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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
超兵器な季節☆
47/210

ねこにまたたび

ドシン!と腹をゆするような音がして頭に意識が戻ってきた。

床に倒れたまま俺は寝てしまっていたらしい。


目をこすりながら部屋から出ると案の定思っていたとおりの事が起こっていた。

――メイナだ。


「も、もう……いや……けほっ」


咳き込みながら台所の黒煙の中から姿をあらわす爆弾料理生産者。

どうやらまた爆発したようだ。


「なんでそんなに爆発するのさ!

 どう考えても今のは野菜しかなかったよ!」


シエラがメイナに言葉で噛み付く。


「私に分かるわけないでしょ!?」


「じゃあ何でこうなるのさ!?」


ズビッと爆発済の野菜類を指すシエラ。

原因は本人にも不明なんだからそれ以上聞いてやるな。

それが優しさってもんだ。

そして夜の一時に何を作っているんだお前らは。


「おはよう」


料理という名の爆弾に熱中していてまったく俺に気がつかない二人。

それにやきもきした俺は二人の気を向けるために時間違いだけど一応の挨拶をした。

喧嘩以上戦闘未満の戦いを中断して


「波音、起きたの? 

 おはよ~よく寝てたね?」


にまっと笑うメイナと対称に少し怒っているシエラ。

同じ双子だと言うのにどうしてここまで差が出たのかは大いなる謎といえよう。

そしてこれからも解明されることはないだろう。


「ぼ、僕が作った料理が爆発したんじゃないから!

 そこだけ覚えておいてほしいんだけど……」


ようやく俺に気がついたシエラが急に必死になって弁解を始めた。


「おう、分かってる。

 間違いなくメイナだろ。ってかなんでそんなに必死なんだ。

 誰がどう見てもメイナの以外に料理を爆発させる奴はいないだろ……」


「ならいいけど……」


ほっと嬉しそうな顔になる。

わけ分からん、なんだってんだよ。

まったく女って生き物をこれから俺が理解する方が無理だろうな。


「あれ、セズクは?

 波音知らない?」


シエラが思い出したように俺に尋ねる。


「いや俺は知らんがな」


「あれ、波音の横でねるんだーっ♪とか言っていたのにな。

 おかしいな、あの情熱野朗があきらめる……あぁ!思い出した!!」


自分一人で考え自分で答えを出す、世に言う自問自答をしている最終兵器。

まさにAha!状態のシエラに聞いてみる。


「で、セズクはどこに行ったの?

 俺はどうでも良いんだけど。

 寝こみを襲われるのが嫌なだけだから」


「そういえば僕聞いてたよ。

 今まで綺麗さっぱり忘れてたけど。

 多分帝国郡艦隊の所に行ったんだと思う。

 最近この辺りで連合郡のレーザー戦艦を拿捕してからというもの帝国郡艦隊が

 珍しく連合郡艦隊に対して連勝しているんだってさ。

 それでセズクがこのレーザー戦艦を拿捕する作戦に加わっていたということで

 この艦隊の司令がセズクを招待したんだって。

 あと鬼灯のおっさんの例の記憶媒体とかもついでに渡すんだとさ。

 ちょっと半泣きになって旅立って行ったよ。

 『波音の隣で寝るんだーっ!』とか言うのを殴って黙らせてね。

 あー思い出してすっきりした、すっきりした」


ばっちり聞いてますやんシエラ姉さん。

なんでそんな話を綺麗に忘れていたんですか。

近年稀に見るほどどうでもいいことだったんだな、お前にとって。


「ちなみにその艦隊どの辺にいるんだ?」


出来れば大西洋とか宇宙とかその辺の遠い所にいてくれると嬉しい。

特に俺が。


「聞いた話によると沖の鳥島を西に四百キロぐらい行った所らへんだってさー。

 まぁ私にとってもかなりどうでも良いことなんだけどね。

 じゃあなんで覚えてるんだろう、私」


今日は最終兵器にとって自問自答の日らしい。

それに沖の鳥島って……結構近くにまで来てるんだな帝国郡艦隊。

連合郡がそこまで弱っているとは思えないのだが……。

――罠じゃないのか?

嫌な予感が頭をよぎるが深く考えすぎだと頭を振って思考を中断する。

レーザー戦艦かぁ……。

どんな形なんだろうな、と思いをはせ男のロマンを思っていた矢先

壁にへばりついている電話が鳴り響く。

液晶に発信地が表示される鬼灯電器の最新機器だがその発信地はまさしく

今メイナが俺に教えてくれた場所だった。

やれやれと頭を振って電話を取り「もしもし」とシエラがため息混じりに応答した。


《波音かぁい?

