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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
最終兵器姉妹な季節☆
5/210

守るべき目標

朝。



普通なら鳥が鳴き気持ちのいい朝になるはずだった。

だが、全部ぶち壊しだ。

こいつのせいで。


「…………」


こっちをずっと見つめる右の赤紫の瞳。

そして、ずっと見つめてくる左の黒い眼帯。


俺は、一般高校生として充実した生活を送っていたはずだった。

だが、仁の遊びに付き合おうとベルカの遺跡に忍び込もうとしたとき

こいつに(少女)に殺されかけたあげく肩を撃たれ大量出血。

でも、なんとか説得してこいつの使命(ベルカを守る)はもう無駄だということを伝えた。


そこまではいい。


問題点はここからなのだ。

朝起きたら、傷は全快していて夢を見ていたとおもって勢いよくおきあがろうとした。

だが、昨日の「元凶」がそばにいたのだ。


「な、な、な…」


少女は俺を上から見下している。

ってか俺のベットの上に四つんばいになって少女の顔のすぐ下に

俺の顔がある。

他人からみたらいまからすべきことをしようとしているカップルにしか見えない。

だが、俺達はそんな関係じゃない。

残念ながら。

非常に残念ながら。

あぁ、残念ながら。

くどいってか。


「………」


「あ、あのさ……どいてくれないか…?」


「…………」


「聞いてるのか?おい。」


「……………」


悟った。

こいつになにいっても無駄だ。

しかもいつまでも少女と呼んでいては言いにくくてしかたない。

そんなわけで、俺はこいつの名前を考えようとしたが・・・


「おはようございます」


「はい?」


「おはようございます」


え?

いまこいつなんていった?

おはようございます!?


「え……えっ!?」


このときの俺の顔は他人からみても明らかに青かったであろう。

常人なら誰もが驚くに違いないこのシュチュレーション。

気まずい沈黙の時間が流れる。

……俺なんかいっちゃいけないこと言ったか


すると少女はもう一度繰り返した。


「おはようごじゃいます。」


いま……

噛んだよな?

そうおもって少女を見ると自分が噛んだことにいまさら気がついたのか

かなり顔が赤くなっている。


ピピピピ!!


っと、音が鳴る。

八時である。

学校遅刻ギリギリ範囲である。

だが…


「ど、どいてくれないか?」


少女がどく気配はない。

そうしている押しのけてもいいが昨日みたいに殺されそうになっても困る。

うちに、八時十分、二十分となり俺の遅刻が決定した。

やってしまった。

高校生活初の遅刻である。


(今日、学校休むか……)


そんなことを頭の隅で考えていると、少女が不意にクスリ、と笑ってどいてくれた。

意味が分からない、初めからどいてくれればいいものを。

それだけ俺が考えている顔がおもしろかっただろうか。

ってか、笑うまでお前はどく気がなかったのか。


「で、お前の名前は?」


ベッドからようやく起き上がり、学校へのダイヤルを回す。

そして出てきた事務員さんに休むことを伝え、電話を切った。

朝食を貪り食い、再び自室のベッドに腰掛けたときに俺は思い切って聞いてみた。


「僕はF・D。

 名前などない。

 僕にあたえられたのは、父がくれたこのアルファベット二文字だ」


驚いたことに少女はしゃべった。

すらすらと、日本語をだ。

しかも一人称が「僕」?

お前、女じゃないのか?

まぁ、俺はこういう僕っ娘が好きだから……

と、おいといて少女はベルカ語ではなく日本語をしゃべった。

いつの間に取得したんだろう、と周りを見渡す。

案の定俺の部屋は本で荒れていた。

夜中のうちに読み漁って取得したのだろうか。

次は、ベルカ遺跡から出てきたわけを知りたくて、聞いてみることにした。

好奇心は大切だからな。


「なんで、お前、遺跡からでてきたんだよ?」


すると少女はしばらくためらったそぶりを見せた後、人生の岐路にたたされた大学生のような顔をして

思い切ったように言った。


「僕は…僕は…ベルカ帝国を守るためだけにつくらた最終兵器なんだ。

 二五三一型バトルヒューマン。

 通称、大量殺戮破壊最終兵器生命体」 


殺戮やらなんやら知らないが、なんかすごいことを聞いてしまった気がする。

だが、こうやって俺の目の前で一生懸命になって話す少女を見ていると普通の人間にしか見えないのだがな。

だが、少女がようやくまともに口を開いたことに安堵した俺はなぜここにいるのかを聞いてみることにした。


「それは、僕がお前をここまで運んできたからだ。

 きのう、僕にボコボコにやられたお前は大量出血で命があぶないところだった。

 だが、銃創ごときの傷なら僕の力ですぐ直すことができる。

 国を守るという使命を失った僕は、目の前にいたベルカ人、つまりお前だな、の命を救うために治療し

 だっこしてここまでつれてきた。 

 国を守るにはまず人を守らないと……と思っただけだ。

 以上」


だっこって…

え?

