青い光
家への道を急ぐとき懐かしい跡を発見した。
セズクが血だらけで俺を捕まえに来た場所。
壁の崩れた場所とかもそのままだった。
そう、ここであいつに警告されてからさらに俺の人生は狂い始めたんだ。
多分、メイビー。
例えるなら今までは零度と人並みだったが
シエラと出会うことにより九十度直角に曲がる。
さらにこのホモ野朗に出会ったことによって百八十度回ったようだ。
まとめると俺と仁とで楽しく高校生活をしていたがあの二人が現れ
あと一人がなんか付録でついてきた。
こんな感じかな。
「♪~」
壁を無表情で眺めていると口笛を吹きながら小汚い男が歩いてきた。
気にせずにやり過ごそうと少し壁のほうによる。
だが男はそんな俺を目にも止まらぬ速さでがっちりと掴んできやがった。
「!?
な、何?
何ですかっ!?」
「………死ねよ、クソ餓鬼」
意味分からない。
いきなり出会い頭にそれかよ。
「ちょっと待ってください、僕が何かしたんですか?」
冷静に問い詰める。
いざとなったら返り討ちにしてやる。
「その顔が気にくわねぇ。
めめっちい顔しやがって。
俺はいまむしゃくしゃしてんだ、ボケ!」
知らんがなー!
世に言う通り魔というやつか、なるほど。
冷静に解析する。
って顔のことを言うなよ、自分でも気にしてるんだよ!
「落ち着いてください。
僕はまだ若いんです。
未来が詰まってるんです。
それをあなたで終わらされたくない。
分かりますか?
分かりませんよね、来て行きなり赤の他人の命を奪い取ろうとする
あなたみたいな人にはわかりませんよね?」
べらべら並べる。
この勢いに圧倒され戦意喪失してくれたらいいんだが……
「あんだとゴラァ!!」
作戦失敗。
火に油注いじまった。
「この餓鬼は、言わせておけばごだごだ並べやがって……。
いいか言っておくけどな、俺はお前で八人目だ。
今世の中で有名になっている連続殺人の犯人は俺なんだよぉ!
血の湧き出る感覚、肌を切り裂く感触!
すべてが大好きなんだ!」
きちがいに刃物とはよく言ったものだ。
確かにこいつあぶねぇ。
火山の火口に飛び込むぐらいあぶねぇ。
しかも連続殺人の犯人お前かよ、さらっと大事なこと言うなよ。
最後の方かなり危ない人発言だしな。
ぴとっと首に冷たい感触が伝わる。
どうやら刃物が俺の首に当てられたみたいだ。
「いっきにかっさばくからよぉ~ひっひっひ~~!!」
口臭い。
歯磨いてるのか、この人。
「恐怖におびえろ、餓鬼ぃぃ~!!」
あー降りかかる火の粉は自分で払えってことだな。
男が笑い転げてるうちに腹を思いっきり殴り飛ばす。
げぇっと胃液をはき、前かがみになったところを脚で顎を蹴り飛ばす。
手の刃物はとっくのとうに俺の手の中だ。
男の口から何本かの歯が飛び出し月光の中舞い踊る。
男は目をひん剥いたまま倒れて動かなくなった。
やりすぎたなぁと思うと共に今更ながら気がついた。
俺、結構強いじゃないか。
包丁を下に向けて男の首元すれすれに落としてやる。
「うわっ!!」
なんだよ、気絶してないのかよ。
タフな奴だな。
「怖いよな?
どうだ、怖いよな?
餓鬼だと思って油断したのが間違いだったな。
警察よんでやるよ、少し待ってろ」
逃げようとする男の脚をおもいっきり蹴り飛ばし携帯を開く。
警察を呼ぼうと番号を打ち込んだそのときだった。
空が光ったかと思うと真上から青い光が差し込んできた。
「うわぁっ!?
何だよ次から次へと!!」
レーザーはまばゆい光りを出しながら倒れている男を包み込んだ。
レーザー光に触れた所から発火し始める男。
「うわぁああぁあ!!
熱い熱い熱い熱い熱い!!」
ゴロゴロと転がり火を消そうとしているがレーザーがその男をしっかりと追尾して
消えるどころかどんどん燃え広がる男。
肉がこげる臭いがつんと漂い燃えながら男は俺を見上げていた。
「た……す………」
顔面の皮膚がぼろッと崩れ、目が、鼻がない顔に口だけが大きな穴となっていた。
その穴が助けを求め、動く。
いつもこれ以上にグロイ物を見ているからなんとも思わないが
普通の人が見たらトラウマ物だぞ、これ。
近くに水があるわけでも無く火を消すことも出来ずに俺はただ男を見ていることしかできなかった。
男はとうとう動かなくなり時々ぴくっと手足が動くのみだ。
それを見届けたかのようにレーザー光は光りを弱めやがて完全に消えた。
明るかった空も元の暗さを取り戻し辺りは静寂に包まれた。
煙がぷすぷすと立ち上り、灰になった男の骨が月明かりにぬらりと光る。
パトカーのサイレン音が聞えハッと我に返った俺はさっさと家への道を急いだ。
こういう厄介な物にはかかわらないほうがいい。
本能というか今までの経験というかそれが俺を突き動かした。
家に帰ってくつろごうと思ったがやっぱり現実はそうはいかないようだ。
あいからわずの二人は今日も平常運転か。
「姉さん返して!