 セズクだよ!そうセズク・KT・ナスカルークだよぉん♪》


液晶一杯にセズクの顔がドーンと浮かび上がった。


「あーうん、僕シエラだけど」


《チッ……》


聞えてる、聞えてる。

電話スピーカーから聞えてるがな。


《まぁいいや。

 波音に代わってくれない?》


シエラが不憫すぎる。

舌打ちされてたぞさっき。


「はいはい、仁だけど?

 波音は今寝てるよ」


喉を押さえて仁の声を出す。

曲芸はこんな使い道もあるんだな。


《仁じゃねぇ、波音だ!

 波音を出せ……ん?

 でもこのぶっきらぼうな言い方……。

 空気の振るわせ方からして……波音だね?》


「えっ……じ、仁だけど……」


《波音だね?

 愛してる》


「………………」


なぜ分かったし。


《さて、電話の用件だけさくっと言うよ。

 例の記憶媒体をゲットしたよ。

 鬼灯のおっさんに届けたいけどちょっといまパーティで手が離せないんだ。

 シエラとメイナと一緒に来てくれない?》


つまり自分は忙しいからてめーが取りに来て届けろと。

液晶に映っているセズクの顔がにやにやしていてぶん殴りたい衝動に駆られる。

よく見ると顔が赤い。

絶対酔っ払ってるなこいつ。


《うにゃにゃひゃにゃ~♪》


もう頭大丈夫なのかと。

なんなんだと、酔いの勢いで電話かけてきたのか?

四十代後半のおっさんかお前は。


《とりあえず聞いてよ、波音~ん♪

 さっきさぁ変な物が飛んでたんだよー♪ういっく。

 それをざぁ僕がざぁー》


支離滅裂だ。

そして日本語しゃべれ頼むから。


《ぞじだらじぁ~》


多分、そしたらさぁ~だと思う。


《そのぶっだいざぁーいっく。

 ぎゅーにすざがくざまじでざー》

(その物体急に姿くらましてさぁ)


何で俺ちゃんと読み取れるんだろう。

心と心の通じ合い……とかだったら嫌だなぁ……。


《うっくんだらじゃー》


フッとセズクが液晶から消てべちゃっと無様な音が響いた。

おそらくべろんべろんの状態で足を滑らせてこけたんだろうな。

無骨な艦橋内の鉄の塊がしばらく液晶に映る。


「はぁー……切るぞ?」


受話器を壁の液晶にかけようと手を伸ばす。


《ん……?艦長アレはいったいなんでしょうか……?

 レーダーには映っていないのですが……。

 この海域に霧がかかるなんて……珍しいですね》


レーダー技師の緊迫した声がセズクが消えた液晶から漏れてきた。


《霧だと!?

 馬鹿なこの時間帯に霧なんて……。

 な……なん……だあれは……?

 き、霧が動いているぞ……?》


霧――空気が冷やされてうんぬんかんぬん。


《セズク!おい!起きろ!!おい!!

 総員第一種戦闘配備!

 主砲及び艦載機発艦用意!!急げ!!」


何やらまずいことが起こってるぞ。

俺この電話切ったほうが良いかもしれない。


《我らが女神のシエラとメイナに連絡を!

 早くしろ!!》


「波音……どうした?

 何が起こって……」


ただならぬ気配と自分の名前が呼ばれたのが聞えたのかシエラが心配そうに俺を見上げる。

その問に答えることが出来ず俺はさっきまで平和だった艦橋内を

液晶を通して見る続けることしかできなかった。

赤いランプがくるくると回り甲高い警報が流れている艦内に

額から汗を流した乗組員が必死で駆けずりまわっている。


《うにゃー?

 うっ、いってぇっ……!

 何だ、何だ、なんだよ、おい!

 ん……うわっ!?》


再び現れたセズクの金髪の後頭部が消え何か大きな音がした。

一番近い表現であらわすと……蒸発音とでも言えば良いのだろうか。

爆発音と水が蒸発するときのあのジュッという音を足して二で割るとそんな感じの音になるかもしれない。

音の後の画面はザーとただただ砂嵐。

一部の地方ではじゃみじゃみって言うのかな?


「何か……波音呼ばれてたね」


うんそうだね。

今から俺はあの激戦区に行くんだね。


「とりあえずさっさと行こう」


シエラ&メイナの最終兵器姉妹は勢いよく玄関から飛び出し俺はいやいや玄関から出る。

何かしら嬉しそうな二人は今から戦争に行くとは思えない笑顔に思わず目を伏せる。

二人は俺の手を掴むと玄関の前で青い光の線が走る鋼鉄の翼を広げる。

右側をシエラに、左手をメイナに掴んでもらって三人体制で飛んでもらうことにした。

衝撃波などはシエラ、メイナのイージスで完全に消し去ってくれるらしい。

衝撃波ということはマッハ以上のスピードで飛ぶということか。


「とりあえず僕がパンソロジーレーダー全開にしておくから。

 ちゃんと眼帯も持ってきたし」


珍しく眼帯の出番アリだな。


「それじゃ行くよ?」


二人が顔を見合わせ徐々に強くなる風圧。

青い光が空気中へと放たれそこから風が発生しているように感じる。

とても不思議な感覚だ。


「三……二……一……Go!」


次の瞬間俺の家は遥か下でありのように小さい点になっていた。

親父ギャグだが同級生の遼と遥かはまったく関係ないぞ。

Gなどの強い圧力はまったく感じることなくあっという間に雲を突き抜ける。

地上から何百メートルというレベルではなく普通に飛行機などが飛んでいるような高度だ。

成層圏――だっけ?

