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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
ハイライトな季節☆
32/210

執着心

あちこちで燃えている建物。

巨大な都市のあちこちで火の手が上がり闇を赤く染めていた。


俺は空中からそれを客観的に見ていた。

大きな艦が都市を焼いていくのを…だ。

急に体が重くなりはっと目を覚ます。

そこは寝る前と何一つ変わらない仁のPC部屋だった。

かなり暗い部屋に壊れた入り口から差し込む光とスクリーンから出る

青白い光が唯一の光源として部屋を照らしていた。

ひんやりとしたシャツをさわると、ぐっしょりとぬれている。

大量の汗をかいていたらしい。


「なんだよ、あの夢…」


昔見たPCゲームのようだった。

『戦争傍観記』といって国と国が戦争しているのを客観的にカメラをいじり

ただただ見つめるだけのくだらないゲームだ。

実際にこれを鬼灯のおっさんからR18と書かれたパッケージを渡されてPCに入れて

起動したところまではいい。

そこからが余りにも悲惨すぎて見る気もしなかった。

戦争の実際の様子を世界の平和ボケの国などに叩きつけるためのゲームらしいが

平和ボケの国には余り効果はないだろうな…と勝手に思っていた記憶がある。

シャツを脱いで上着一枚だけになり時計を見ると午前三時を長針がさしていた。

アリルからの予想外すぎる告白につかれきった俺が眠ったのは午後七時ぐらいだから

かれこれ八時間眠っていた計算になる。

最近寝てばっかりだなぁと思いつつ机上のビスケットを口に入れる。

甘ったるい味が口の中に充満して飲み物を探してきょろきょろするが見つからない。

甘すぎるだろ、このビスケット。

仁がすやすやとベットで眠っているのを見ながら立ち上がろうとすると

後ろから誰かが水入りのコップを渡してくれた。

それを手に取り一気に飲み干すと同時に口を開く。


「セズクか?」


「さようでございます」


「…またお前か…

 とりあえず放せ触るな、つまむな!

 やめろ!!」


いつの間にか後ろから抱きかかえられていた俺はセズクをにらみつける。

セズクの右手を振りほどこうと抵抗する。


「くっくっく…波音意外と敏感なん…ぐあっ!」


蹴ってやった。

思いっきりセズクの股間に蹴りを入れてやった。

あがらえない痛みを与えられたセズクの両手が緩んだ隙に逃げようとソファーから飛び降りた。


「なっ!?」


ところが右腕が引っ張られあえなく地べたに転がる。

とっさに右腕を見るとキラリと光るもので壁のパイプとつながれていた。

手錠だ、どこから手に入れやがったんだこいつは。


「さっき買ってきたんだ、どうだい動けないだろう?」


「……いや?」


手錠を手首をひねって抜け出す。

関節を外すのかなり痛いがまぁこの場合は仕方ないだろう。

だって外さないと俺、いろんな意味で死んでしまうし。

皆さんはそろそろお忘れではなかっただろうか。

一応俺はコソ泥です。

ビスケットを掴みセズクの口に突っ込みながら左手で携帯を掴み部屋から走り去る。

もともと壊れていたドアは俺の行く手をさえぎることなく廊下への道を開いていてくれた。


「に、逃がさないよ!」


ビスケットをもぐもぐしながらセズクはわざわざ壁を突き破って出てきた。

いや、普通にドアから出ろよ!って…


「はぇえええええ!!!」


本当に早かった。

二十メートルほどの差は一瞬にして縮まり俺の横に並ぶ。


「僕のものになれっ!波音!」


「だ、誰がなるかボケ!死ね!!」


いや、死んだらあかんけど。

セズクはにやりと不気味に笑った後何かをポケットから取り出した。

先端のケースを外すとそこには立派な注射器が!

その立派な注射器が俺のほうへ向かってきた。


「あっぶねぇ!」


「ちっ、外したか」


「な、何が入ってんだよそれぇ!」


「媚薬とシビレ薬!」


絶対に刺されるわけにはいかない。

硬く心に誓うと同時に全開にした目で注射器を追う。

再び銀の閃光がきらめいて注射器が向かってくるが針を指の間に挟み本体を握る。

そのままセズクごと投げ飛ばそうと力を入れるとセズクが空中で一回転した。


「頭うって気絶しやがれ!」


「ふふっ」


わ、笑いやがった…


「ところがそうはいかないよ?

