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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
甘恋な季節☆
45/210

楽=近道リフト

えっ?

五、六、七時間目?

そんなのあったっけな。


目が覚めると既に帰りのホームルームの時間だった。

毎度のこと寝すぎでくらくらする頭を抑え大丈夫?と目配せしてくる

シエラに頭をぶんぶん振って答える。

長い間同じ姿勢を保っていた関節が痛い。

このまま関節痛持ちとかになったらどうしよう。

寝すぎで関節痛とか冗談にもならない。

桐梨ののんびりとしたホームルームはたった今始まったらしく

のんべんだらだらずーだらずーだらと後二十分は最低でも続くだろう。

ちなみに、俺のこの読みは外れたことがない。

首を捻るとパキパキと関節間の潤滑油に出来た泡がはじける音が脳内に響く。

これ体に悪いって分かっててもついついやってしまうんだよな。

桐梨の話を聞き流しながら鞄の中に教科書類を詰め込む作業に入る。

国語の教科書を鞄の中に放り込みノートをぐしゃぐしゃに詰める。

もともと持ってきている荷物が少なくすぐにこんな作業は終わってしまい

再び暇になった俺は鞄に頭を預けじわじわ迫ってくる眠気に耐えながらじっと手を見る。

最後の部分は石川啄木の俳句(?)から頂戴しました。

おう爪が伸びてきたな、そろそろ切るか……。

窓の外の鳥を見たり教室のしみを見たり時間をつぶす。

やばい、なんだこの暇な空間。

シエラは頭がかくんかくんなっているしメイナはメイナで鞄に頭を突っ込んで爆睡している。

なんで頭をつっこんでいるのか、どういう経路でそうなったのか詳細は不明。

ただしコレだけはいえるだろう。

寝るときに鞄を頭に突っ込むとかなりアホっぽく見える。


「……ということだ。

 以上、解散!

 委員長、挨拶!」


あー、長かった。


「さって帰るとしよう。

 おい、起きろアホ二人」


「………あと五分……」


典型的な朝寝坊のボケお疲れ様。

もういいや、こいつらは放っていこう。

みんながわいわい騒いでいる中俺は荷物を持って廊下に出た。

クーラーが効いている教室とは違いむわっとした熱気の溜まり場となっていた廊下は

再び教室へ戻りたいという欲をわき起こさせる。

それを我慢して階段をくだり下駄箱を開け、中の靴を取り出したところで誰かが俺の名前をよんだ。

走っているのか息を切らしているようだ。

何を必死になっているのかは知らんけどさ。

靴を持ったままの姿勢で固まっていると


「は、波音君、はぁはぁ…置いて行…くな…んて…ひどいじゃない…です…かっ!

 ……いっ、今から…私の家でっ……べ、勉強する…ってはぁはぁ……約束したの……に!」


アリルがものすごい勢いで階段から駆け下りてきた。

あーそういえば約束したような気がしてきた。

思いなおすと確かにそんな話しました。

綺麗に忘れていました、大変失礼しました。

少し膨れっ面のアリルを見ながら熱でゆるゆるになった頭で考える。


道=暑い   ×

家=涼しい  ○

アリルの家=豪邸=ケーキ&涼しい部屋  ◎


決めた。


「よし行く。

 絶対に行くから。

 言い訳するけど綺麗にわすれてましたすいませんでした」


「言い訳するんですか……。

 それで波音君は私の家に来るんですよね?」


「行きます。

 ぜひ行かせてください。

 本当にお願いします、自分精一杯なんで」


「何が精一杯なのか分かりませんが……。

 よかったぁ、来てくれるんですね!

 じゃあ早速来てください!」


シエラとメイナはなんかしばらく出番なさそうだな。

って今さっきの思考回路を見直すとケーキと冷房目当てじゃないか、俺。

うわぁ、アリルに悪いな。

そしてなんて最低なんだろう俺。






アリル家への道のりは省略だ。

とにかく熱かった。

暑いじゃなくて熱い。

九月だというのにいつまでがんばってんだ太陽。

隣にいるアリルも汗べったり。

風もさっぱり吹く様子が無い。

蝉は短い一生を駆使してまだがんばっているわ太陽もがんばっているわでもうやだ残暑の帰り道。

体力もどんどん吸い取られていくしな。

とまぁとにかくアリルの家に到着。


「今からずらっと長い階段を登るのかと思うと憂鬱だな。

 そう思わない?

