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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
ハイライトな季節☆
24/210

射撃場にて2

「それでは、いただきます」


俺は目の前のごちそうへ手を伸ばした。


主に精のつく食べ物ばかりだった。

味はまずくもなく、かといっておしくもなく…というところ。

つまり、普通の味だった。

感想終わり。


「波音、風呂があるらしいぞ。

 入らない?」


仁がテーブルから取って来たつまようじで歯をシーハーしながら言ってきた。

風呂ね…入るか。

海水に濡れたせいで頭はべたべたするし…


「ん、OK。

 入ろうぜ、仁」


その後ご馳走様をして部屋から着替えを持ってきて風呂へ直行する。

飛行機とともに落ちたはずのトランクはいつのまにかジョンがフォーゲルを直して

海面からすくい上げてきてくれた。

トランクの鍵が開いているとかはきにしない。


「うわぁ~~~」


そう歓声を上げるぐらい目の前には見事な浴槽が広がっていた。

日本式で、大きい湯船があってお湯がたぷたぷと溜まっている。


「ふぁ~…」


リラックス、リラックス。

やっぱり故郷の文化はいい。

ただ、一つ心配なことそれは…


「だから、ジョン大佐それはですね…」


セズクの登場だった。

だがうれしいことにセズクはジョンと一緒に入ってきたので

流石に俺にこの場でおそいかかるわけにもいかないだろう。

前をタオルで隠してさっさと頭や体を洗い風呂から上がる。

途中、飢えた狼に狙われた山羊のような気分に何度も襲われた。

大浴場のドアを開けて外に出る。


「Lebo~♪Deslese mininiet~♪」


ジョンが機嫌よく歌いだしたのが聞える。

あの独特の発音はベルカ語だろう。

そう考えたところでどうでもいい疑問が頭に浮かぶ。

なんでハイライトに共同大浴場という日本の文化があるんだろう。

場所の節約なのだろうか。

部屋には風呂はなかった、ということは場所の節約&男の裸の付き合いとかいうやつだろう。

女は知らないが、今日見る限りでは女兵士も男と同じぐらいいるようだ。

服を着て脱衣所を出発、仁と俺の二人部屋に戻る。


「やっぱり、こうなってたか…」


「ですね、ははは…」


ぐちゃぐちゃに散らばった部屋の荷物。

全部俺と仁のものである。

トランクのふたが開いているのを忘れて放り投げたりしたのが原因のようで。


「やっほ~、波音。

 遊びに来たよ…よ?」


なんで二回言ったんだ。

何はともあれいいところにきた。


「メイナ、ちょっとシエラ呼んで来て」


「?

 私が来ちゃいけなかったのかなぁ…」


小さい声でぼやきなが向かいの部屋に飛び込んでいったメイナは


「モゴモゴ…ぷぇっ!

 ち、ちょっと姉さん!?」


右手にシエラをキャッチしてパタパタと戻ってきた。

シエラは歯磨き中だったようで歯磨き粉を吐き出す音の後

水を流して歯ブラシを左手に持ったまま俺のところへ運ばれてきた。


「うむ、ごくろう」


俺は運ばれてきたシエラをみていつか買ってやった苺パジャマを着ているのに微笑した。

うん、かわいいな。

女物なんてわからないものだけどな。


「口の周り、泡…」


「あふっ!」


あふっ?

なんか、よく分からない奇声を上げた後シエラは顔を赤くしながらあわててハンカチを

ポケットからとりだして口の周りをごしごしこする。


「もう取れたぞ、バカ」


「バ、バカじゃない!」


俺はごしごししていたシエラにそう言い放ち小さな喧嘩が起きる前に


「まぁ、とにかくお前らを呼んだのは他でもない。

 黙ってこの部屋を見てくれたまえ」


ぐちゃ~…


「俺はお前達の主人である。

 よって暇そうなお前ら二人にこの部屋の片づけを命ずる」


「へ…?」


えらそうにベットにふんぞり返っている俺と

ちょっとおどおどしている仁とを交互に見る二人。

まるで俺か仁が嘘と言うのを待っているかのような目で。

長い沈黙を破ったのはシエラだった。


「いやだ!

