表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
甘恋な季節☆
41/210

ギザなセリフ

正直これは強盗じゃないのか?

コソ泥ってレベルじゃない気がするんだが。

その直後銃弾が柱をえぐり俺は柱から出していた頭を引っ込めた。


「おやすみ♪」


セズクが銃弾をばら撒いている一人を文字通り粉砕する。

四肢がばらばらになり、首が恐怖の表情のまま宙を舞う。

舞い上がった血飛沫でセズクが染まる。


《まだだ!

 攻撃を加えろ、ここを通すわけにはいかない!》


無線を傍受し、敵の声を聞きながら俺は三人の戦いっぷりを眺めている。

装甲車がシエラをひき潰そうと迫ってくる。

右手を静かに装甲車へと突き出すがそのまま装甲車はシエラへと速度を上げた。

装甲車に右手が食い込み、ふっと笑いを浮かべたシエラは次の瞬間装甲車を爆発させた。

突き刺さった右手からレーザーでも発射して燃料タンクに引火でもしたのだろう。

右手の服が破けるがしったこっちゃないんだ、あいつ。

もう少し服は大事にしてくれよ、頼むから。

メイナはメイナで戦闘神という名に恥じない戦いっぷりだ。

戦車砲の弾丸すらイージスで捻じ曲げ、隙を突いて何発ものレーザーを突き刺す。


《こ、これが……ハイライト支部でも噂になっていた恐怖神と戦闘神……

 勝てるのか、こんなやつらに!》


《おびえるな!!

 おびえれば感覚が狂い、負けるぞ!》


無線の内容がほとんど励ましあい、慰めあいの場と化す。

隊長たちもそれを留める気にならないほど戦いに集中しいているのか

兵士達の慰めを止める上官の声は無線で拾うことは出来なかった。


《迫撃砲なら、どうだ!

 喰らえ、この厄病神ども!》


腹の奥に響くほどの重音が響き、シエラが立っていたところが消し飛ぶ。

地面から硝煙が立ち上り、硝煙の中から赤のレーザーが迫撃砲へ向かった。

たちまち爆発し、足場ごと崩れた迫撃砲が下に展開していた装甲車部隊を直撃する。


《迫撃砲がやられた!

 レーザー戦車は!?》


《もうとっくのとうにやられちまってるよ、馬鹿野朗!》


《助けてくれ、早く応援を!早く応援を!!》


ありえないほど広い前庭は死体や壊れた戦車、装甲車で埋まっていた。

煙が所々から立ち昇り空が黒煙で曇っている。


「我々は降伏する!

 殺さないでくれ!!」


シエラに向かって言う兵士が一人。

だがそれをあざ笑うかのようにシエラはその兵士の頭を砕いた。


「ひっ!?」


飛んだ血をもろに顔面で受け止めてしまった別の兵士は情けない声をだして地面にうずくまる。

それをセズクが銃弾で恐怖から開放してあげていた。

やさしいのか、やさしくないのか分からない行為だな。


「の、残ったのは俺一人だけなのか!?

 た、隊長!!ジャック!!みんな!?

 嫌だ、嫌だ!!死にたくない!!死にたくない!!」


戦闘開始からわずか二十分ほどで千人はいたであろう守備隊はほぼ壊滅していた。

ただ一人残った男がシエラの前で必死に逃げようとしている。

恐怖で足腰が立たないのか、「ひっ!」と何度も何度も情けない声を出して銃を杖に立とうとしている。

シエラはそれを蟻を見るような目で見下げ、右腕をレーザー砲に変換する。

それを見てまた恐怖が募ったのであろう兵士は涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだ。

再び銃を杖に立とうとした兵士の指が引き金に引っかかり空へ一発弾が発射される。


「ひぃっ!!」


それにすらびびった兵士はあわてて銃を放し腰につけていた拳銃をシエラに突きつける。


「近づくな!

