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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
帝国群な季節☆
69/210

ラスボス

「……で入ったはいいんだ。

 いいんだぞ?」


そうさ、俺らはいつも一つ。

迷ったんだよ!

今回はちゃんとした訳があるんだ。

聞いてくれ。

右へ行ったり左へ行ったりとうろちょろした結果だ。

仁のPC見取り図も間違いだらけで役にたたないし……。


「ここ右じゃないかな?」


セズクが指差した方向は多分さっき行ったばかりだと思う。

もうお前は黙ってろと。


「シエラ、パンソロジーレーダーは全開なんだろ?

 それらしい部屋はないか?」


「んー……ない。

 どの部屋も全部普通の部屋」


どういうことなんだろうか。

少し意味が分からない。

シンファクシの情報が間違っていたのか?

そして今だから言うが俺はこの地下の湿っぽい、というか

閉塞感が大嫌いなんだ。

地下にもぐるたびにろくなことにあわないからな。

シエラのことしかり、メイナのことしかり。

ハイライトは地下といえばいいのか分からんが。

あれもまたしかりだ。


「シエラ、パンソロジーを妨害する何かが最深部の部屋から出てるみたい。

 何かよく分からないけど……」


メイナは目をつぶりながらシエラにそう教えた。

おいおいおい、それだろ。

お前らみたいな超古代文明の最終兵器の能力を

殺ぐものっていったら同じ超古代文明のものとしか考えられないだろ。


「メイナ……それだろ……。

 間違いなく……」


俺は全身脱力しながらメイナに教えてやった。

論理的に考えるんだ、お前ら二人。


「……え?

 なんで……?」


「いや……ね?

 だからね……。

 (上記に示したのと同じこと言いました)」


「あっ、そっか。

 私たちのこの能力を殺ぐ事が出来るのって言ったらそれしかないもんね!」


はぁ……。

もうこいつらはどうしてこうおばかなんだろう。

おばかん……。


「となると、最深部へレッツゴーだね?」


セズクさんがわくわくした表情で手をこすり合わせた。

仁は目頭を押さえつつ考えごとの体勢になる。

何かよからぬことでも考えているんじゃないだろうな。


「……大体最深部って言ったら

 ゲーム上ではボスが待っていたりするんだよな」


「おいおい、仁。

 そういうこと言うとリアルにそういう展開になるからやめろ。

 変なフラグたてんな。

 まぁ今回の難易度はイージーだと思うけどな」


俺は天井を仰いで腰を伸ばした。

歩き続けていたので痛いんだわ、これが。

運動不足、というか一週間ぶっ続けで寝ていたのも影響しているかもしれない。


「まぁありえない話でもないと思うけどね……」


仁は腕のPCを外すとポケットにしまいこんだ。

使い物にならないなら腕時計ぐらいにしか利用価値がない。

途中までは鉄製だった壁は気がついたらコンクリート製に変わっていた。

それにせっかく連合郡兵士に着替えたというのに誰にも会わないのはなぜだ?

そう考えながら右へと角を曲がったときだった。


「あっ!

 痛たた……。

 ……っ!

 ごめんなさい!」


誰かと思いっきりぶつかってしまったのだ。

ちなみに相手はパンを咥えてはいなかった。

当然女性は尻餅を付いて転ぶ。

俺のほうが背が高い&質量があるからな。


「こ、こちらこそごめんなさい!」


女性はビックリするほど早く起き上がり頭を下げた。

俺も思わず謝る。

頭は下げなかった。

下げる暇がなかった。

謝罪をしているというのに頭を下げないというなんとも奇怪な姿勢のまま固まっていると

金髪の女性が下げていた頭をゆっくりと上げた。


「ごめんなさい、私の不注意でした」


「え!?」


思わず息を呑んだ。

顔を上げてにっこりと微笑んだ女性。

俺の彼女さんのアリル・ラミエガロイド・ナスカイアさんが立っておりました。

タルワナルカ家の末裔。

そしてあの筋肉親父の娘。

仁、おい。

おい、仁、見ているか?

お前が変なフラグ立てたからだからな。

ラスボス出てきたぞ。

難易度がスーパーハードだったぞ。

いや、見方によっちゃウルトラハードだ。


「…………波音君?

 じゃ……ないですよね?」


「えっと……あ……」


落ち着け、落ち着くんだ。

動揺すると逆に疑われる。


「先、行ってるぞ……」


ボソボソと俺の耳元で仁が呟き

まだ返事を返していないというのに仁を筆頭にみんなが俺を見放して逃げていく。

薄情者。

………。

とりあえず目の前のラスボスを何とかせねば。


「……お嬢さん何をおっしゃられているのか……」


筋肉親父は確かすごい高い階級だったな。

敬語でしゃべっておけば言葉面ではごまかせるだろう。

それに今の俺の声は三十代のおっさん声。

ばれる確率は多分一割程度。

このまま押し切れるだろう。


「本当に波音君じゃないんですか?

 確かに少し老けて見えますけど……」


「人違いですよ。

 第一、波音……でしたか?

