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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
帝国群な季節☆
71/210

ハインリヒ天皇帝さま

まじでどこに行ったんだあいつら。

俺は最深部の扉の前でイライラしながら四人を待っているのだが。

一向に誰も来る気配がない。

だんだん薄気味悪くなってきたんだが。

地下のべっとりとした空気が仁達の失踪で現れた不快感を更にあおる。

絶対何か変なのに巻き込まれたのではないだろうか。

迷うことが増えたというか………方向感覚がバカになったんとちゃうだろうか。

これも一つの楽しみと化している俺はもう手遅れなのか?

とか考えながら扉の前で十分間。

いつあの装置がヘリで持ち出されてもおかしくないというのにあいつらは現れない。

やんぬるかな、探しに行くか。


「よっこらせっ」


重たい腰を持ち上げたときだ。


「波音ー……」


仁の声がかすかに……いや思いっきり聞えた。


「仁っ!!

 仁、どこだよ!」


「波音ー!

 逃げてぇぇええっ!!」


え、は、ちょ、え?

仁の声が次第に大きくなってきた……。

つまりだんだん俺に近づいてきているということ。

逃げてとはどういうことだ?

混乱する頭に四人が銀色の小さな玉に追いかけられているのが見えて来た。

ぱっと見て二十はいる。


「お、お前ら一体どこに行ってたんだよ!」


俺はすごい形相で走ってる仁にたずねた。

だが返事は返ってこない。

変わりに


「今それはいいからどけぇええっ!!」


といわれましてももうここは扉前でして。

えぇ、逃げ場が無いんです。

したがって


「ギャー!」


仁の突進をモロに受けた俺は吹っ飛び扉に思いっきり肩をぶつけることとなった。

頭から星が飛びそうだ。


「いってぇ………。

 おい、何するんだよ」


「ごめん!

 止まれなかったんだよっ!」


お前は車か。

俺は謝る仁から床でぽよぽよはねている銀玉に目を移した。

何でこいつらから逃げてんだよ。

どう見ても雑魚じゃねぇか。


「こんなヤツ蹴れば一発だろ……」


俺は思いっきり振りかぶって


「あ、波音!

 駄目だよ!」


仁が焦って俺を止めようとしたがもう遅い。

銀玉の表面を「そいつら噛むんだよ!」


「あいやー!」


痛みで苦しむ俺の足に銀玉がしっかりと食いついていた。

これだけ硬い軍靴を貫通するほどの噛む力って一体……。

それにこの形、色……。

どう見ても可変式鋼鉄細胞(ESSPX細胞)の塊じゃねぇか。

さっき見た部屋にも三匹ぐらいいたぞ。

それより何で追われてんだ。


「まったく私の服がボロボロだねぇ」


メイナが所々破れた服をつまんでため息をついた。


「なかなか綺麗だったのに」


「僕はあまり被害が無かったんだけどね♪

 マイハニー、僕たちがいなくて心配したかい?」


セズクそれはお前可変式鋼鉄細胞からも嫌われてるってことでしょうが。

おいお前ら。

それはどうでも良いから


「とりあえず俺の足のこいつをはがせ。

 シエラとメイナ二人いるんだからレーザーなりなんなりで

 触れないようにして消せばいいだろうが。

 痛いんだよ頼むから早くして」


懇願した。


「あ、そうだな。

 言われて見れば確かに……。

 触らなければいいんだ」


シエラがなるほどというようにうなづいた。

最近こいつらは富にバカが進行していないか?

話すたびにそう思うことが多くなってきたわけだが。

なんていうか、抜けてるんだな。

頭のネジが百本ほど。


「シエラ早くしてくれ……」


俺がシエラの前に足を差し出すと

シエラは銀玉を両手でしっかりと捕らえた。

触れないようにって言っただろうがよ。

人の話聞いてないなーほんとに。


「ん、行くよ」


シエラの両腕に青い光の線が現れ掌へと伸びていく。


「DigёΖx」(ごめんね)


シエラは掌でもがいている銀玉に一言話しかけると

一気に光を放出したようだった。

目を開けていられないほど強い光が銀玉を包む。

細めていた目を開けたときシエラの掌には何も無かった。


「おぉー、なるほど。

 僕もやってみようかな♪」


セズクもシエラのマネをしようと銀玉に近づく。

ぽよぽよはねている銀玉を一瞬で一匹捕らえ掌同士で挟み込む。


「いたたたっ!!」


そしてかじられている。

だから触れないように遠距離からレーザーでって……。

俺そう言ったよね?


「それっ!」


メイナも勢いよく銀玉を掴むとそのまま赤い閃光でぶち抜いた。

ぶち抜いたといっても銀玉を貫通すると同時に消えるほど短いものだ。

忘れてはいけないのはこの中は銃弾の一発も――ともう説明はいいか。


「コツが分かってきた」


シエラは足で一匹の銀玉を蹴り上げそれを片手で掴むと

例の青い光で塵も残らないほどのレベルで分解してしまった。

メイナとセズクさんも負けない勢いでハンティング。

嗚呼可哀想な銀玉達。

世界で一番怖いハンターに追われる気分は最悪だろう。

調子に乗った三人のおかげで銀玉はとうとう最後の一匹になってしまった。


「ラストー!」


シエラが勢いよく掴みかかる。

銀玉はそれを必死にかわすかわすかわす。


「くそっ、ちょこまかとっ!」


銀玉がはねるはねるはねる。

飛んで回ってはねてかわしてしているうちにとうとう隅に追い詰められてしまった。

それをシエラが右手を伸ばしてひょいと銀玉を掴んだ。


「捕まえ――っと!?」


すると激しく身を捩じらせ抵抗する銀玉。

一瞬捕まえた事で気を緩めたシエラの手から銀玉は飛び出した。

そして俺の足元にぴったりくっつく。

……ん?