 意味が分からない!」


でしょうね。

やっぱり自分達でやらなきゃダメのようだ。

楽しようとした俺たちがバカだった。

言うことを聞いてくれるかと思っていたんだがどうやら無理のようだ。


「ちっ…仕方ない。

 うん、二人とももう帰っていいぞ。

 自分達でやるから、ほら帰れ。

 邪魔になる、そこに座られると」


あえて冷たい言い方をして慈悲を刺激する。

いかん、今日の俺はドSのようだ。

理不尽なことばっかりいっている気がしてならない。


「じゃ、二人ともお休み」


仁が二人に言い放つ。

ちょっと、がっかりしたように。

すると二人は顔を見合わせてしばらくこそこそ相談した後


「なんかかわいそうだからな…少しぐらいなら…」


「手伝ってあげても…いいよ?」


「マジ?」


「マジ、マジ」


やったぜ。

俺と仁は顔を見合わせて作戦成功のうれしさをかみしめた。

ふっ、すべてはシナリオ通り。

この男二人という異様な空間に女というオアシスが必要だったんだ。

それから約一時間ほどかけて部屋の片付け終了。

結局少しとかいいながら最後まで手伝ってくれた二人に感謝の礼を述べた後

俺は歯を磨きベットに滑り込んだ。






なんか、布団の中がもそもそ動く。

なんだろうと思った俺は布団をがばっとめくった。


「やあ♪」


「ひっ…!」


思わずおびえた声を出してしまう。

ホモ…野朗…


「静かに。

 こんなところを仁君に知られてもいいのかい?」


俺はホモじゃないんだが。

別に仁に知られても困るものではない。

だって、ホモじゃないもの。

だが、誤解というものは解きにくいものだし俺は極端な面倒くさがりやなのだ。


「くっ…お前…」


俺は静かにセズクに悪態をつくが、セズクは全然気にしない様子だ。

逆ににっこりと笑い


「ひどいなぁ、波音。

 女として、好きな男にこういうことしてしまうのは当然だろう?」


「…は?」


女…なのかお前。

ふと、セズクの体を見るとふっくらした胸が確かに…ってダメだ。

さっさと目をそらす。

目に毒だし、それに…


「だから、僕を認めて欲しいんだ。

 さみしいんだよ…」


セズクの目から涙がこぼれ、シーツに滴り落ちる。

そして、その顔がどんどん俺に近づいてきた。


「や、やめろ…」


そして…






と、いう夢を見た。


「ぷっは!」


ギリギリの危ないところで俺は何とか目を覚ました。

全身汗びっしょりだ。


「夢…か。

 …よかった、本当に」


あんなに、可愛くてセクシーなセズクがいてたまるか。

しかも、女だったし。


「んー…

 波音、うるさいぞ…むにゃ…」


寝言なのか本当に俺にいっているのか疑問がのこる言葉である。

仁は気持ちよさそうにスースー寝息をたてている。

鼻をつまんでたたき起こしてやりたいぐらい安らかな寝顔だ。


「ふへへへへ、姉ちゃんええ尻しとるやないかい…」


俺と、ええ尻の姉ちゃんのつながりが分からない。

第一、どんな夢みてんだ、お前は。

って、寝相悪すぎだろ。

ベットのギリギリのところで寝ていて、なんて器用な寝方をしているんだと感心させられる。


「しっかし、本当に嫌な夢を見たなぁ…」


俺は上着をぱたぱたして汗を乾かした後、冷蔵庫からお茶を取り出した。

ひんやりとしたペットボトルが体を冷やしてくれる。


「ふぅ…」


ようやく、頭が落ち着いたところで再び俺はベットにもぐりこみ眠りに落ちた。


「あの…大尉。

 なにをやっているんですか?」


部下からの白い視線を無視してまで


「くっ、鍵がかかってやがる!」


波音達の部屋の外ではセズクが一生懸命に鍵を開けようとしていたのは

ここだけの裏話である。






「おい、波音。

 起きろよ」


「…ん…」


低血圧にはきつい朝が来た。

ゆさゆさと体がゆさぶられて夢の世界から意識を引きずり出される。


「ん~、後五分…Zzz…」


俺はその意識をがんばって再び夢の世界へと引き戻す。

すまん、俺は眠いんだ。


「もう、昼の二時だぞ?」


それだけ毎日疲れが溜まっているんだ。

最終兵器というお荷物がいるからな。

頼むから寝かせてくれ。


「起きろよ!

 そろそろ、セズク教官の銃の稽古の時間だぞ!」


「ん…了解でふ…」


仕方なく目を開け、布団の上においてある対セズク用のお守りを引き剥がす。

大きなあくびをしながら俺はまだ未練のある布団から這い出した。

夜の時は気がつかなかったがこの部屋には窓がなく時間がわからない。

おなかはそこそこ減っているし携帯の電源を入れると午後二時の表示があったことにより

ようやく俺は寝すぎたことに気がついた。

てっきり、仁が嘘をついているのかと思った。

枕元においておいた軍服を身に着けて顔を洗おうと洗面所へと向かう。

冷たい水で顔を洗うことによりようやく体のエンジンがかかり始めた。

さっぱりした表情で先に射撃場へと行った仁の後を追う。

長くくねった廊下をただひたすら歩く。

どこか遠くで帝国郡兵士が演習もしくは訓練でもしているのか元気のいい声が聞えてくる。

だが、その声も射撃場が近くなるにつれて銃声によってかき消されてしまった。


『射撃場』とかかれた部屋のドアを俺は蹴って開けた。

もし、ドアの近くにセズクがいるのならそれでぶっとばすつもりだったのだが


「来たね、波音」


セズク教官は遠くにいる兵士を教えている最中で俺の攻撃はむなしく空を切る結果となった。

兵士を教え終わったのか片手に拳銃を持ちながらセズクが俺に近寄ってくる。

近いです、教官。


「来ましたよ、教官」


小さく憎まれ口を叩くがセズクには聞えなかったようだ。

聞えていたとしてもこの野朗が微笑をやめるとは到底思えない。

目を見ないようにして自分の射撃場へと急ぐ。

途中で八人ほどの兵士とすれちがい流石にこの大人数の中で

襲い掛かってくるほどセズクはバカじゃないだろうと俺は安堵の息をもらした。

もし二人きりだったら俺が自然界で言う食われる側になっていたのは間違いないだろう。

セズクが文句をつけれないぐらいにさっさと稽古を終わらせようと思いさっそく一発ぶっ放す。


「うっ!?」


銃弾は的よりもはるかに右上にそれて火花を散らした。

ってか、仁やシエラはどこにいるんだろうな。

俺はそれのみが楽しみでここに来たんだが…


「くすっ♪だめだなぁ波音。

 僕が手取り足取り教えてあげるね♪」


真後ろからそんな声が聞えてきて全身に悪寒が走る。

逃げようと前に一歩踏み出したときにはもう遅かった。

セズクの手が俺の腕をにぎり体を密着させてくる。

うわ、もうなにこの状況。


「銃はこうやって…」


セズクの説明などまるで頭に入らずどうやってこの状況から抜け出そうという

その考えで俺の頭はいっぱいになった。






               This story continues

ありがとうございました。

どうかまたよろしくお願い申し上げます。

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