アリル父の言うとおり、もう少し考えてから発言すればよかった。
「はっ、も、申し訳ありません……」
まったく――とぼやきながら作業に戻っていきなさる。
鉄拳が飛んでこなかっただけよかったと思うべきだろう。
この装置が超兵器の中に収納されたらもう完全にアウト。
取り返すなんてこと絶対に無理に違いない。
「よし、固定できたな。
良いぞ、引き上げろ」
アリル父がそういって右手を上げると
装置がゆっくりと鎖に引っ張られ超兵器内へと登っていった。
今ここであの装置の鎖を切って持ち帰りたいという衝動が突き上げてきた、ものすごく。
俺は今、自ら虎の穴の中に獲物を突っ込み、それを気に入った虎から
またその獲物を奪い取る事と等しいことをしてしまったわけだ。
装置は超兵器の中に消え、分厚い蓋がされてしまった。
世界一安全な金庫に入ってしまったわけだ。
「少尉、中を見ておくか?」
急に話しかけられたと思う。
「は、はっ!?」
俺は見事に動揺してしまったがお咎めは受けなかった。
アリル父は苦笑した顔でくいっと顎で超兵器を指す。
「あの『ホドデデス』の中をだ。
良い記念にはなると思うが」
いたずらっぽく笑う。
「あ、え……いえ……」
アリル父はどうだ?といった風に首をかしげた。
思わず目を逸らす。
「出発まであと八時間もある。
見ておいて損するものではないぞ?
私は何度も見ているのだがなんとも神秘的なのだ、これが。
一機撃墜されたというが……」
見てみたいっちゃ見てみたいさ。
超古代文明の塊だからな。
それに中からならあの超兵器の弱点を一つや二つほど見つけることが出来るかもしれない。
ホドデデスとかやらを撃墜して、装置を奪い去ることも可能かも。
となれば、返事は決まっている。
「わ、わかりまし「冗談だ」
へ?
返事の途中でさえぎられた。
「ん?
どうした、そんな顔をして。
冗談に決まっているだろうが。
はっはっはっは……」
む、むかつくっ――。
せっかくの俺の覚悟をうやむやにしやがって。
だがいい情報を得ることが出来たのだ。
出発まで後八時間あるということ。
よし、まだ巻き返せるかもしれない。
「それでは、私達はこれで……」
「うむ」
アリル父に敬礼して、最深部の部屋から出た。
しばらくそのまま歩き、十分に離れたところで口蓋を切ったのはシエラだった。
「まさか、あんなにたくさん存在していたなんて」
その声は驚嘆というより不安に溢れている。
俺もびっくりしたさ。
「予想外だったねぇ……。
いやはや……」
メイナもふぅとため息をついてデコに張り付いた髪の毛を息で飛ばした。
セズクはもう何を言えば良いのか分からないのだろうか。
ぼーっと空を見つめている。
考え事をしているようには見えない。
「なぁ、『メガデデス』の同型艦っていくつあるんだ?
百機とかは流石にないと思うけど……」
どうな
巡洋戦艦なんだからそんなにたくさん存在しているわけでもあるまい。
「僕が知っている限りは十二機。
それも後期になってゆくにつれて改良されていくから
一番艦のメガデデスより強力な兵装をつんでいる可能性が高い」
シエラが頭に手を当てながら答えてくれた。
あの四機は来るときに洞窟内で見たあの四機だろうか。
もし違うなら連合郡は少なくともメガデデス含め九機。
ベルカの超兵器を手に入れていたことになる。
そりゃ帝国郡が勝てないわけである。
帝国郡も一つや二つ程度は持っていてもよさげなんだがなぁ。
ないの?
一つも。
あったら連敗はしないよな。
当然、装置がホドデデスに持っていかれても
援軍なんて期待しちゃいけないんだろうな。
援軍だしてくれるならはじめっから俺達に頼みはしないものな。
やっとこそさトラックにたどり着く。
こっちの武器はこのトラック一台か。
オクトパスミサイルと、ロケットエンジンと、ドリル。
その他たくさんあるがどれもこれもあの超兵器とタイマンをはれるかっていったら無理の一言に尽きる。
いや、武器で言えばこちらには最終兵器がいるけど。
総合的に見たら上なんだろうけど、なぜか負ける気しかしない。
なして?
「とにかくなにか作戦を拡げないと。
メイナ、あの地図出してくれ」
トラックの荷台に飛び乗る。
十人ほどの眠らせた兵士達が全員そろっているのを確認して
「はいはいさ」
メイナから渡されたヘリの進路図を眺めた。
しばらく森を通った後、山脈を抜けるのか。
ありがたいことにそれほど高度はあげないようだ。
秘密兵器だもんな、仮にも。
自国民にすらばれると厄介なのだろう。
先回りするか?
いや、無理だろう。
うーむ……。
「みんな、どうすればいいと思う?」
「わからないね♪」
分かったから、セズクさんはちょっと黙ってて。
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ありがとうございました。
新しくお気に入りに入れていただいた方。
本当に感謝です。
さて、この次、波音はどうするのでしょうか。
お楽しみに。
P.S
地震、大丈夫でしたか?
がんばれ。
ごめんなさいこの一言しかいえません。
少しでも電力を節電いたします。
東北地方の方々がんばれ!
もし気分を悪くされた方がいらっしゃったらごめんなさい。
今日、小遣いの五分の一である五百円を募金してきました。
少しでも役にたちますように。