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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
最終兵器姉妹な季節☆
7/210

なにこの展開

深夜二時。


その日は、冷たい風が吹いていたので

男は窓をしめていた。


都市から離れた山の中にその男の家はあった。

世間の騒がしさから逃げたいという気持ちもあるし

今の日本を支えている財閥の頭という役目と

一娘の父親という役目に疲れを感じてもいたからだ。

だからせめて家ぐらいは…と、森を切り開きバカデカイ城に男は住んでいた。


机の上に広がっているのは今月の決算表だ。

そこの収入の欄を見てみるとダイヤなどを売り払った金が

上乗せされていた。

最近は、これが助けになると、男は唇をすこし緩めた。


男は、腰が痛み出したので伸びをしようと思い椅子を少し引いた。

もう、歳だなぁ、とか思いながら椅子から立とうとして足に力をいれた

そのとき、ギィ…と小さく窓がきしみ冷たい風が吹いてきた。


「おつかれ、今晩の獲物は?」


男は紙に視線を戻し背後から現れた男…

いや、俺に尋ねた。


「なかなかの獲物だったよ」


そういいながら俺ははめていた手袋を外した。

そして上に着た防弾制服を脱ぎ、椅子にかける。

重いけど頑丈なんだ、これが。


「で、物は?」


「これだろ?」


そういいながら俺はポケットのなかから小さな包みを出した。

男はそれを受け取り、中を念入りに確かめはじめた。


「その、お菓子食ってもいいか?」


俺は男の机の上に乗っているお菓子を目ざとく見つけた。


「…うむ。」


「あんがとさん」


ピーナッツ入りクッキーか。

なるほど。


「なかなかうまい、うん」


俺はたちまち一枚を平らげ二枚目に手を伸ばし始めた。

そのあいだ男は袋の中から出てきたダイヤを手の上で転がしながら

念入りに値踏みをして、また袋に入れなおし金庫に放り込んだ。


「紅茶もあるが?」


「俺はそんなに上品にはくえねぇよ」


「そうか」


「うまい、うまい…」


「また一週間後に仕事だ。

 よろしくたのむぞ、波音」


男はそういって、俺のほうを見た。


「わかってるって、鬼灯のおっさん」


俺は、そういった。

鬼灯のおっさんとよぶのが俺だけにゆるされた特権だと思うと

なんだかうれしくなるね。

詩乃という子供がいるとは思えない顔だ。

四八だというのに三十前半にしか見えない。

おっさんが俺の協力者だ。

泥棒だっておっさんの頼みではじめた。


それに、俺は鬼灯のおっさんには逆らえない。

たくさんの借りがあるためだ。


「波音、血が嫌いなお前が殺人をおかしたのか?」


この人の情報網はすごい。

警察ですらベルカ遺跡に関する調査は控えるというのに。

それを聞いたとたん俺の頭に血がのぼり怒りがこみ上げてきた。

そして、いらいらと貧乏ゆすりをはじめた。

やってもいない罪にとわれるほどむかつくものはない。


「俺はやってない、おっさんまでそんなことをいうのか?

 まったく、世も末だな」


「そうカッカするな。ハッピーならそれでいいだろ?」


鬼灯財閥総長ほおずき 鬼灯猛たける はそういいながら

机の中からいかにも高価そうな葉巻を出し、両端を切り落として火をつけた。

そして、一息に葉巻を吸い、咳き込んだ。


「おいおい、大丈夫かよおっさん」


もう、歳なのか・・・?

