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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
超兵器な季節☆
52/210

にっぷり

巨体に大穴を空けたメガデデスは膝を屈した死神だった。

体のあちこちから火を放ち、墜落。

ばらばらに分解。

空中で火の玉となり霧散した。


朝日だけが油の浮いた海を赤く浮かび上がらせ

一晩で大量の命を飲み込んだ海は大量の破片などと静かに揺れている。

メガデデスを散らしたあのレーザーが再び来るかと警戒したが二度と空が青色に光ることはなかった。

ずっと上を見ていたせいか首が痛い。


「あのレーザーが……また来たってことは……。

 もう一隻存在するってことだよな……?

 しかもメガデデスを狙ったってことは……」


味方?


「分からないけど……」


艦長は肩をすくめてうつむいた。


「レルバル、シエラは?」


思い出したかのように俺に聞いた艦長の言葉ではっとした。


「シエラは……?

 まさか一緒に……」


悲鳴を上げる筋肉を無視してあわてて空を見上げる。

そこには空に浮いているシエラがの姿が……と続けたい所だが姿は見えない。

いない、いないのだ。


「嘘だろ?

 おい、シエラ!」


また不安が胸の奥から湧き上がってきた。

泣きそうになったその時、足元から声が聞えてきた。


「う~、冷たい……」


「「あ、いた」」(不本意ながらセズクと被った)


――ただ単に海に落ちていただけのようだ。

長い髪がびちゃびちゃになって頬に張り付いている。

額と右腕から流れ出ていた血は止まっており傷は綺麗に無くなっていた。


「眼帯壊れてないか……?」


「防水だから大丈夫」


「そ、そうか」


乗組員と短い会話を交わした後俺のところへとことこと歩いてきた。


「まったく、今夜は最低の日だったねぇ。

 メガデデスみたいなヘヴィな物と戦うことになるなんてさ」


メイナがふぅとため息をつき


「ちょっと待って。

 あいつと戦ったのは僕じゃん?」


その発言にシエラが少し噛み付いた。

二人のむーとした雰囲気の中にセズクは


「まぁまぁ、とりあえず難は去ったんです。

 家に帰ってゆっくり休みましょう。

 ッてことでマイハニー、一緒にかえブハッ!!――――ゲフン!!」


メイナのすかさず放たれた回し蹴りで俺に抱きつこうとしたセズクの体が艦橋にめり込む。

あの鋼鉄の塊の中にめり込むセズクすげぇ。

いやメイナの蹴りか?蹴りなのか?

それよか蹴りで一回ブハッって言った後めり込んでゲフンって言ったな。

二段階構造の悲鳴だな。


「艦長は今からどうするんだ?」


俺はえぐれた艦首を見て、ぽっかりなくなったAGS砲台を見て

撃ち尽くしたVLSを見て無くなったマストとレーダー板とを見渡した。

どう少なく見積もっても中破、普通に見積もったら大破だ。


「この艦で一番近い硫黄島の帝国郡の隠しドッグに行こうと思う。

 そこで応急修理でも受けて帝国郡本部まで帰るとするよ」


若い艦長は自分の艦の痛々しい姿をみて苦笑いするとめり込んでいるセズクに目を向けた。

めり込んだ艦橋を少し爆破して出てきたセズクに黙ってパンチを一発。


「な、何をするっ!」


「黙れ、これ以上艦を壊すな、アホ」


とまぁ、こんないざこざ(?)はあったが俺達四人はメモリーチップを持って家に帰ることにした。

あんなことがあったけど両手両足、五体満足で帰れるとは神も寛大になったものだ。


「ありがとう、シエラ、メイナ。

 お前達二人のおかげでメガデデスを撃破して戦友の仇を取ることが出来た。

 本当にありがとう」


艦長が二人にお礼をいって頭を下げる。


「おっとこっちのほうが軍人として敬意を表せるかな?」


下げた頭を上げ帽子をしっかりかぶって敬礼する。

シエラ、メイナの二人も艦長に敬礼を返し俺の両腕を掴んだ。


「出来ればまた遊びに来てくれ、この艦に。

 シエラ、メイナ、セズクと……えーと?」


「……波音だよ、ちくしょう」


「そう、波音!

