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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
帝国群な季節☆
66/210

量産

小鳥が鳴いている。

のんびりとした良い村だ。

待機して五分しかたっていないというのにもう眠い。

お見事。


仁に欠伸をしながらたずねる。


「穏やかな場所だよな……。

 今から起こることを考えても……」


申し訳ない程度につけられたラジオからクラシックが流れ出した。

甲高い外国語の発音がさらに眠気を刺激する。


「あぁ……確かに」


仁はPCを閉じ、息を吐いた。


「眠くね?」


「眠い。

 間違いなく」


「この仕事終わったらここに遊びに来たいよな。

 ちょーどお昼ね時なんだしよ」


「……そうだな。

 また来たいことは確かだな」


大きな欠伸をして仁は目じりに涙をためた。

時計を見る。

後二十分間も何をしろというのか。


「あーっ……。

 んっ……あー……」


仕方ないから声合わせでも。

三十代のおっさんの声ってどんなもんなんだ?


「あ……あ……あ……」


「あ、それぐらいだな。

 波音、ストップだ、それぐらいだって」


「あ……あ……はい了解」


声でばれるとみっともないしな。

顔に似合わず声が子供だったら……もうげんなりだよな。

人それぞれだけど俺は嫌だ。

顔がダンディなら声もダンディであるべきだ。

そう思う。

それにこの技――というか周りの奴らが言うとおり

曲芸はこういうことぐらいにしか使えないからな。


「なーなー、波音。

 まだなのか?」


荷台から運転席へつながっている窓からシエラが顔を出した。

左目に黒い多機能性眼帯がついている。

久しぶりに見る、眼帯シエラ。

……ふむ、悪くない。


「まだまだだよ、後二十分もあるからな。

 トランプでもするか?」


「トランプ……?

 あぁ、詩乃から教えてもらった記憶がある。

 もって来たの?」


シエラが暇を潰せるとでも思ったのか嬉しそうに手と手を合わせた。

そのシエラの前に親指を突き出して


「ない」


俺はキリッと締めた。


「ないのかよ!」


仁が非常にいいタイミングで突っ込む。

いいぞ、仁。


「……波音……」


笑う俺達の声に混ざってシエラの落ち込んだ声が響いた。


「ないなら何で言ったの……」


そっぽを向いて膨れっ面だ。

すねたな。


「悪い悪い。

 飴あげるから許してくれ、な?」


テンションが少し高いのはデフォだ。

膨れっ面のシエラに飴を渡す。


「別にいらないけど……。

 もらうに越したことはないな」


とか良いながら嬉しそうに受け取るシエラを横目に

大きな地図を拡げ眺める。

ここから約一時間の所にある連合郡倉庫。

その中にあるもの……か。

車列は情報によると五台で護衛はなし。

人数は多く見積もって十人程度。

あの三人に任せれば十分に対処できる人数だ。

やっぱり問題はどうやって装置を運び出すか。

シンファクシ曰く大きさすら定かでないものをだ。


「おい、波音来たぞ!!」


仁の声に頭を叩かれ思考を中断した。

土埃を纏いながら車列がやってきている。

数は……一……二……五台。

計画通りの数だ。

目の前の道をトラックが次々と通り過ぎてゆく。

土埃でとても見えにくいが、ひときわ濃い影が通るのは何とか分かった。

一台……二台……三台……五台目!

