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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
甘恋な季節☆
40/210

最後の晩餐

なんなんだよ、本当に…。

大勢としかいえないギャラリーを俺は睨みつける。


「いや……あっはっは!

 すまん、すまん」


笑いながら後ずさりするおっさん。

死んでまえ!

というかお前ら全員死んでまえ!

俺の記念すべきファーストキスのチャンスをこの野朗共はっ…!


「うっさい。

 帰れよ、もう」


冷たい言葉を全員に投げかける。


「は、波音君…」


アリルが心配そうに俺に話しかげるが俺の怒りのメーターはとっくのとうに限界をぶっちぎり

大空へと飛翔している所だ。


「ごめんってば」


詩乃が謝ると他の野朗共も頭を下げる。

その行動にすっかり戦意を喪失した俺は振り上げた拳のはけ口を見つけれず

隣にあった木をぶんなぐった。

パラパラと木の実と葉が落ちてくる。

毛虫とかもう気にしない。

服についてうにょうにょしているけども気にしない。

太陽はすっかり山に隠れ少し目を放した隙にあたりはすっかり夜になっていた。






「ただいまー、あーマジで死ねーただいま」


家に帰ると俺はさっさと服を脱いで風呂へダイブした。

澄んだお湯を見ながら今日あった出来事を思い出しにやりと笑う。

はたから見ると俺、きめぇ。

あの後狼狽しながら謝るおっさんが用意した車にみんなで乗り込み家に帰った。

最後に俺とアリルだけが残りアリルの家の前ではマダムが出迎え


「今日一日、娘をありがとうね」


と頭まで下げられた。


「いえいえ、僕も十分に楽しみました」


と俺もマダムに頭を下げてお礼をした。


「じゃあ、波音君今日はありがとう。

 またね~」


とアリルに言われ俺も「おう」と返事を返したところでアリルに抱きつかれた。

耳元で


「次はうまくやろうね」


と呟かれ顔中真っ赤になったのを覚えている。

うっすらとだけだけどな。

恥ずかしすぎて声にならない声を出したのも覚えている。

あー俺何をやってるんだろ、と思ったのも覚えている。

というよりなによりも、胸が……姉ちゃん、胸が……。

頭から湯気を出しながら今帰宅、とまぁこういうわけだ。

ゆったりと風呂に入っていると携帯の着信音が鳴り響きメールが着たコトを俺に知らせる。


「?」


と頭の上に?を浮かべながらメッセージを開くとおっさんからだった。


《今夜また頼む》


あー、OK。

なるほど、あんなことしておいてもまだ頼むか俺に。

図々しいのか鈍感なのかそれとも自分に罪の意識が無いのかどれなんだろうな。

しかしおっさんの頼みを断るわけにもいかないため


《了解》


とだけ打って送信した。

毎回毎回風呂に入っているタイミングを狙ってメールしてくるのだけはやめてほしいなぁ。

風呂から上がると晩御飯を最終兵器二人&セズクでせっせと作っていた。

ん、最終兵器二人――シエラとメイナ。

メイナ!?


「あー!違う!

 そこは違う!何度言わせるんだ!」


シエラに怒鳴られつつメイナが汗だくになって料理をしている。

妹に怒られセズクにやさしく教えられてはいるが

メイナの頭の上に大量に浮かんでいる?は所狭しとお互いにぶつかり合っているほど密度がヤバイ。

風呂での俺は?が一つだったがメイナの?はパッと見、百を軽く超えている。

もうがんばれとしかいえない。

椅子に座りながらテレビをつけニュースをぼんやりと眺める。


「昨夜ハイライト中央部で戦闘があり連合郡部隊が壊滅しました。

 関係者の話では燃料に引火し………」


地図が表示され、ハイライト中央部が拡大される。

俺は、連合郡の情報操作が入らないことに内心驚いていた。

まだまだこの程度では余裕という暗示なのだろう。

もう連合郡が帝国郡に勝てるわけねぇわなと最終兵器二人を見て

リモコンでチャンネルを変えようとした時背後でボン!と爆発が起きた。

びっくりして振り返った俺の頬を少し削ってフライパンの柄の部分がテレビに突き刺さる。

メイナが壊したテレビをとっぱらいせっかくおっさんがくれたテレビにである。

ほっぺたいてぇ、テレビの液晶割れ方がこえぇ。

アナウンサーの頭から血が出てるみたいになっている。

こええぇ、真夜中に見たら失禁するレベル。


「けほっ、げほっ…」


シエラとセズクが咳き込みながら台所から出てきた。


「おー、また爆発したのか」


「姉さん……り、料理……へたくそにも……ほどが……

 げっほげほ…ある……ありえない……げほげほ……」


何と何を混ぜたら爆発するんだよ、不思議。

もう人間料理爆弾として名をはせたほうがいいんでねーか?