 アリルも登校時と下校時に毎回この階段登ってるんだろう?

 大変だな、おい」


な、アリル?と同意を求めようとアリルを見るとなにやら足踏みしていた。

暑さで頭がおかしくなったのか、と思いつつ苦笑い。

額の汗をぬぐいふぅ……とため息をついて階段を見上げた。

すると階段の横のスロープになっているところから足場だけのリフトが滑り降りてきた。

自分の目を疑ったさ。

え、そんな裏技チートがあるのかと。

まぁ足場だけといってもちゃんと手すりはあるけどな。


「私は右のに乗るので波音君は左のに乗ってくださいね?

 あ、落ちないようにだけ注意してくださいよ。

 時速三十キロぐらいなら軽く出るので」


まぁシエラの腕を掴んでハイライトまで行った俺の敵ではないな。

左の指示されたところで足踏みするとすーっと上からリフトが降りてきた。

用水路にしてはやけに幅が広いと思っていたのだがこういうことだったんだろうな。

リフトに乗り、手すりを掴みさぁ発進!と勢い込んで足元にキノコのように生えているボタンを踏む。

…………なぜ発進しない。


「えーっと、そのボタン押したままで良いんでそのまま手すりについているボタン押してください。

 先に説明するべきでしたね……ごめんなさい」


いや、いいけどさ。

勢い込んだ勢いが無駄になっただけだからさ。

ただもうちょっとはやく言ってほしかったなぁって。

アリルの指示通りに手すりのボタンを押すとゆっくりとリフトが動き始めた。

かなり早い。

景色がざっざっと流れていき木の葉が顔にペシペシ当たって痛い。

アリルが乗っているほうはきちんと木々が手入れされていているのに対しなんで俺の方は痛ぇ!

木の葉が顔に当たってうわっぷ。

木の枝とか張り出してるじゃねぇかあぶねぇ、毛虫いるし!

蜘蛛の巣とかマジでしゃれにならない蜘蛛嫌いなんだ蜘蛛そこどけ!!

頼むからどけ顔に蜘蛛の巣うわっぷぁ!

顔についた蜘蛛の巣を剥ぎ取りチョップで木の枝などの障害物を押しのける。

絶対に生きて頂上についてみせる……っ!

時速三十キロというスピードは伊達ではなく登るのに前回十分ほどかかった階段を

一分足らずで登ってしまった。

はじめから教えておいてくれよこの設備。

俺はこの地獄の階段を真夏のこのクソ暑い中を登ったってのに……。

かなり……というか猛烈に楽できるこの設備。

何ですか普通に登るのとリフトで登るこの違い。

うーん、分かりにくいかな。

夏だし分かりやすいたとえを出そう。

手動カキ氷機と電動カキ氷機ぐらい違う。

服についているゴミ類をすべて叩き落とし風を頬に感じている間にカメラが出てくる門にたどり着いた。

アリルはジャンプしてリフトから飛び降りると門のカメラににっこりと微笑む。

門のロックがガチャと外れ電動で動いているのだろう鋼鉄の柵の門がゆっくりと開く。

さくさくと中に入って行くアリルに対し、俺は慎重に周りを見渡しながら入ることにした。

だってマダム……だってマダム……。

途中で何人かのメイドさんに出会ったがみんながアリルにお辞儀をして俺にお辞儀をする。

ある人は俺の服についているゴミを取ってくれたりしてくれた。

ありがたいが、こんなのに慣れていない俺は


「あ、いえ別にそこまでしなくても……」


と遠慮してしまうが


「お客様ですので」


としれっと返されてもう逆に恐れ入ります状態だ。

恐縮しながらアリルの部屋まで置いていかれないように着いていく。

部屋に入るとアリルは鞄をどさっと自分の机の上に置いて


「ふー、暑かったですね。

 廊下にクーラー効いてるかとおもったのですが効いていませんでしたね。

 ……っさて勉強しますよ、はい教科書開いてください」


さくさくとノートなどを取り出し始めた。

えー。


「そんな顔しても無駄です。

 さぁ波音君の苦手な数学から行きますよ!」


ええー。


「はい、二十五の問題!

  x+y が指数として……」


くっ……。

こ、こんな勉強熱心なおなごだったとは……。

ケーキが……俺の夢が……。


「いいですか?