 海軍さんカレーぐらいなら出せるから。

 この艦――リーシャルも喜ぶだろう。

 命の恩人だからな」


いい加減に覚えてくれよ、と一人ため息をつく俺。

波音のたった二文字だぜ?

くよくよするなって波音いいことあるさ。

そうだよな、そうだよな!

ありがとう俺の心の中の俺!


……一人芝居ってむなしいものだな。


「じゃ!」


四人で船員と艦長に別れを告げると同時に足が甲板を離れた。

あっという間に小指の先ほどの大きさになるリーシャル。

白いを青に刻みつけ先へ先へと進んでいく。

青と青との間に挟まれた鋼鉄の城。

また会えるといいな。


「大切なものが消えるとき

 三つの死は姿をあらわす。

 死は力を使い地上を無に戻す。

 死は鬼神となり

 恐怖の中で消えていく。

 大切なものを失った悲しみと共に。

 ――この伝説を思い出しちまったよ。

 この続きはもしかしたらあの最終兵器のことが書かれているのかもな」


俺達が青空の向こうに見えなくなってもなお、敬礼を続けていた艦長はそう副長に呟いたらしい。






「飯食って学校行くよ!」


「嫌だ、絶対に何としてでも休む!」


「マイハニー、頼むよ。

 学校は行かなきゃ駄目なものなんだよ?」


「うっせ、疲れてるんだ。

 放っておいてくれよ頼むから」


とはいってもVSメガデデスの時は見上げていただけなんだけどな。

でも寝てないことは確かだ。

今は朝五時ちょい。

このまま学校に行ったところで即撃沈するのは目に見えている。

それにこの暑さ。

まだ九月だというのになんて暑さだよ。


「波音ー?

 いるかー?

 いたら返事しろー、おーい」


クソ暑い&眠いってのに朝早くから訪問者ありけり。

この声は鬼灯のおっさんの声だ。


「セズク、これよろしく。 

 メモリーチップ渡しといて」


そういって超光学記憶媒体を渡す。

そして布団にもぐりこもうと膝を曲げたところでおっさんが


「お、いるじゃないかー!

 なんで返事してくれなかったんだよ、HAHAHA」


ドアを蹴り開けて入ってきやがった。

布団にもぐりこむ姿勢のまま固まる俺。

なんなんだよ、どいつもこいつも俺が寝るのを妨げやがって。

ため息が出るのをなんとかこらえて膝を伸ばして立ち上がる。

そしておっさんにむかって笑顔を作った。

それに少し安心したのかおっさん口がマシンガンのように言葉を放ち始めた。

俺被弾。


「まさかメガデデスに襲われるなんてなぁ、はっはっは……。

 大丈夫か?

 まぁ大丈夫だったからここにいるんだな、はっはっは!

 そういえば帝国郡から電報が入ってるぞ。

 『最新鋭試作ミサイル艦リーシャルを無事に守りきり

  メガデデス破壊という快挙、などとともにハイライトとの帝国郡の支援。

  それらの功績により永久波音を少佐に。

  シエラ、メイナ両は少佐から大佐に二階級特進。

  セズクは後で顔出せ、コラ』

 だそうだ。

 いきなり少佐とかって階級はすごいな、波音。

 なんでお前が少佐なんだろうな」


俺は別に階級なんてどうでもいいんだけどな。

シエラとかメイナは名誉の戦死と同じぐらいすごい昇進したな。

そしてセズクの扱いがGJすぎる件について。


「『セズクは後で顔出せ、コラ』ですか。

 なんで僕だけそんな扱いなんだろうね」


俺を――そうだな。

まるで小さな子猫が餌をねだるような特有のあの目だ。

それで俺に眼差しを注ぐ。

助け舟とかは一切出すつもりはない。

悪いな助け港はいま台風に襲われているんだ。


「とにかくお前ら三人はしっかり休め。

 今日は学校休んでいいからな。

 じゃあセズク、行こうか」


もうぐったりと疲れきっている俺達とは真逆に

水を得た魚のようにホクホクしている鬼灯のおっさん。

メモリーチップ――もとい超光学記憶媒体を手に入れることが出来たのがそんなに嬉しいのか。


「え、僕も休みた……え?