 どちらなのか検討も付きません。

 名前的に考えて日本人でしょうが……」


上っ面で冷静を装っているように見えるだろ?

でも俺は今心臓ばっくばく。

汗も少し流れてきた。

このしわがマジックだとばれたら……。

少し距離を置こうと思ってアリルが余所見をしている瞬間を計らって二歩ほど後ろへ下がった。

だがその少しの動きを見過ごすわけ無く


「どうして逃げるんですか?」


指摘された。


「人違いだって、お嬢さん」


にっこり笑ってやった。

それを見たアリルは顔を曇らせる。


「……波音君大丈夫かな……。

 私、会いたくなりすぎて幻覚でも見ちゃったのかも。

 ごめんなさいね、少尉さん」


今更だが肩の紋章は少尉なんだ。

ちなみに仁たちは一等兵だったりする。

それはおいといてアリルの言葉を聴いた瞬間

胸の奥がちくっとした。

ここでマジックをごしごし擦り落として正体を現したいのは山々だが……。


「その波音って言うのは彼氏ですか?」


ついでだしいつも聞けないことを聞いてやるとしようか。

アリルの中の俺は一体どんな印象なんだろうか。


「そうなんですけど……。

 帝国郡の爆撃のときに離れ離れになってしまって……」


そういえばあのときにかっこよく(※要出典)空に消えたはいいが

なんやかんだで忙しくてメールの一通もしてなかったっけ。

無駄な心配をかけたな。

この仕事が終わったらメール入れといてやろう。


「波音君は天然が入ってて、かっこいいというよりは可愛い彼氏なんです。

 顔に似合わず活発なんですよ。

 そしてかなりのバカなんです。

 こんなに心配してるのにメールの一つもしてくれない」


はっは……テンションが上がるような下がるような……。

どっちにしろ俺は顔が赤くなるのを抑えることは出来なかった。

恥ずかしいったらありゃしない。

メールはこの仕事が終わったら絶対にする。

今、アリルの言葉を聞いて硬く決心した。


「そ、そうなんですか……」


顔が赤いのを見られないようにそっぽを向いてそう返しておいた。

地下の淀んだ空気がすばらしく澄み渡ったように思えてきた。

母ちゃん、俺明日もがんばれるよ。

見えないように小さくガッツポーズ。


「それでは、お嬢さん。

 私はコレで……」


「あ、はい」


ビシッと敬礼を決める。

そのまま回れ右をして一刻も早く仁を追いかけるために駆け足の体勢に入った。


「アリルー?アリルー?

 どこにいったのぉ?」


おそらくマダムだろう。

あののんびりとした声はそれ以外に考えられない。


「さようならを言った直後になんですが

 お嬢さんどうしてここに?」


今思えば一番初めにこのことを聞くべきじゃなかったんじゃないだろうか。

動揺しまくっていたおかげで初歩的なことを忘れていた。


「私ですか?

 私はお父様とお母様についてきたんですよ?

 ――あれ?

 聞いていませんか?

 まぁ別にかまいませんけど。

 本当はこんな所に来たくなかったんですけど……。

 しみったれた空気がちょっと嫌過ぎるので外の空気でも吸おうと思って歩いていたところで……」


アリルは裾に残っていたゴミを払った。

そして髪の毛のゴムをもう一度ぎゅっと締めなおす。

綺麗な髪の毛だ。

髪フェチじゃないぞ。


「少尉とぶつかったわけです。

 暇だったから散策しようと思ってうろついてみたのですが

 一番奥の部屋のものをヘリで輸送するとかなんとかで……」


!!!!!

なんだって!?


「ちょ、ちょっと待った!

 ヘリで輸送!?」


俺は気がついたら大声を出していた。

だとしたら計画の大幅な修正は必須……。

いやもしかしたら奪うことすら出来ないかもしれない。

声が三十代のおっさんから地に変わったことなんて気がつかなかった。


「えっ? 

 さ、最深部のものをヘリで……」


なんてこった……。

今すぐ仁達を呼び戻さないと……。


「じゃあ、お嬢さん私はコレで……!」


非常にまずい展開だ。

まさか俺達がここに来ることを分かっていたんじゃないだろうな。

その可能性はゼロに近いだろうが……。

走り出そうとした俺の腕をアリルが掴んだ。


「な、どうしたんですか?」


「―――ですね?」


「は?」


「波音君ですね?」


今「は?」って言ってみて気がついた。

俺、声が地に戻ってる。


「ち、違うッ!」


「違いませんよ!

 声が波音君ですっ!!!

 どうしてあなたがここにいるんです!?

 しかもその変なマジックのしわなんですか!?

 それに、生きていたのならどうしてメールしてくれなかったんですかっ!!」






               This story continues.

うひゃぁあっ。

アリルさん怖いですね。


いやはやなんともまぁ……。

知り合いの女の子もこんな感じなんですよ。

熱いというか……ねぇ。


それでは、ありがとうございました。

できたてほやほやをお届けしました。

また来週どうかお願いします。


P,S

お気に入りに登録してくれた方ありがとうございます。

これでまたがんばれます!

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