 現実は常に悲惨なものなのさ」


セズクは空中で一回転した後再び地面に綺麗に着地した。

アクロバットをしただけだというセズクの顔を眺め唖然とする。

運動神経いいとかそういう問題じゃなくて人としてどうなんだ、それ。


「そんなのありなのかよぉ!」


もう俺半泣きである。


「おとなしく刺され!」


絶対に嫌だ。

セズクは再び注射器を俺に向かって突き刺そうとしてくる。

目とかには入らないように頭から下を狙っているとしても下手なところに刺されば死ぬだろう。

それを考えて振り回しているのだろうが不安は不安だ。

飛んできた注射器を針ごとつかみ一気に奪い取り地面に叩きつける。

ガラスが砕け散り、セズクの血の気がさっと引く。


「ははっ、ざまぁみろ!」


「…………………」


セズクはにこりと笑ったまま肩にかけていたものを俺につきつけた。

ちょっと、待て。

ぱっと見ショットガンなんですが。


「注射器の百分の一の大きさの散弾注射器が入っているんだ。

 波音、よけれるかな?」


わざわざ説明ありがとう。

なんでそんなもの作っている暇があるんだと問い詰めたい所だが

散弾なんてこんな狭い廊下で撃たれたらたまったもんじゃない。


「頭などには刺さらないように調節済みだから安心して刺さっていいよ」


意味がわからねぇ。

くるりとショットガンを回転させるセズク。

そして銃口が煙を吐き出し空気を切り裂いた音がしたかと思うと小型注射器が俺の目の前で

軌道を大きく曲げた。


「――っ!?」


「危なかったね、波音」


つぶっていた目を開けるとショートヘアの最終兵器が見えた。

メイナだ。

右手を突き出してイージスをはってくれていたようだ。


「体…大丈夫なのか?」


「大丈夫だ」


俺の後ろから声がそう発せられる。

ロングヘアーで眼帯の最終兵器、シエラだ。

シエラは腕を組んでセズクをじっと見ていた。


「丸一日寝ていたからな。

 もう僕達は大丈夫だ。

 心配かけたな」


予想外の二人の登場にセズクは驚いたようだ。


「おやおや、とんだ邪魔が入ってきましたね。

 それもとても僕ではかなわないのが二人も…

 今回ばかりは負けを認めたほうがよさそうですね」


今回も何もないと思うんだがなぁ。

セズクは残念そうに、本当に残念そうにそうだな。

餌を食べ損ねた腹ペコのライオンのようにしょんぼりして廊下の角を曲がって消えた。


「あ、言い忘れましたが

 波音、絶対に僕の者にしてみせるぜ♪」


戻ってきた、そしてセリフを言ってまた消えた。

床に落ちている微々なる注射器を拾って眺める。

一つ一ミリぐらいだ。

それを息を吹きかけて吹き飛ばす。


「まったく……。

 波音も男か女か分からないような中性的な顔してるから悪いんじゃないの?」


とメイナ。


「僕もそう思う。

 その顔やめたほうがいいんじゃないか?」


とシエラ。


「うるせぇよ。

 第一、好きでこの顔になったんじゃねーからな」


もちろん反論させてもらう。

好きでこんな顔に生まれたわけではないからな。

腹が立つが顔は整形でもしない限り無理だろ、変えるの。

昔からそのせいでよく女に間違われたりして…

トラウマである。

ため息をつきかけたとき大音量でスピーカーが鳴り始めた。


《FA-5エリアにフォーゲルが侵入。

 総員第一種戦闘配備!

 繰り返す、FA-5エリアに―――》


「FA-5エリアって言ったら…」


自分でもさっと血の気が引くのが分かった。


「仁っ!」


急いで仁の部屋へと戻る。

仁の名前を呼びながらPC部屋に入ると崩れた天井からフォーゲルが仁を

運び出していくところだった。

仁は気絶しているのかピクリともしない。


「しまった!」


「波音、どいて!」


レーザーがフォーゲルを突き刺す。

仁が床に落ちるのをキャッチするよりも早く別のフォーゲルが仁を掴み

運び去っていく。

そのフォーゲルを叩き落そうとするとまた別のフォーゲルが俺達に煙を吹きかけた。

目に激痛が走る。


「催涙煙か!」


涙で歪む視界に仁が天高く上っていくのがかすかに写る。


「仁っ!!!」


仁を掴んだフォーゲルを守るかのようにいくつものフォーゲルが壁のように固まる。


「シエラ!メイナ!!」


二人に助けを求めるが催涙煙が効いているのか二人は目をこすっている。

それにまだ翼のダメージは回復していないのかもしれない。

パンソロジーレーダーも今は相当弱っているのかもしれない。

そう考えなければこの二人が催涙煙なんて効くはずないだろうに…。

ってことはシエラの大丈夫は張子の虎だったようだ。

なにも無理しなくても…と思いながら何か使えるものを探す。

するとビスケットなどと一緒においてあった銃を見つけ壁になったフォーゲルに向かって撃つが

装甲が硬いのと距離がありすぎるせいでかすかに火花を散らす程度におさまった。

そうこうしているうちに星空に仁を抱えたフォーゲルは溶け込み完全に分からなくなってしまい

壁のフォーゲルもばらばらになって次々消えていった。

銃を落とし放心状態になった俺の耳に廊下からどたばたと走る音が聞こえ


「波音!どうした!」


という声が俺にかけられた。

その声にはじかれたようにジョンに泣きつく。


「仁が!!

 仁がっ!!

 ジョン、助けてくれよ!!」


ジョンに一気にまくしたてる。

冷静さがかけていくのを自分でも感じていた。


「落ち着け! 

 何があったんだ!」


回復したシエラとメイナが取り乱している俺の変わりにジョンに説明してくれたようだ。

ジョンは説明を聞き終わったとに


「Shit…

 なんてこった…」


そう呟き仁をさらっていったフォーゲルが消えた先の空をキッと睨みつけた。





               This story continues.

どうも、よんでくだりありがとうございました。

どうかこれからもよろしくお願いします。

感想の設定を変えて一般の方からも受け付けるようになりました。

よろしければ・・・(笑)

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