今だ。

ギアをOMに入れハンドル横の発射ボタンを押した。

トラックの一部が開き、鉄のアームに捕われたミサイルが姿をあらわす。

ミサイルの後部に火が灯り、鉄のアームが捕らえるのを放棄すると白い軌跡を残して

オクトパスミサイルが車列最後尾……五台目のトラックに突き刺さった。

土埃のひどさで懸念されていた他車両に気がつかれるという事態は回避。

電気機器がショートして火花を吹き上げる五台目に荷台から出たシエラ達はすかさず襲い掛かった。

あっという間に土埃にまぎれて運転手達をのしてしまう。

人間と兵器の違いはこういうところで現れるのだろうなと変に感心してしまった。


「後で行く!」


メイナが手を振り成功を伝えると


「仁、始めるぞ。

 ショータイムだ」


俺はギアをDにもって行きアクセルを踏んだ。

車輪がきしみ脱落した五台目のポジションに滑り込む。

そして四台目の後ろについた瞬間に視界が土埃で遮られた。

なんて濃い土埃だよ。

危ない運転になりそうだ……。

四台目がかすかにしか見えないほど濃い。

と、ここでふわっと後ろの荷台に三つの風が入ってきたのを感じた。


「処理終わったよ」


メイナが荷台の窓から俺の肩を叩く。


「ん、ごくろうさん」


処理といっても殺しはしてないぜ?

トラックをばらばらにしてもらったんだ。

これで追っては来れないし倉庫に連絡が行くこともないだろう。

一時間のドライブ――がんばりますか。

ラジオのボリュームを捻り更に音を大きくする。

クラシックから激しいロックに曲は変わっていた。

蝉の声がこんなに涼しいというのに聞えてくる。

エアコンなんてしゃれたものがついていないから窓を開けているからかもしれないが。

クマゼミだろうか。

シャーシャーと空気を震わせている。

木々の隙間からこぼれた日光が道を点々と照らしている。

さっきまではひどかった土埃は森の奥へと進むにつれ道が湿ってきたのか収まりつつあった。

時速は約四十キロをずっとキープ。

森のトンネルが長く長く伸びている。


「このままずっと一本道か?

 どこかで曲がったりしないのか?」


四台目のトラックのケツを追いかけるのにいい加減飽きてきた俺は仁に話しかけた。


「んー、地図を見ている限りではそんな洒落たイベントはどこにもないな。

 このままずっと一本道だ。

 洞窟の中通るからそれをとりあえずの楽しみにしておけばいいんじゃね?」


洞窟……ねぇ。

鍾乳石とか垂れ下がっていたらそりゃ最高だな。

黒々と道の前に口を開けるトンネル発見。

あれか、洞窟は。

車列はそのまま洞窟の中に入っていった。

自動でヘッドライトが点灯し、暗い道を照らす。

道なりにそって進むこと約十分。

いきなり大きな空洞が目の前に開けた。

人工の光が目にまぶしい。

今までの自然物のような場所ではなく人工的な空間。

まるで地下遺跡のような……。

車を止めて確認したかったがここで怪しまれるわけにはいかない。


「っ!?」


そのときだ、俺の目が蛍光灯下に眠るものを見つけてしまったのは。

あの形……大きさ。

見たことがある。

巨大な円盤型の超兵器。

第四超空制圧艦隊の旗艦『円盤型超空巡洋戦艦メガデデス』――!

おそらくメガデデスがネームシップだからメガデデス級戦艦とでも言えば良いのだろうか。

それが四つ。

空洞の中で所々五千年の風化の傷を治す修理の火花をあげながら眠っていた。

約三百メートルほどの巨大な機体が取り付けられた蛍光灯からの光を

その巨体をもって跳ね返し鈍く鋼鉄色に光っている。

言葉を失い、固まった首を無理やり四台目のケツに戻した。


「何だ、あの戦艦は……」


仁はメガデデス級戦艦の大きさに圧倒されているようだった。

声が震え、顔が恐怖の色に染まっている。


「――ベルカの超兵器だよ。

 あいつらこんな所でこんなものを……」


仁にカメラを渡し、写真を撮って衛星経由で帝国郡本部に送ってもらう。

今から行くところにももしかしたらこんなものが……。

期待とは正反対の理由で上がる心拍数。

メガデデス級戦艦はやがて見えなくなり車列は洞窟から出て行った。






               This story continues.

ありがとうございました。

そうなんです、えぇ。

メガデデスまだ出番あったんだと。


びっくりですよ、もう。

遅くなり申し訳ないです。


学校が長引きまして。

模試があったので……。

それではここまで読んでいただきありがとうございました。

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