外れて欲しい現実と架空世界
「仁、図を出して」
「あいよ」
仁はポケットからPCを引っ張り出すと
ぴっぴっといじり、ほれと俺達に見せた。
「今僕達がいるのがここ」
シエラが人差し指で赤丸を叩く。
「で、さっきまで僕達が行っていたのがここ」
なんら他の部屋と代わりのない部屋が赤くマークされる。
「波音がアリルと戦争しているうちに……」
「にーにー」
おー、よしよし。
癒されるではないか。
「聞いてる?」
甘えてくるルファーをなでながら
「聞いてる聞いてる。
それで?」
そう返した。
本当に聞いてるのかな、とつぶやきながら説明に戻るシエラ。
「さっきと同じところから話す。
一応な。
ぜってー聞いてなかったから。
――ごほん。
あなたがアリルと戦争をしているうちに
僕達はシンファクシから届いたメールの指令をこなしていたんだ。
『連合郡本部とそこ(現在地)の通信が激しくなったとの事。
もしかしての場合に備え、情報を収集せよ』」
なるほど、通りで。
通路を探してもいなかったわけだ。
「僕達はコントロールルームに行って何気なく尋ねた。
いったいどうしたんだ? ってね」
シエラからバトンを受け継いだメイナが続きを語る。
「そしたらヘリで装置を運び出すって言うんだもん。
私びっくりしちゃってさぁ……」
メイナはそういって目を細めた。
ミスったんだな。
まぁその後は何か知らんがこいつらはこいつらで頑張っていたのだろう。
探すって言ってもシエラのレーダーとかで簡単に見つけることは出来たはずだ。
「で、波音のところに行く途中で面白いものを見つけてね……」
俺の肩に居座っているルファーをなでながらセズクが言う。
「にー!」
がぶり。
「あいやーっ!」
なんだその叫び声。
「で、そのヘリはいつ出発なんだ?」
「それが……」
シエラはてへ☆というように頭をなでた。
そうか、入手できなかったか。
「ごめん」
「誤らなくていいよ。
ま、ずっとここで待機しているわけにもいかないし。
全員そろったことだし中に入って現物を拝ませてもらおうぜ」
そういって俺は仁に指示を促した。
「さって、ようやく俺の出番ってわけだ」
「頼む」
「任せろ」
仁は扉の前に立つとポケットからひとつのケーブルを取り出した。
どれだけお前のポケットには物が入るのかと突っ込みたい所だがやめておく。
なぜなら仁は本気だからだ。
本気の仁を怒らせるとパソのHDDに六TBぐらいのエロ動画を無理やり入れられたりするからな。
(経験者は語る)
仁はケーブルを扉の小さな穴に突き刺した。
「後五分ぐらいで出来る。
のんびり待っててくれ」
電子音を響かせながら仁のPCの液晶についている
十二桁ほどの文字がものすごい勢いで回転をはじめた。
「ほぅ――全部で十一桁か。
ちょろいちょろい」
いやはや俺には一生理解できないことをしていらっしゃる。
ぼーっと眺めているとあっという間に一桁目が『2』で停止した。
早い早い。
「で、ヘリってどんなヘリなんだ?
運び出すのに必要な馬力を得るためには相当でかいと思うんだけど」
扉は仁に任せて俺達は仕事の話に戻る。
「うーん、そこが分かっていたら楽なんだけどねぇ。
手に入れれたのはルートの紙ぐらい。
まぁこれも中の装置を今奪ってしまえば無用なんだけどね」
メイナは胸ポケットから一枚の紙を取り出した。
なかなか精密な地図である。
サイズはA4。
その大きさの地図に赤い線でルートが刻まれていた。
「机の上においてあったのを奪ってきたんだよ♪」
セズクが付け足す。
罠じゃねーの、おい。
こいつらは疑うということをあまりしないからなぁ。
とりあえず極秘のルートだろ?
そんなにぽーんと放っておいていいのか?
どうなんだ、連合郡。
ひょっとして連合郡の皆様もバカなのか?
真剣に悩む。
そんな折、ぽんと肩に手が置かれた。
「開いたぜ」
仁がぐっと親指を立てて見せる。
開いたのか。
「お疲れ様」
仁が扉からコードを抜くとガゴンと
大きな音がしてゆっくりと扉が開いていく。
中は真っ暗でなんも見えん。
「これのほかにセキュリティは?」
仁に尋ねてみた。
入った瞬間びりびりびりとかいうのは勘弁な。
「ない。
ゼロだ」
待ち伏せか?
ゆっくりと銃に一発目の弾を込める。
いざとなったら装置を壊して脱出するぐらいはやってみせる。
敵は壁に銃弾が当たることを恐れてそう簡単には撃ってこないだろう。
だからその一瞬の隙をついて……。
一歩一歩進んでいく。
右手は銃に。
左手は探るため前に突き出してある。
「まじでなんも見えないな。
この部屋がどれぐらい広いかすら分からん」
愚痴をたれながら歩く。
と、こつんと前に伸ばしていた左手にひんやりとしたものがぶつかった。
これが装置だろうか。
「シエラ、レーダーは……。
使えないんだったな。
仕方ない、ペンライトつけるか」
「いや初めからつけなよ……」
メイナに突っ込まれた。
うむ、確かに。
ペン型ライトを捻って明かりを灯すとそれを
左手のぶつかったものに向ける。
「おぉ……」
ぼんやりとした全体図を浮かべるため装置の周りを三周ほど回った。
なるほどね。
形は軽自動車に酷似している。
大きさは少し小さいが。
なによりトラックの荷台に積めそうでよかった。
さて、装置の大きさは分かったわけだがどうやって運び出そうか。
「メイナ、この装置の大体の重さ分かるか?」
「えーと……。
約六百キログラム」
とても持てる重さではない。
トラックに一度戻ってロープで引っ張るか?
でもそうしたら装置に傷がついたりするからな。
ぱっと天井のライトに明かりがついた。
あぁあっ、目があぁ!
「おー、少尉か。
お出迎えご苦労様」
扉から現れたのは筋肉隆々の……。
ってかアリル父……。
「は、はっ!
ご苦労様であります!」
全員そろって敬礼を返す。
アリル父はつかつかと俺達の前に歩いてきて答礼した。
敬礼を解除すると愛しいのだろうか。
筋肉をなでなでしながら
「んー、今からこの装置をヘリで運ぶわけだが……」
アリル父は話し始めたのである。
どんだけ鍛えてるんだあんた。
今から運ぶ?
嘘だろ。
「今回のヘリはすごいぞ?
なんて言ったって最強のヘリなんだからな」
最強のヘリ?
ってことは武装ヘリみたいな類だろうか。
ガンシップ?
「天井シャッター開け!」
アリル父が唐突に叫んだかと思うと
それを合図に天井がゆっくりと開いていく。
ゆっくりと空が見えてきた。
「あれがヘリだ」
アリル父の指差した方から……。
ああ忘れもしないあのエンジン音が響いてきた。
外れて欲しい。
そういった願いはむなしく突きつけられた現実に崩れる。
≪円盤型超空巡洋戦艦メガデデス級――≫
「こ、これを使って輸送を……?」
「そうだ」
This story ccontinues.
インフルにかかりました。
げほげほ。
死にそう。
でもがんばって更新しましたよ!(ドヤッ
お気に入りに入れてくれた方、本当にありがとうございます。
感謝です。
それではここまで読んでいただきありがとうございました。