 こっちにくるな、俺はまだ………俺はまだ………」


「Goad byie and Hevae ai naicey dayei!」


シエラがベルカ語でそう言った後、右手のレーザー砲が光を発し兵士の生命を拭い去った。

さっきの言葉を日本語に直すと


「さようなら、いい日を!」


とこうなるはずだ。

死ぬ直前にいい日を!と言われてもどうかと思うのだが。


「波音、終わったよ~!」


メイナが俺を呼びに走ってくる。

と、ズドド!と銃声がして建物から何発もの銃声がまた響いてきた。


「うわぁっ!?」


俺の驚いた声である。


「ちっ…!」


メイナがイージスを張ってくれなかったら確実に今俺は死んでいた。

銃弾一発一発が驚くほど大きい。

後ろのコンクリートの壁が銃弾の直撃を受けて崩れ去る。


「そこですか」


セズクが両腕を混ぜ合わせ、壮大な銃口を持つレーザー砲を作り出し発射した。

ピンクゴールドのような色のレーザーは建物に突き刺さり壁に巨大なクレーターを作り出す。

飛んでくる瓦礫すら危ない。

もう少し生身の人間がいるってコトを自覚したほうがいいと思うんだ。


「やりすぎだろ」


シエラがそれを見てポツリと一言。

お前が言うな。


「まぁどうせ壊すからいいじゃん」


赤い土を歩いて建物の入り口にまでたどり着く。

抵抗らしい抵抗は何もなく研究者達が荷物を持ったまま逃げて行く。


「急ぐぞ。

 逃げられる前にな」


セズクが研究者達をなぎ倒し、メモリーチップがある部屋の扉を開ける。

階段から落ちた研究者が哀れで仕方がない。

頭打たなかっただろうか。

ちょっと心配だ。


「うわぁ!」


丁度逃げようと荷物をまとめていた研究員達が俺達を見て驚きの声をあげた。

恐怖で顔が引きつっている。

さっきの戦闘を窓から眺めてでもいたのだろうか。


「メモリーチップはどこだ?

 それに関する資料もだ、今すぐ出せ」


シエラが凄みのある声で研究員達を威嚇する。

そのシエラをみてひそひそと話をする研究員達。


「おい、アレ見ろよ……」


「あぁ、お前の言うとおりベルカの最終兵器だ。

 捕まえて調べてみてぇな」


「はやくしなさい!」


イラッとしたのか、メイナが壁をぶん殴り穴をぶちあける。

俺もぞくっとするほどこわい、やべぇ。


「早く出してくれないかな?

 僕達は手荒なことはあまりしたくないんだ」


血で真っ赤に染まっている服をしたセズクがほほえみ研究員達をゆっくりと見渡す。

その迫力に怖気ついたのか一人の研究員がおずおずとトランクを差し出した。

俺が受け取りトランクの中を確認する。

メモリーチップと膨大な数の紙が入っていた。

多分資料なのだろう。


「サンキュー」


そう言ってさっさと出て行こうとしたせつな、シエラに肩を掴まれる。


「何さ。

 もらったんだから帰ればいいだろ」


「それ偽者だと思う。

 僕のレーダーが反応しないし」


シエラの言葉で研究員達が動揺したようだ。

ざわざわと波紋が広がる。

偽物いつの間に作ったんだよお前ら。


「本物は多分あそこ」


シエラが目をつぶり右手を開くと覆われている機械類を突き破ってメモリーチップが飛び出してきた。

それを右手で捕まえ俺に渡すシエラ。


「あぁ!なんて事を!!

 お前達は光化学を何だと思ってるんだ!」


メモリーチップが飛び出してきた機械がショートし、火花を煙を噴き上げる。

もうもうと煙が部屋に充満し思わず咳き込む俺。


「けほっ、けほっ!

 馬鹿っ、考えろっ!」


涙が出てきた。


「どうやら今回は本物のようだね。

 それに君たちがさっさとメモリーチップを出さないからこうなるんでしょ?

 自業自得だよねぇ」


メイナがそういって偽のメモリーチップを踏み潰す。

メイナさんちょっと怒り気味です。

さて目的のものを手に入れたし後はここを完璧にぶち壊すだけだ。


「波音、つかまってくれ。

 ここから飛んで脱出するから」


セズクが俺に手を差し出し、素直にそれに従う。


「飛ぶよ?

 シエラとメイナもついてきてね?」


「はいはい、了解。

 さっさと飛べよ、セズク」


おっと、無駄な犠牲を減らすため言うべきセリフはちゃんと言わないとな。

かっこよく決めてみた。


「あ、おじさん達死にたくないなら逃げたほうがいいですよ?

 すぐにここは吹っ飛びますので。

 それではこの辺で」


挿絵(By みてみん)


ちょっとキザなセリフを言ってみた。

どうでしょう、似合うでしょうか?

――似合いませんか、そうですか。

互いに顔を見合わせ少しの沈黙後あわただしく逃げ始めた研究員達を見届けた後

俺達はいくつもの天井を突き破り、空へと飛び出した。

どんよりとして曇っている空を眺めた後研究所を眺めるとふと変な物が目についた。

なんだあれ?