抱っこ…?

まぁ、おいといて…


「じゃあ、遺跡に帰れよ。

 邪魔なだけだからな」


俺はそう言おうとした。

だが、少女の深刻そうな顔をみるとそんなことも言おうにもいえなくなってしまった。

とても、悲しそうな顔をしていたからだ。

いままで信じていたものに裏切られたそんな感じの顔だ。


「帰りたいのにかえる場所がないんだ。

 だから、お前に頼みがあって朝までずっとここでお前が起きるのを待っていた」


俺に向かって少女は口を開いた。

顔を下に向け、かすかに頬を紅くして少女は言った。


「僕の所有者になってくれないか?」


その言葉は俺の頭のなかでこだました。

わんわんと、何回もやかましくこだました。


「え…?お前いったい何いって…?」


まぁ、普通の男子ならそういうよな。

普通なら。

遼みたいな変態だったら即効OKだろうが、俺は違う。

普通の男子だからな。

長い沈黙を破るように、少女は理由を言い始めた。


「僕は使命を持たないとここに存在する意味がない。

 だから、お前を守るという使命ができることによって僕はこの世に生きることができる」


さっきの言葉で混乱していた俺に止めをさす気か、お前は。


「つまり……?」


「恥ずかしいのにまだ言わせるのか?

 僕のご主人になれっていってるんだっ!!」


少女の顔がたちまち紅葉のような真っ赤に染まっていく。

かなりの勇気が必要だったに違いない。

意外と、恥ずかしがりやのようだ。


「お、おぉ…」


ひとまず俺はそう答えるしかなかった。

そして、思い出したように少女に言った。


「後、俺の名前は波音だからな。

 次からはそうよんでくれよな」


そのあと、少女が何回も波音、波音と呟きまくっていたのは

言うまでもないだろう。

そこまで、一生懸命に覚えんでも……

あぁ、汗が出てきた。





太陽がガンガン昇ってガンガン沈んでいく。


そういえば、家族がみんな消えたのもこんな夕日のことだった。

土曜日の夕方だった。

俺の家族四人は遊園地から帰る道の途中、飲酒運転のトラックに

真正面からぶつかられたのだ。

両親、姉ともに即死。

何とか命を取り留めた俺も…


「おい!!こら波音!!!」


どたどたどた。

がん。


「いてぇよ!!なんでなぐるんだごらぁ!!」


仁だった。

息を切らしている。

どうやら学校からはしって帰ってきたらしい。


「てめぇ、なんでやすんだんだ!!

 俺ひとり今日一日さみしくPCいじってたんだぞ!!」


「勉強しろよ。

 それに詩乃とか遼もいるだろうが」


と、そんな感じで一通りグチを言い終わると、仁は手招きした。

「こっちこい」という合図らしい。

それにしたがってついていくと玄関で仁が話し始めた。


「どうするんだ、あの娘」


「正直、俺もそれに困っていたんだよ。

 ってか、なんでお前が俺の家に俺をおくっていってくれなかったんだよ」


「いや、だって、あの娘が自分がやるといって聞かないもんだから…」


仁がしどろもどろになっていっている間に俺の食事を教えておこう。

丁度ご飯時だからな。

俺の食事などすべて同級生で幼馴染の綾や詩乃に恵んでもらっている。

この二人はすごいお金持ちで俺が通っている学校もこの二人の一族が経営していると聞く。

たまたま、親父がこの二人の一族の同級生でかなり仲がよかったためだ。


「さて、どうするかの」


なぜか方言になりながら俺は頭に手をあてた。


「綾や詩乃にまたお世話になるわけにはいかんしなぁ」


「波音・・・なんの話だ?」


少女参上。

仁、顔が赤いぞ、顔が。


「ん~いや、この娘のご飯どうしようかな~っておもってさ」


そういって、俺は少女の頭に手を載せた。


「それなら心配要らない。

 僕、料理うまいから」


「まじで?そうだったら助かるわ。」


「早速冷蔵庫の中のものでご飯作ってくる」


とたとたとたとかけていった。


「で、仁どうしようか。」


俺は仁のほうを向く。

仁はというと


「お前、今誰とはなしていたのかわかってんのか!?」


とでもいいたげな顔をしていた。

いや、わかってるからこそのこのボケだ。

早く突っ込んで欲しかったんだよ、俺は。

そして、結論が出た。

今から、村川家に出向くことにする。

今から、綾と詩乃に頼んでご飯と一緒に少女も学校に通えないか?

というのを聞くためだ。

この二人にも怪盗だということは内緒なので少女は道にすててあったダンボールの

なかで凍えてたということにする。

まぁ、二人とも単純だから大丈夫だろう。

必要以上につっこまれても単純にはぐらかせば大丈夫だろう。

多分だが。


「では、行きますか」


俺は綾の家に向かって歩き出した。






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