 駄目……?え?ちょっ……え?」


そして鬼灯のおっさんにずるずると引きずられていく哀れな犠牲者。

うるさかった家の中が嘘のように静かになりほっと息をついた。

海水でベタベタしていた服を脱いで風呂にダイブ。

たっぷり三十分は入った後、おそらくニーズ(俺の召使い的な例の男の人)が

洗濯しておいてくれたのであろうパジャマを着て布団に滑り込む。

ふんわりした二つの布がこの時はほんのり暖かく、気持ちがよかった。






「うーん」と目を覚ましたのが午後二時。

台所で肉……だろうか?

それを焼いているこうばしい香りがする。


「おはよ……」


間違いなく寝癖が付きまくっている頭の端を押さえ台所のドアを開ける。


「おはよう、マイハニー。

 もうおそよう

 ご飯作っておいたよ、ステーキだよ、食べなさい、早く」


せかすなって。


「うん……。

 というかセズクお帰り。

 色々言われたんでしょ?」


「まぁ普通に昇進のお知らせだけだったよ?

 しっかし寝ぼけまなこの波音もかわいいなぁ。

 食べてしまいたいよ、もちろんそういう意味で」


パンチ。

セズク、後ろに体をそらしてかわす。

なん……だと?


「甘い、甘い波音。

 僕は愛の拳がいつ飛んでくるかなんてちょちょいのちょいで分かるのさ」


そうですか。

あくびをした後席につくと『I want to eat you』と書かれたピンクのエプロンを

肩からかけたセズクがステーキと白いご飯を持ってきてくれた。

エプロンの言葉が見るたびに変わっている気がするんだが突っ込んだら負けだと思ってる。

そして箸を持ってまだ出ようとするあくびをかみ殺しステーキに文字通り食ってかかる。

口に入れようとステーキ片を箸でつまむ。


「食え食え食え食え食え食え」


「…………………………」


えいっ。


『ぷすっ』


「&#%$Ωζ※★!?!?」


声にならない声を上げて目を押さえて転げまわるセズク。


「うるせぇ」


俺はセズクの両目にぷすっと刺した箸を流しに投げ込み新しい箸を取り出す。

どうでもいいけどたれがついたまま刺した。

ステーキを食べる前に気を取り直すため水を飲むために手を伸ばす。

既に復活済みでそれに気がついたセズクがコップを取ってくれた。


「飲め飲め飲め飲め飲め飲め」


「…………………………」


えいっ。


『にっぷ』


「&#%$Ωζ※★!?!?」


声にならない声を上げて目を押さえて転げまわるセズク。


「うるせぇ」


俺はセズクの両目ににっぷと刺した箸を流しに投げ込み新しい箸を取り出す。

ふとステーキに胡椒がかかっていないことに気がついた俺は胡椒を取るために手を伸ばす。

それに気がついた右目を抑えているセズクが胡椒入れを持ってきてくれた。


「かけろかけろかけろかけろかけろかけろ」


「………………はぁ………」


えいっ。


『しゃくにっ』


「&#%$Ωζ※★!?!?」


声にならない声を上げて目を押さえて転げまわるセズク。


「うるせぇ」


俺はセズクの両目にしゃくにっと刺した箸を流しに投げ込み新しい箸を取り出す。

ちなみにステーキの中に怪しい薬等は一切入っていなかった。

普通においしかった。


「た、ただ……熱々を早く食べて欲しかった……だけなのに……」


目を押さえながら涙ながらに俺に訴えてくる。

うん、ありがとうその気持ちは大変嬉しい。

でも変なプレッシャーをかけるのはやめてほしいな。






               This story continues.

読んでいただきありがとうございました。

できたてほくほくをお届けいたします。

この小説は120%の愛と勇気とやさしさで出来ています。

ご提供は私、ネシャルダオエルでした。


とふざけすぎましたかねw

ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。

とってもとっても嬉しいですv

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