 コレを四の指数にして……

 ………それを 8x+9xy+5z+8 を K とおいて……

 最後に x と y の解を求めるんです。

 分かりましたか?分かりましたよね?では次行きます」


「うん、何言ってるのかさっぱりわからない。

 とりあえず日本語しゃべってくれると嬉しいんだが。

 考えておいてくれないか?」


「えーっと基礎からやり直したほうがいいんでしょうか……。

 このステップAの問題分かります?」


困った表情をして俺を見つめるアリル。


「わかんない」


その眼差しに答えるべくきりっとして答えた。


「分かりました、基礎中の基礎からやりましょう。

 教科書の五ページ開いてください」


アリルは困った表情から強い意志を宿した顔つきになり髪の毛のゴムをほどいた。

金髪のさらさらした長い髪が窓から差し込む夕日を反射してまぶしい。

やっぱりポニーテールよりストーレートの方が俺は好きだな。

そして今気がついたのだがものすっごい前の方まで戻られた。


「今日はここから二十ページまで一気に行きますよ。

 今授業は三二一ページまで進んでいるんですからね。

 びっちりみっちり+α 鍛えてあげますよ♪」


+αって何。

ねぇ、+αって何、何なの?

しかもびっちりみっちりって……。

おいおい勘弁してくれよ。

心の中では半泣きになりながらアリルの説明を聞く。

四時からはじまった勉強会は七時になっても止まる気配が無い。

クーラーがきんきんに冷えた部屋でひたすら勉強、ケーキは出なかった。

ケーキは出なかった。

ケーキは出なかった。

いい加減うんざりしてきた時ドアをあけてマダムが入ってきた。


「あらあら。

 永久君いらっしゃぁい」


おそらくアリルを呼びに来たのだろう。

俺を見てによによと微笑むマダム。

あいからわずパッと見て二十代前半にしか見えないほど童顔だな。

白人は劣化が早いと聞いたんだが都市伝説だったのだろうか。

とりあえず挨拶はしておかないと……。


「あ、マダム……。

 お邪魔しています。

 というか助けていただけませんか」


「はいはい、いらっしゃい。

 うちのわんぱく娘がお世話になってるわね」


助けてくださいませんか。


「お母様!?」


「ところでもう七時なのだけれども……。

 波音ちゃんごはんうちで食べていく?

 せぇっかくココまで来てくれたんだし……」


「永久君」から「波音ちゃん」に敬称が変わったぞマダム。

なんでちゃんに変えたんだ。

深い意味はないんだろけどちょっと不気味なんだが。


「いや、俺はコレで帰ろうかと……」


そそくさと荷物をまとめる俺の右手をアリルの左手ががっちりと掴む。

あったかい。

って鼻の下を伸ばしている場合じゃない。


「波音君食べていきます?

 食べていきますよね?」


―――え?


「いや、俺は家に帰りたいんだが……」


アリルの左手に入った力が気のせいか増した気がする。


「食べて……いきますよね……?

 ……ね?」


「はい」


あぁなんでこの親子こんなに笑顔が怖いの。

前回もマダムのお茶にこんなかんじで付き合わされたような気がするんだよ。


「じゃあ決まりのようねぇ~。

 波音ちゃん、うちでご飯食べて行きなさいね?」


あぁ……ちくしょう。

俺ってなんて流されやすいんだろう……。






               This story continues.


あわわ、もう書置きがない・・・っ

ヤバイです・・・


が、がんばります!

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