それは僕のだって前々からいってたじゃんか!」
「知らないわよ、これはたった今から私がもらったの。
異論をみとめるつもりはまったくないわ」
「おやおや、二人とも落ち着いて」
いや、三人か。
三人だったなそういえば。
人が疲れてるってのに何でそんなに騒げるのか。
体力有り余りすぎだろ、もう。
俺お疲れ様すぎるな。
「そういえば明日から学校だね~。
私ちょっと楽しみなんだ~♪
久しぶりに詩乃とかに会えるし……」
「そういえばそうだったなぁ。
学校かぁ、懐かしい。
そう考えると今日で夏休み終了ってコトだよな?
宿題まったくやってねぇんだよな。
まぁいいか!!」
よくないかもしれないが、まぁいいか。
いいよな、宿題ぐらい。
「今日で夏休みは終わり……なんだよね?」
メイナが首をかしげて俺に問う。
今自分でいってたじゃないか。
休みは終わり。
「僕は今から文化祭が楽しみなんだ。
なにやらわくわくする雰囲気なんでしょ?
大塔高校のパンフレットにも載ってるし……。
ここらでは一番の文化祭だって……」
シエラはよほど楽しみなのか顔が輝いている。
文化祭ねぇ。
高校のそれは中学の時と比にならないと聞いたが本当なのだろうか。
次の日は朝早く起こされた。
起床七時半だと!?ありえん!!
「波音!学校だよ!!
おきて!!死ぬよ!!」
死ぬのかよ。
メイナの声が耳元で聞えるがしったこっちゃない。
眠気に勝る欲求は無いと思っている俺にとって睡眠はとてもとても大事な物なのだ。
わしゃぁねむいんじゃきに。
「姉さん放っておいたら?
遅刻すればいい、波音なんて」
「でも波音が遅刻したら私たち学校への道がわからないじゃない。
そう考えると起こしたほうがいいでしょ?」
遅れてもいいから放っておいてくれ。
遅刻します、今日は。
「しかたありませんね。
では僕が起こして差し上げようかな」
む…………。
む…………?
む……!?
「おはよう、マイハニー。
さぁ起きて、ふぅ~~」
ふぅ~の所は俺の耳にこの馬鹿が息を吹きかけてきた音だ。
背筋が凍るし、鳥肌がブツブツブツッと現れる。
ぞっとするという表現がこれほどふさわしいものはないだろう。
「うわぁっ!?」
びっくりして飛び起きると同時に再び布団に閉じこもる。
なぜかって?
俺の頭がものすごいスピードでセズクの頭とごっつんこしたからだよ。
ごい~んって寺の鐘顔負けの音がしたな。
頭を抑えて布団の上で涙をこらえる。
ぶつかった箇所が少し膨らんでいる気がする。
思いっきりたんこぶが出来たかもしれねぇ。
「いたいなぁ、もう……」
半泣きの俺。
「大丈夫?」
シエラが心配そうに俺の顔を覗き込む。
大丈夫じゃねぇ、死ぬ一歩前だこの野朗。
「我、今復活せり。
さぁマイハニー、ご飯の時間ですよー?」
マイハニーなだけにパンに蜂蜜の朝ごはんですかってやかましいわ!
「おやおや目に一杯涙をためて……
いったいどうしたというんだい?
よければお兄さんに話してみたらどうかな?
きっと気が楽になるよ?」
こいつには自覚がないのか、記憶の容量がキロバイトレベルなのかどっちなんだろうな。
仮に記憶の容量がキロバイトだったとしても頭と頭がごっつんこしたコトぐらい覚えておけよ。
ノーダメージって可能性もあるかもしれないが俺はとりあえず百ほどHPが減ったのは確かだ。
とかしているうちにもう時計は八時に指しかかっていた。
「遅刻する、やばいぞ」
俺は音速を超えるスピード(自称)で布団から飛び出し制服をタンスから引きずり出す。
「遅刻する、やばい。
やばい、やばいぞ」
「え、飛べばいいじゃん」
なるほどいいアイディアだってまずいだろそれは。
いろいろと問題になるぞ。
「ととにかくめし!めしをくれ!
ギブミー!」
セズクが食パンを左手で持ち右手で蜂蜜をきれいに塗る。
そしてそれを俺に投げる。
俺がそれを空中で口でキャッチしてもぐもぐ開始。
「ひっへひまーふ!」
「行って来ます!」
「行ってくるねぇ~」
俺達三人は同時にセズクにいってきますをつげ道へと飛び出した。
残されたセズクは一人でぽつり。
「僕も後二年若ければなぁ……。
まぁ仕方ありませんね。
後片付けやら掃除やらやっておきますか」
学校への道をひたすら走る。
久しぶりに普通の高校生に戻れたみたいでうれしかった。
おい、シエラ飛ぶなよ?
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えっと少し遅れてしまいすいません。
今日学校で・・・
本当に申し訳ありませんでした。