そんな予感が俺の頭を駆け抜けた。

四八だもんな、おっさん。


「ゴホッゴホッ…げほげほ…」


おいおい、大丈夫かよ。

咳がおさまってから俺は改めて鬼灯のおっさんにはなしかけた。

おっさんは、小さく咳き込んではいたがもう大丈夫なようで再び葉巻を吸い始めた。


「おっさんの情報網はすごいな。

 だがやってもない罪にとわれるほどうざったらしいものはないんだが」


紫煙を吐き出しながら鬼灯のおっさんは言った。


「そりゃそうだな」


鬼灯のおっさんは納得したように首を振る。


「ついでにもうひとついいか?」


俺が願い事を羅列するなんて珍しいと思ったのか鬼灯のおっさんは興味津々に俺の方を向いた。


「できることなら何でもいいが?」


そういってくれた後、俺は覚悟を決めて言うことにした。


「俺の拾った居候も学校に行かしてもいいか?」







「起きろ、波音」


「んにゃ~…後五分…だけ…Zzz…」


「駄目だ。学校に遅れるぞ」


「かまわない、それならそれで・・・Zzz」


少女……まだ名前はない少女はため息をついて右腕を見つめた。

小さい音がして少女の右腕が大口径砲に変わる。

黒光りする大口径砲はまさにグロテスクだった。


「起きろっていってんだろう?」


俺の額に砲口をつけながら少女は言う。


「おはようございます、いや~いい朝だな。

 おっと、学校だな、いかなきゃいけないなぁ♪

 楽しみ楽しみ、らんらん♪」


俺は元気に朝のラジオ体操まで始めた。

ってか、何で朝からこんな起こし方されなきゃいけないんだよ…

俺はそう突っ込んだが大口径砲から普通の腕に戻った少女に

言う勇気はなかった。

俺、へたれ……


「あ、今日からお前も学校くるんだぞ?」


「は?というと?」


驚いた、少女の顔が予想外にかわいらしくて

俺は、そとからみたらにやにやしてるであろう顔で


「ん~、だからね、学校きて学べ、社会の仕組みを。」


こう言った。


「必要ない、僕にはベルカ帝国の知識があるから」


「いいから、用意しろ」


いつもは、少女に勝てない俺だったが

一応主従関係なので少女は逆らえない。

ふふっ、と一生懸命に用意を始めた少女を見ながら

俺は思わず微笑んだ。

だれだ、いまキモイとかいったやつ。


~十五分後~


「か、かわいいじゃねぇか…」


「う、動きにくい…

 非常に動きにくいぞ」


顔をほのかに赤くしながら少女は学生服を着終わり

俺はそれを見て思わず驚嘆した。

可愛いです、はい。

心におもったことが思わずさっき口に出てしまった。

今まで少女はずっと眼帯をしていたり服を変えなかったりで

殺されていたかわいさが制服になることで一気に爆発したみたいだった。

いや、別に俺が制服フェチなわけじゃないんだぞ?


「お、おおお…?」


自分でも何をしゃべっているのかわからない言葉が口から漏れた。

それほど輝いていた。

言い過ぎかもしれないが、事実なのだからしかたない。


「では、いくか学校とやらに……波音?」


急に話しかけられ戸惑った俺。

変な声をまた出してしまった。


「お、おおっうっ?」


「なに口をぱくぱくあけてるんだ?

 みっともない。

 閉じたほうがぞ」


ぱくぱく…

そのときの俺はそとから見ても

空気不足の魚のように口をぱくぱくさせていたに違いない。


てくてくと家を出て学校に向かう。


「おっはよ~はの…ん…?

 んんっ?」


仁が走りながら来てすすっと離れていった。


「おいおいおい!!

 なんで離れるねん!!!」


突っ込みをいれながら俺は仁をひっぱった。

こっちに来た仁はさっきの俺ごとく

口をぱくぱくさせながら少女を見ていた。

なるほどね、さっきの俺はこんな感じだったのか。


「おはよ…?……え?」


綾の反応だ。


「おはよう、はの……えっ?」


詩乃の反応。


「おはよう、は……なんだろう幻覚が」


梶の反応。


「なんだ、幻覚か。

 びっくりしたぁ」


彗人の反応。


「お、俺の嫁がいるっ!!!!!

 結婚しませう!!!!」


古文の用法を使いながら近寄ってきた遼の反応。

ここからが思いやられるなぁ…

俺は誰にもわからないようにため息をついた。

案の条、クラスの男子全員が少女に釘付けである。

そんな視線に耐えられないのか少女は顔を赤くしながら

口を閉じてうつむいていた。


「なんで、みんな僕ばっかり見るのんだよ…恥ずかしい…」


萌えた。

そんな感じの言葉が周りの男子の一部から発せられる。

すると、教室のドアが開き、桐梨先生が入ってきた。


「きり~つ、れい、ちゃくせきっ」


学級委員長である遼が裏返った声で号令をかけた。

そうして、俺と少女の共同高校生活第一日目がスタートした。






               This story continues.

テスト明日です。

やだぁ

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