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怪盗な季節☆   作者: 大野田レルバル
終堕な季節☆☆
203/210

一旦停止

「っち、嘘だろ!?」


大轟音を上げて、沈んだのはヴォルニーエル。

俺達、帝国郡の旗艦。


「元帥!」


俺は、あわてて燃え盛るヴォルニーエルに近付くことにする。

マーズルカエルの戦いを見ていたかったが、そんなことよりシンファクシだ。

シンファクシは、元帥は生きてるのか。

マーズルカエルの艦橋を足場にして飛び立つ。

目の前から襲ってくる敵戦闘機の翼をもぎ取り、邪魔をする敵を蹴散らしながら俺は飛んだ。

ヴォルニーエルは綺麗に町の外の砂漠に落ちていた。

巨大な船体を地面に叩きつけるようにして、落ちたらしい。

大きなクレーターが出来ており、あれだけ巨大だった船体は二つに折れていた。

基部から削ぎ落ちた砲塔がバラバラの部品を撒き散らしている。


「うぅ…………いてぇよ……」


「しっかりしろ!」


「俺の腕が……腕が……」


傷ついた兵士たちが止まりそうにない血液を流しながら呻いている。

軍服が赤く染まって行き、酷くつんとした血の臭いが辺りに立ち込めていた。

真上で爆発音がする。

落ちてきた帝国郡の戦闘機がヴォルニーエルの破片に突っ込む。

先程まで呻いていた兵士がいたところが一瞬にして火の海になる。

これが、戦争。

またしても俺は誰かを守ることが出来なかったらしい。


「くそっ…………!」


俺は、足から抜けた力を入れることができずにその場にへたれこんだ。

アリルを救った。

それならいい。

のに、シンファクシを救えなかった。

シンファクシだけじゃない。

ヴォルニーエルに、乗っていた沢山の仲間も。

救えなかった。


「……おい、T・D」


血まみれの兵士が俺に近寄ってきた。

その兵士はパッと見るに怪我はないようだった。

血は、仲間の血だろう。

その兵士がすがるように俺に話しかけてきたのだ。


「…………なぁ。

お前、最終兵器なんだろ?」


「……………………」


静かに顔を縦に振る。


「まだ戦ってる仲間が、戦友がいるんだ。

俺の親友も」


「……………………」


「なぁ、頼むよ。

戦ってくれ。

俺の親友を、死なせないでくれ」


兵士は必死だった。

ついさっき、仲間の死を見届けたように。


「…………ああ」


――そうだな。

まだ間に合う。

まだ、誰かを守ることはできるはずだ。

シエラとメイナを見てみろ。

まだ戦ってる。

自分の大切なものを守るために。

回りを見てみろ、永久波音。

誰一人として戦うことを止めてないじゃないか。

お主だけここでぼさっとしていていいのかよ。


「………………」


足から抜けた力が戻ってきた。

近くにある欠けた鉄板に手をつき体を支える。

この戦争を、とにかく終わらせる。

死者を弔うのはこの戦争が終わってからだ。

俺は、最後にヴォルニーエルの残骸をちら、とだけ見ると翼を使って空へと舞い戻った。

ヴォルニーエルを落としたことにより、連合群の士気は高揚しついるだろう。

その士気をへし折り、この戦いを有利に持ち込むには……。

俺は、空を飛ぶ超巨大要塞を見上げた。

アイツだ。

あいつを落とすしかない、ハイライトを。

しかし、ヴォルニーエル単体で負ける理由が分からない。

いったい何をやられたってんだ。


《抵抗を続ける帝国郡の連中に継ぐ》


巨大な音声が鼓膜を突き抜けた。

この海域全部に広がっただろう声。

どこから聞こえる声だ。


《貴様らの旗艦はもうすでに墜ちた。

改めて犠牲を増やすこともないだろう》


ハイライトか。

あそこからだな。


《貴様らは優秀だ。

我が連合群相手にここまで戦ってきた。

だがもう無駄だ。

一度しか言わないぞ。

降伏しろ。

降伏を受け入れる戦闘機はハイライトの滑走路に着陸せよ。

マーズルカエルは、我が要塞軍港に接岸せよ。

最終兵器は、地面に着地し指示を待て》


声はここで一度途切れた。


《以上だ。

なお、五分で決めろ。 

それ以上かかるなら、死ね》


そう放送が言うとハイライトを含め連合群の攻撃がピタリとやむ。

五分間……。

今降伏すれば全員が助かる……のか?