そこらへんにいるような気がする。

大きな、地上では雲に隠れていた月。

物凄い数のこれまた雲に隠れていた星。

それらが目の前一杯に広がりあぁ幸せと本当に意味の分からない幸せを噛み締めた時

二人の最終兵器は上昇から直角に曲がり西へと進路をとった。

徐々にスピードが上がり足下のほんわりした雲が発生した衝撃波でぱっくりと口をあけうねり融ける。

二人の鋼鉄の翼から出ている光は青い線となり地上から見れば流れ星のように見えるはずだ。

二人の星が仲良く二つ寄り添って光るという奇妙な流れ星に見えると思う。

きっと綺麗に見えるはずだ。

まぁ保障は出来ないけどな。


「とりあえずマッハ五ぐらいで飛んでるからね。

 あぁっと手は出さないでね、スパッと行くよ?」


あわてて空をまさぐっていた指をひっこめる。

イージスを触ってみたかったんだよ。

ぐにっとしてるかもしれないしカチカチに硬いかもしれない。

いざ触ってみると何もなかったけどな。

弾の軌道を逸らすことは出来るし、衝撃波をなくすことはできるし。

何かを掴んだりぶっ飛ばしたりすることは出来るしものすごいバリアーだな、イージスは。


「ん……?

 レーダーに反応した。

 アレだな」


シエラが遠い彼方を指差した。

いや見えねぇから。


「……うん間違いないね。

 あれだと思うよ」


いやだから俺は見えないんですけど。

こいつらと一緒にいると人間の不便さが分かるような気がするよ。


「ちょっとやばいな……。

 スピードあげるね」


シエラとメイナはお互い同じものを見て同じ事を感じたのだろう。

二人はぐんっと同時にスピードを上げた。

いつもは少しも表情を変えず喜怒哀楽を戦い以外では表さなかった二人の最終兵器が

俺にはじめてみせる焦りの表情だった。






海は真っ赤に燃えていた。

ボロ布みたいになった二、三隻の駆逐艦のみが煙を上げながらようやく浮いているという感じで

他に十~十二隻ほどいたのであろう空母や戦艦といった主戦力は

艦首や艦尾といった元艦の巨大な切れ端を海にようやく浮かべているだけになっていた。

何とか生き残った駆逐艦は必死で救助活動を行っているようで狭い甲板上に怪我人が寝ているせいで

さらに狭くなっていた。


「とりあえず降りるからね……」


ゆっくりと炎上している駆逐艦の甲板に降りる。

あちこちからうめき声が聞えて地獄絵図と化している甲板。


「おぉ、来てくれたか」


びくびくとおびえながらも銃を構えていたぱっと見二十代後半の兵士が俺達に話しかけてきた。


「シエラだ。

 何があった?」


兵士の暗かった表情に安心の色が浮かんだ。


「シ、シエラ……よかった……。

 もう俺達は安心だ。

 おい、みんな!!シエラとメイナだ!!

 恐怖神と戦闘神が来てくれたぞ!!

 もう安心だ!

 ……シエラ、怪我人の治療を頼めるか?

 状況は後に報告する。

 すまないありがとう」


「私は何をすれば?」


「メイナは……そうだな……。

 船内の怪我人の治療をよろしく頼みたい」


「分かった」


二人はそれぞれ別々の場所にとたとたとかけていった。

俺は一体何をすれば良いんだろう。


「えっとすいません。

 俺は何をすれば……?」


「……とりあえず誰?」


ひどすぎるだろ。

誰とか言うなよ。


「永久波音です」


もしかして知っているかも知れないという小さな希望を抱きつつフルネームを言う。


「……誰?」


セズクの野朗っ!


「……レルバルです」


この名前あまり使いたくないけれども……えぇい言ってしまえ。

ということで言ってみた。

駄目でもともとだ。


「あぁ、話は聞いている。

 よく来てくれた」


……えっ?

……………えっ?






               This story continues.

お待たせしました!

すいません、一週間も待たせてしまって・・・


がんばって執筆しました。

遅筆ですいません。


本当に待たせてすいませんでした。

申し訳ないです。


読んでくださってありがとうございました。

引き続きどうか『怪盗な季節☆』をよろしくお願い申し上げます。

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