建物の真ん中に穴が開いていてそこからタワーのようなものが突き出ていた。

不気味な色をしていてうっすらと光を放っている。

光が血のように脈打っているのが分かった。


「じゃ、壊すよ!」


シエラがそんな不気味な物を歯牙にかけず嬉しそうに言う。

最終兵器二人が掌と掌を合わせたかと思うとともに結合しあい

大口径のレーザー砲が二人の間に出来上がった。

見たこともないほど大きい。

ぱっと見三十センチほどの砲口だ。


「出力は百分の一以下に抑えて。

 疲れるの嫌だからね」


メイナがそういって、シエラがうなずく。

レーザー砲の銃口がだんだんと光りを強め赤い光の弾が

『日本帝国連合郡立特別光化学研究所』へ達した瞬間物凄い風圧が俺の鼻と口を塞いだ。

爆風で息が出来ない。

そんな俺の状態を汲み取ってくれたのかセズクが俺の耳元で何かを囁いたと思うと俺の前に壁を作ってくれた。


「っぶはっ!はぁ、はぁ……」


息がつまったせいで心臓はバクバクして肩で大きく息をする。

目を開けると周りは黒煙で見えなくなっていた。

不気味な音がしたから響いてくる。


「な、何が起こったんだ?」


「爆心地の上空にいるからね、今。

 ここから少しでも遠ざかったらどうなっているか分かると思うよ、波音。

 とりあえず帰るよ?」


セズクの声が再び耳元で響き俺がこくんとうなずくとセズクの背中から生えた翼が

紫色に光り、黒煙を吹き飛ばしたかと思うとあっという間に景色が流れ視界がクリアになった。

あ、当然ながらT字になっているぞ。

上がセズクでその下にぶら下がっているのが俺だ。

腕の疲労がやばいことになってきているがそれは気にしたら負け。


「こんな感じかな。

 波音、見える?」


セズクが空中でブレーキをかけると百八十度反転して俺の顔を後ろに向けてくれた。

思わずハッと息を呑むような光景が広がっていた。

紅い閃光を放ちなが大きなきのこ雲が大地から起立していた。

天へと突き刺さるがごと巨大なきのこが街に出現する。

あの下では何もかもが跡形もなく吹き飛び莫大な熱で蒸発したのだろう。

研究員達も傷ついた兵士達も逃げるまもなく体中を炎で焼かれ命を手放したのだ。

だがコレが任務だ。

鬼灯のおっさんの言うことは絶対だ、絶対にこなさなければならない。

こんなことは間違っていると言うことが出来ずあやふやな気分のまま俺はきのこをしばらく眺めていた。

確かにここを残せば連合郡はなんとしてでも残った資料で、設備で光化学を編み出そうとするだろう。

それは帝国郡にとって都合が悪いことなのだ。

最終兵器の二人が帝国郡についた今、連合郡はベルカの超光化学で対抗するしか出来ない。

それを考えると今回の任務は連合郡にかなり大きな打撃を与えたことは間違いないだろう。

だがそれで戦争が、人が死ぬの減るのかと。

それは多分ない。

戦争を短くすることは出来るがそれは長い目で見たとしても一瞬のこと。

最終的に戦争はどちらかの勝利ということで集結するだろう。

だが平和への道としてはちょっと血に汚れすぎではなかろうか。

まぁ、俺みたいな高校生がそんなこと考えたところで世界が変わるわけでもないがな。






「案外早かったんだな」


「まぁね、結構すぐに見つかったし」


おっさんにトランクごとメモリーチップを渡す。

「おっとっと」といいながら見事にキャッチして中を確かめるおっさん。

あ、言い忘れてたがシエラ達は先に家に帰らせたからな。


「どうよ?」


「ふむ完璧すぎてぐうの音もでない。

 ばっちりメモリーチップだ。

 流石だな、波音」


心の中でひそかにガッツポーズをする。

立っているのも疲れるので丁度後ろにあったふかふかの椅子に腰掛け

テーブルの上に毎回毎回常備してあるビスケットを頬張る。

普通に、うめぇ。


「ところで、それにはいったいなんのデータが入っているんだ?

 気になって気になって仕方ないんだが」


おっさんはんーと言ってメモリーチップをこねくり回している。

俺の質問に答える気はまっさらさら無いようだ。

聞けよ、せめてんー以外の返事をしてくれよ。

なんかむなしいじゃねぇか、こう心の奥に穴が出来るぐらい寂しいぞ。

「んー」はないだろ、俺がんばったのにさ。(大体は最終兵器とモドキ)


「とりあえず今は秘密ということでいいだろう?

 そのうち分かるときが来るさ」


「むー………ケチ!」


「はいはい、ケチで結構こけこっこー」


おっさんはそういってメモリーチップを壁の穴へと放り込んだ。

ネタが小学生なんだが。

壁の穴は鬼灯財閥研究所へ直行ルートだろう。

ふっと眠気を感じ時計を見るともうかなり遅い時間になっていた。

おっさんに帰る意志を伝え手を振り俺は家への帰路についた。

今回はなんか疲れたなぁ。

俺ももう歳なのか……。

しみじみと心の奥底からそんな感情がわきあがってくる。

あぁ、腰が痛い。

やっぱり歳なのかもしれん。






               This story continues.


ありがとうございました。

なんか画像を貼り付けれる気がしたのですが・・・

そんな機能あった気がするんですが・・・

ありませんでしたか?


1月23日追記


ありました!

見れますか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