最終兵器なんてやめちまえ。


――それから三十分後ようやく料理は出来上がった。

実を言うとさっきのプラス二回ほど爆発してるんだ。

タマゴが列を成して俺に向かってきたときはマジで死ぬかと思った。


「で、できたぁー」


メイナが絶叫しながら椅子に崩れ落ちる。

頬には血が滲んで、服もボロボロだ。

何をどうしたらそうなるのかとあえて聞かない俺。

なんか地球上の法則を壊してしまいそうで怖い。

メイナはぐったりと動かない。

力を使い果たしたのだろう、料理で。


「まずい」


シエラが味見のために少しかじったが口に入れた瞬間吐き出した。


「うぅ……ひどい… 

 私コレでもがんばったのに……」


半泣きのメイナ。

がんばったのは認めるけど今までの努力の差だろ。


「い~ただきまぁ~す」


手を合わせてみんなでご飯を食べ始める。

ただ誰一人としてメイナが作ったご飯には手をつけなかった。


「たべてよぉ!」


「絶対に嫌だ。

 断固拒否する。

 お、ほら、蝿さんが食べてくれるみたいだぞ?」


どこからか入ってきたのか蝿がメイナの作った料理に止まる。

もにょもにょと手をすり合わせ――そして動かなくなった。


「蝿さん……」


「蝿さんは我々にメイナの料理の危険性を身をもって教えてくれたのだ。

 それに我々は感謝しなければならない」


「蝿に黙祷をささげようか」


「黙祷―――はい、目を開けてください」


「なんなのよ、あんたら!

 そんなあんたらに私メイナは憤慨の意を示す! 

 極めて憤慨だ!」


目を開けたとたんに騒ぎ出すメイナ。

お前も黙祷ささげてたじゃんよ。


「勝手に示してろ。

 どっかの島国の弱腰政府かよ」


料理は別にできなくてもいいと思うがなぁ。

あ、でも料理できるほうがポイントが高いのは確か。


「あ、シエラに、メイナ。

 後で話がある」


あらかた飯を食い終わりおっさんからのメールのことを話そうと思い、シエラ達に話しかける。


「僕にはなんで話が無いんだい?

 いとしの波音ちゃん?」


「お前はなんかやだ」


「オーマイガー!」


「わかった、わかったよ、聞けばいいさ。

 だからメイナの料理をかっ込むのだけはやめろ!

 死ぬぞ!」


「うっ……がはっ!」


「セズク!おい!!セズク!!」


まぁいいや。

放っておいても死なんだろ、こいつ。

シエラ達に話しかけたままだったなぁと思いながらふとシエラをみると


「えいっ!このっ!」


一生懸命にウインナーに箸を突き刺そうと必死に格闘中だった。


「シエラ、後で話があるんだが」


大事なことだから二回言った。


「え?

 わかったよ」


プルルンっとウインナーが皿から転がり落ちた。






「おー、来たか波音。

 それにシエラとメイナ。

 ご苦労様にセズク・KT・ナスカルークまで」


「いや、こちらこそお世話になっております」


「そう硬くならんといてくれ。

 とりあえず聞いてくれ。

 今夜、連合郡特別軍研究所に忍び込んでもらう。

 地下四階に光学研究所があり、中にメモリーチップがあるはずだ。

 それをぶんどってきてもらいたい。

 ただし今回は今までのようにメモリーチップのみを盗んでくるんじゃなくて

 研究所そのものを破壊してもらう」


「おっさん、俺は人殺しだけは……」


と言いかけた俺を右手で制止しておっさんは話を続ける。


「分かっている。

 そのためにシエラとメイナに来てもらったわけだ。

 この二人さえいれば勝てない戦いは無いだろう?」


「まぁ……」


しぶしぶ承諾して地図を受け取る。

そういう問題じゃないような気がしないでもない。


「あと、なにかあったら大変だと思ってセズクもつけておいたからな」


「げ……」


「よろしくね、波音♪」


お前は……もういいよ……。

何で俺が行く先、行く先に現れるんだよ。


「仁は体調不良でこれないそうだ。

 そのため、彼に急遽代理人を頼んだわけだ。

 まぁ、気にすることではないだろ」


いや、めっちゃするんですけど。


「武運を祈る」


あー、なんていうかまた鬱な展開になってきやがったよ。

アニメとかだったらこの研究所に三人目の最終兵器がいるんだろうな。

でもコレはアニメじゃないからな、はっはっは。


「ほら、波音準備しないと」


セズクが俺のリュックを持ってきてくれた。 

ありがたくいただく。

渡すついでに俺の手をさわさわしてきたのでおもいっきり手をひっぱたいてやった。

そのままおっさんの車に乗り二十分ほど走るとすぐについてしまった。

独特の八角形で五階建ての建物が目の前をさえぎる。

白い壁に窓から漏れてくる明かり。

正直言って一般人なら誰も近寄りたくないほど不気味である。

死刑囚などがここに運び込まれたのを見たなど、暗い噂もたえない。


『日本帝国連合郡立特別光化学研究所』


この長ったらしい名前がこの研究所の名前である。


「さってと、いきますか」


シエラとメイナが走り出し右手を前に突き出すだけで

三十センチはあろう分厚い鉄の扉がはじけ飛び建物の壁に突き刺さる。

やかましいほどかん高いサイレンが鳴り中から数え切れないほど沢山の兵士が

銃を携え、装甲車が、重火器が最終兵器に向かっていった。

もちろんセズクも突撃していったさ、うれしそうに。

俺は人間だから、まともな。

もし被弾したらタダじゃすまないし足でまといになるだろう。

だから隠れてます、はい。






               This story continues.


ありがとうございました。

本当にこんなものを読んでくださってありがとうございます。


うれしいです。

まだまだ続きますが(えっ って言わないでくださいw)よろしくお願いします。

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