俺盾にされてないか?

ぷるぷると小さい振動が伝わってくる。

怖がっているのだ。

そりゃ目の前で次々と仲間を潰されたら怖いわな。


「つかまえたっ!」


メイナが銀玉をがっしりと掴んだ。

そのまま俺から引き剥がそうとするが俺のズボンにぴったりくっついて離れない。


「にーにー!!」


「おい仁、変な声出すな」


「俺じゃねぇ!

 俺だったらキモイだろうが!」


遺憾の意を発動させた仁は真っ赤になって反論してきた。

違うのか?


「……シエラ?」


「僕が出すか」


で、ですよね。


「メイナさん?」


「ち、違うわよ!

 何で私が出さなきゃいけないんだか……」


「おいおいおいおい。

 セズクかよ、おいおい」


「マイハニー、その声が気に入ったならいくらでも」


「いらん」


じゃあ誰なんだよ?


「にーにー!!」


ほら、この声だよ。

耳を澄ませ方向を探る。

どうやら俺の足元――銀玉から出ているようだ。

意外というか、ギャップがひどいというか。

猫に近いんだけど……なんか違うんだよな。

メイナはぐいぐい銀玉を引っ張るが一向に離れる気配がない。

やれやれとさじを投げてしまった。


「離れないねぇ。

 もういいやこのままぶちのめすしかないのかねぇ」


銀玉が震える。

んーよく見たら結構可愛いかもしれない。


「メイナ、ちょっと待て。

 なんかかわいそうになってきた」


「にー……」


なんか癒される声だし。


「え、でも波音……。

 邪魔になるよ?

 いいの?」


「にーにー」


あ、癒される。

かわいい。

俺の感覚がおかしいとかそういうことじゃないと思うのだ。


「ほら、こんなに可愛い声出してるわけだし。

 直径二十センチ前後とお手軽だし」


俺は足に張り付いている銀玉をひょいと摘み上げた。

ぷにぷにしてて軟らかい。

無抵抗なのは覚悟したからなのか

それとも自分が助かったことに安堵しているからなのか。


「結構軽いし。

 決めた、俺こいつ飼うわ」


全員がぎょっとした顔で俺を見た。


「か、飼うの?

 こいつを?」


仁が俺肩に手を置く。

落ち着けと目で訴えてくる。


「うん、丁度ペット欲しかったしな」


「波音、いいか落ち着いて考えろ?

 こいつは噛むんだぞ?

 それにだなぁ……」


「まぁそういわずに、な?

 俺がきっちり面倒見るし。

 そのうち何かの役にたつかもしれないし」


「そーゆー問題じゃない気がするんだがなぁ……」


俺はつまんだままの銀玉を肩に乗せた。

銀玉はそこを自分の場所だと理解したのかぴったりとくっつく。


「にー」


「ほら、可愛く見えて来ただろ?」


俺は最高の笑顔でその場で一回りしてみた。

肩の銀ちゃんがきちんと見えるように。

どや!


「全然。

 波音お前バカじゃないのか」


シエラはそういって肩の銀玉を指ではじいた。


「にっ!」


かぷっと銀玉にかじられる前に指を引っ込める。

さすが最終兵器見事な反射神経である。

名前決めないとな。

そうだなぁ。


「名前……何がいいと思う?」


なぜか若干引いている四人に尋ねてみた。


「銀玉」


「却下」


「ブラクラ」


「なんでブラウザクラッシャーなんだよ。

 何より長いだろうが」


「ハインリヒ四世」


「カノッサの屈辱させんじゃねーよ」


「んー、銀だもんな。

 金属神ルファーとかは?」


唯一まともに考えていたシエラが首をかしげながら言った。

おぉいいなそれは。


「じゃそれで」


「早すぎだよ、ハニー。

 もっと考えたほうが……」


ハインリヒ四世提案者のお前よりマシじゃ。


「よろしくな、ルファー」


「にー!」


かわいいなぁ。

こういうのを究極の癒しというんだろうな。


「って!違う!

 それどころじゃねぇ!!

 装置がヘリで運び出されるんだってのに!!

 何がカノッサの屈辱だ俺のバカ!!」


思い出すと同時に恐怖がにじよってきた。

間に合わなかったらどうする?

もし連合郡に運ばれたりしたら?

一気にまくし立てたのは仕方ないことだっただろう。

何のんびり名前つけていたんだ俺は。

ハインリヒ四世に突っ込んでる場合じゃ無かった。

ちなみにハインリヒ四世は第一期一四二一年のローマ天皇帝だ。

第一期が千五百年で終わったから今から約二千百年前の人である。

世界最初の科学者でもあって……。

あーだからそんな暇じゃないってのに。


「すまんちょっと混乱してた。

 装置がヘリで……」


「波音、二回目だぞ。

 大丈夫か? 

 それにそのことならシンファクシから連絡があって……」


シエラが俺の額に手を当てる。

熱があるかどうか確認でもしているのだろう。


「私たちがちょっと寄り道してきたのはそういうこと。

 今から説明するから聞いて」






               This story continues.

ありがとうございました。

タイトルを見て「新キャラ!?」と思った方。

ごめんなさい。

変わりに波音さんの方に新しくペットが追加されました。

可愛がってくれると嬉しいです。

イメージでは某ゲームのピンクボールみたいな形だったりします。


お気に入りに入れてくれた方、ありがとうございました。

これからもどうかよろしくお願い申し上げます。

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