いや、嘘だ。


『その必要はない!』


ハイライトにも負けない声が響いた。


「…………!」


生きていたのか。

無事なヴォルニーエルの艦橋にふらりと人影がひとつ見える。

あの髪型や体型は元帥、紛れもないシンファクシだ。


『いいか。

我々には最終兵器がついている。 

負けない。

大丈夫だ』


《シンファクシ……。

いい加減に貴様は分かるべきだ。

いつまでも子供だお前は》


『お前こそ分かっていない!

やろうとしていることは只の弾圧だ。

人間の権利を侵害している!』


《……まぁいい。

どちらが正しいかは歴史が証明してくれる。

五分だ。

お前の兵士もお前と同じく子供で現実が見えていないようだ。

それとも、まだ勝てるとでも思っているのか?》


ハイライトのエンジン音が急激に高まり始める。

紫色の機関光も活発に脈動しはじめた。


《この、要塞の本当の姿を見ればお前も考えが変わるだろうシンファクシ。

確かに最終兵器には叶わないかもしれない。

だが、万を越える砲門から出る光を最終兵器が防げるか?》


ハイライトを覆っている古い石のような建造物が音と共に剥がれはじめた。

壁の奥には、何本もの細かい線がひかれている。

その線が上下に開くと奥から数えきれない数の、砲門が顔を出した。

ハイライトの森林が築かれていたところからは巨大な砲塔が出現し、三連装の砲門をこちらへ向ける。

下部ではむき出しになっていた金属部分が左右に開いたかと思うと中から爆撃を専門とするであろう下部散弾爆撃光発射口が姿を表した。

さらにその回りを覆うようにいくつもの機銃が展開される。


『っち、化け物超極兵器級め……!』


ハイライトの最下層の蓋が開くと、中から八本の砲身が姿を表す。

それ一本で駆逐艦程度の大きさはある。


「……“超大型光波共震砲”」


いつの間にか俺の隣に来ていたシエラがぼそっとつぶやく。

なんかすげー聞いたことある単語。


「なんだったかね、それ」


「超空要塞戦艦の主砲。

名前こそ光波共震砲だけど、実質は全くの別物。

超高密度でエネルギーを撃つために、時空、空間、重力。

ほとんどに干渉してしまう使うのを許されなかった兵器」


すらすらと答える。

流石である。


「ほんで?

俺たちの勝ち目は?」


「……百。

僕たちが負けるわけがない」


シエラは両手の指を広げて俺に見せてきた。


「よくいった」


どうでもいいけど、それ十や。

百やないで。


「多分ね」


それは要らない一言だったかもしれないな。

確実にいらなかったな。


「なーシエラ。

弱点は?」


聞いても無駄な気がするが一応聞いておこうと思う。


「僕?

僕は脇腹かな。

他にはないよ」


誰がお主の、弱点を聞かせろって言ったんだよ。

そんなんいらんわ。


「ハイライトだよ、ハイライト」


「あー……うん。

ないよ」


どちらにせよないのかよ。

ってことは。


「真正面切って戦うしかねーってことだな」


「やっちゃうか。

僕まだ少し暴れ足りないし」


「で、私は何をすればいいの?」


いつからいたのだろう。

真後ろにメイナが、八重歯を覗かせて笑っていた。

だが、いいタイミングだ。


「メイナ、少し後援を頼みたい。

 ラウナ、分かるな?

 ラウナと協力して……あ、協力してくれないならセズクに言え。

 そしたら絶対協力してくれると思うから。

 敵要塞から飛ぶかもしれない流れ弾を排除しろ。

 俺とシエラは、要塞を叩く。

 一番おいしいところもらうけどまぁ、許せ」


「……ちぇ。

 最後の戦いかもしれないってのに私は後援かー。

 つまらないー!」


「だから許せって」


《さあ、五分が経過したぞ。

 シンファクシ――まぁ、貴様のことだから……》


ヴォルニーエルからオレンジ色のレーザーが飛び出し、ハイライトにぶち当たる。

ハイライトの壁面が少し崩れ、海に残りの石が落ちる。


『降伏なんてしない。

 当たり前だろ?』


《そうこなくっちゃなぁ?》






                This story continues.


ありがとうござます、ありがとうございます。

もう終わりですかぁ……。

寂しいですねぇ。


さあラストまで一気に走りますよ。

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